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リーガルリスクマネジメント -分類

企業経営をめぐるリーガルリスクは、その視点を異にして次のようにいくつかの区分に分類できます。

(1)責任形態による分類
民事責任、刑事責任および行政責任による区分で分類できるリーガルリスクです。

(2)組織上による分類
企業は組織と取引から成り立っています。

「企業」は資本主義体制の下で一個の統一ある独立した経済単位であり、そのうち、資本的計算方法によって営利追求を目的として、継続的、計画的意図を持って経営を行うものを「私企業」と言います。「企業組織」は企業の設立つまり企業に始まり、企業の解体つまり解散、で終了します。この企業の起業等、株式、機関、資金調達、企業結合、定款変更などの経営管理、会社の整理、解散に至るまで、すべて法律によって規制されています。

したがって、このような企業組織の全ステージにリーガルリスクが存在するのです。

私企業のうち、主として株式会社のリーガルリスクを対象とする問題点について検討してみましょう。この私企業は、営利の追求にあり、企業経営は営利事業を合目的的に行う一つの手段です。

企業(株式会社)はその人的要素としては使用人つまり労働者と、使用者つまり会社経営者から構成されています。この会社経営者は代表取締役、取締役から構成されていますが、これに監査役などを加えて「会社役員」とします。会社役員のうち、とくにリーガルリスクが問題となるのが取締役です。取締役の主たる民事責任と刑事責任としては、その範囲は広く多岐にわたっており、その責任は重いと言えましょう。

(3)取引上による分類
株式会社の取引は多種多様です。国内取引と国際取引に代別出来ますが、ここで触れるのは国内取引に限定します。

この国内取引では、商人間の売買、その他各種の取引もすべて法律によって規制されています。したがって、これらすべての商取引においてリーガルリスクが存在するのです。
(2)と(3)のリーガルリスクは、対象による分類と言えましょう。

(4)国際・国内による分類
国内と国外と言う、地域による分類です。

日本国内の企業でのリスクを国内のリーガルリスクと言います。日本国外、主として国際取引上の企業法務に係わるリーガルリスクを国際取引リーガルリスクと言います。企業の事業活動のグローバル化・国際化に伴い、国際法務は急速に拡大される傾向にあり、それに伴って海外投資や融資に伴うカントリーリスクのほか知的所有権や雇用差別に係わるリーガルリスクの多発化が予想されます。

(5)人・物・金による分類
企業の経営基盤の三大要素である「人・物・金」に係わるリーガルリスクです。

「人」に係わるリーガルリスクを「人的リーガルリスク」、「物」に係わるリーガルリスクを「物的リーガルリスク」、「金」に係わるリーガルリスクを「金的リーガルリスク」と言います。

(6)消極的か積極的かによる分類
火災・人の死亡など、既存の保険で損失を治療的に回復できるリスクと保険に加入するよりも積極的にリスクを回避するリスクがあります。前者を「消極的リーガルリスク」と言い、後者を「積極的リーガルリスク」と言います。積極的リーガルリスクは、人為的にこれを完全に回避することが可能です。経営危機の取引先に有する不良債権・焦付債券は100%回収することが出来ます。

しかし、消極的リーガルリスクは、損失の10%を回収する事も難しいでしょう。火災保険は損害も最小限に補償してはくれますが、火災そのものを回避する機能は持っていません。

(7)自然的か投資的かによる分類
地震、異常気象と言った自然災害によるリーガルリスクと新製品開発、事業拡大、為替変動、労働災害や欠陥製品によるリスクがあります。前者を「自然リーガルリスク」、後者を「投資的リーガルリスク」と言います。

(8)方法による分類
リーガルリスクを治療法務または戦略法務による区分で分類することが出来ます。治療法務的リーガルリスク、予防法務的リーガルリスク、戦略的リーガルリスクがそれにあたります。

以上、企業経営に係わるリーガルリスクは様々な分類が可能です。このようなリーガルリスクの発生可能性を予見し、その発生可能なリーガルリスクを分析し、評価し、その予防・抑制し損失・責任を回避することがリーガルリスク・マネジメントです。

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