中国
http://www.jmcti.org/mondai/pdf10/p106.pdf
ライセンス
日本本社による利益回収
利益回収の必要性
日本本社から在中国子会社へのノウハウ等提供の対価の回収が必要。
回収しない場合、日本本社から在中国子会社への利益移転とみなされる。
主な回収方法
外貨送金規制 |
移転価格税制 |
その他規制 |
税金 |
|
配当 |
△指摘可能性有 |
源泉所得税10% |
||
ロイヤリティー |
5万USD以上は、税務届出+銀行審査 技術輸入契約登記証が必要 |
△指摘可能性有 |
契約登記制度 |
|
サービスフィー |
5万USD以上は、税務届出+銀行審査 |
△指摘可能性有 |
||
コミッション |
5万USD以上は、税務届出+銀行審査 |
●確実に指摘される |
||
商流介入 |
×問題無し |
△指摘可能性有 |
回収方法一覧
資本的回収 |
利益的回収 |
清算による残余財産分配 有償減資 持分等の譲渡 |
配当 取引値差 技術指導、経営管理指導、コンサルティング等に伴う報酬、手数料(ロイヤリティー、サービスフィー 経費負担 |
配当金による回収は、配当決議が必要なため困難。
むしろ、貿易利益や手数料、報酬利益による利益回収方法が一般的。
30号通達「サービス貿易外貨管理法規の印刷・発布に関する通知」(2013年9月1日実施)の交付により、貿易外海外送金規制が大幅に緩和された。これは、中国内源泉所得を海外送金する際、5万USD超の場合のみ税務届出が必要であり、5万USD以下は銀行窓口で送金根拠の証拠資料を提示するだけでよい。
中国外商投資企業の中国国外への外貨支払権利能力
中国外商投資企業においては、批准された経営範囲内において必要とされる原材料、燃料等の物資について、公平、合理の原則に従い、国内市場及び国際市場より購入することができるものとされている1。
従って、外商投資企業において自らの経営範囲に関連を有しない費用について、または不合理な価格の費用については、中国国外への送金を行うことは認められていない。また、中国内資企業についても、同様に自らの経営範囲と関連しない行為に伴う外貨送金は認められていないものといえる2。
1 中華人民共和国外資企業法第15 条、中華人民共和国合資経営企業法第10 条、中華人民共和国合作経営企業法第19 条
2 中華人民共和国対外貿易法第8 条
合弁会社が配当金を日本へ送金する
USD50,000以上の場合、
要税務届出
税務届出申請書
会社定款
配当に関する株主会決議書または理事会決議書
親会社の税務登記証明の写し
2つの商流で
Case1: 中国子会社⇒日本本社⇒エンドユーザー
貨物貿易に伴う外貨返金名目で送金する。
輸出代金受取日から180日以内の送金であれば、直接外貨指定銀行で申請できる。
180日を越えた場合、外貨管理局へ申請する。申請書類は以下の通り(貨物貿易外貨管理実施細則第16条)
収入申告書類(輸出通関書類や外貨受取申告書など、中国子会社が代金を受領した際の申告証明)
輸出契約書
書面申請(外貨返金の原因および返金と同時に商品の返品が行われるかに関する説明)
その他の証明資料(当局の要求に応じて)
Case2: 中国子会社⇒エンドユーザーの商流で、中国子会社からの委託を受けて日本本社が対応する
日本本社と中国子会社はクレーム処理に関する業務委託契約を締結する。
営業税が課せられ、中国子会社側で源泉徴収される。なお、国外サービス提供のため企業所得税は課せられない。
外貨指定銀行へ以下の資料を提出する。
業務委託契約、本社発行のインボイス(支払請求書)、税務届出書
税務届出については、1件当たり送金額がUSD50,000を超える場合、以下の書類を準備する。
・記入済「届出書」
・契約書、協議書、取引証明のコピーおよび中国語の訳文
・税務機関が求める書類
貿易外貨管理法規(外貨送金規制)
貿易外貨管理法規(外貨送金規制)
http://bizpresso.net/column/grant-thornton/vol_6
経常項目と資本項目
なお、原則として、中国国外との外貨建債権債務の相殺取引は禁止される。
項目 |
経常項目(貿易収支、労務収支等) |
資本項目(資本の流入出) |
|
分類 |
貿易取引 |
非貿易取引 |
|
具体例 |
貨物輸出取引 |
役務サービス取引 配当金の支払 利子支払 |
直接投資 貸付 証券投資 |
外貨管理規制 |
必要書類の整備があれば自由 |
外貨指定銀行による審査制度 事前許可が必要 一部、金額制限あり |
外貨管理局の厳格な管理の下、認可制または届出制 |
その他の規制 |
・真実性の確認 ・送入金時には「輸出入通関証明書」の提示 ・核銷 |
経常項目①_貿易取引の規制
真実性確認・・・送入金の前提となる「取引事実が存在しているのかどうか」を判断する。資本項目規制の脱法行為としての経常取引の利用を防止する趣旨。
核銷・・・輸出入通関実績と外貨の受払の消し込み照合手続。
経常項目②_非貿易取引の規制
http://www.tomin-bc.com.cn/topics/address/107.html
http://www.nacglobal.net/2010/04/5-steps-to-foreign-currency-management-of-non-trade-items/
(上記リンクは情報が古い。2013年に税務証明制度は廃止。)
下表も古いのではないか?
銀行審査のみ(外貨管理局の批准不要)のケース |
外貨管理局の批准を要するケース |
その他 |
||
書類の簡略化 |
すべての書類 |
|||
借入金利息 |
– |
– |
◯ |
|
配当 |
– |
◯ |
– |
10%の源泉所得税 |
コミッション |
– |
Commission rate10%以下且つ100,000USD以下 |
10%超または100,000USD超 |
|
無形資産(特許権、ソフトウェア、技術指導料) |
50,000USD以下 |
50,000USD越 |
– |
|
コンサルティング |
50,000USD以下 |
50,000USD越 |
– |
|
その他のサービス貿易 |
50,000USD以下 |
50,000USD超 100,000USD以下 |
100,000USD超 |
経常項目であるため原則として自由に送入金可能ですが、若干の注意が必要です。例えば、日本からの技術・ノウハウの輸入に際しては、契約書を提示し、事前に無形資産の輸入許可を受けることにより登記証を入手しなければなりません。また、コミッションやコンサルティングフィーについては、外貨管理局の許可を得ないで送入金を行うためには一定の金額的制限があります。
取引内容 |
基準 |
手続 |
ノウハウ・権利使用対価の支払 |
契約書の提示・登記証の入手 |
銀行審査のみ |
コミッション |
コミッション率10%以下且つ 10万USD以下 |
銀行審査のみ |
技術指導料・コンサルティングフィー |
1回の支払が10万USD以下 |
銀行審査のみ |
配当 |
必要書類を整えればOK |
配当金
最もオーソドックスかつ確実な方法です。
https://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/qa/03/04A-001240
<規制>
配当可能額 = 当期未処分利益(税引後当期利益+過年度繰越損益)-(準備基金+企業発展基金+従業員奨励福利基金)
準備基金 |
企業発展基金 |
従業員奨励福利基金 |
|
将来の欠損金補填や資本組入れのための積立金 |
技術改良、固定資産、流動資産の留保のため |
福利厚生や特別手当等に充当 負債の部に「未払福利費」として計上 |
|
独資企業 |
資本金の50%に達するまでは、税引後利益の10%以上の積立が強制される。 |
任意 |
任意 |
合弁企業 |
合弁契約書、定款、理事会決議で決定 |
合弁契約書、定款、理事会決議で決定 |
合弁契約書、定款、理事会決議で決定 |
<課税>
親会社が配当を受領する場合、所得税が課されます。
親会社が中国国外にある場合は、子会社が配当時に源泉税10%を支払います。
<配当手続>
2014 年 1 月 24 日、国家外貨管理局は「資本項目外貨管理政策を更に改善と調整することに関する通知」 (匯発[2014]2 号 以下、「通知」)
http://www.bk.mufg.jp/report/chi200403/314012901.pdf
配当手続の簡素化(第五条) 配当金送金時の銀行宛提出資料が簡素化されました。配当可能額は、従来財務監査報告書の金額に 縛られていましたが、今後は年度監査後の発生利益や特別配当・中間配当等の柔軟な配当政策が可 能となるかもしれません。 従前 本通知(2 月 10 日以降) 5 万ドル以下:無し 銀行宛 提出資料 ①監査済会計報告書、②直近の験資 報告書、③董事会決議書、④税務備 案表 5 万ドル超:董事会決議、税務備案表(原本) 配当可能額 財務監査報告書上の、配当金と未分 配利益の合計金額以下 財務監査報告書記載額に縛られない
サービス貿易
POINT
5万USD上の送金は、①税務届出+②銀行書類審査が必要
http://www.amt-law.com/pdf/bulletins7_pdf/CPG_130806.pdf
http://www.bk.mufg.jp/report/chi200403/313073102.pdf
http://homepage2.nifty.com/kondo-cpa/usefull/chinese/taxation/311130729.html
2009年1月1日施行の64号通達(国家外貨管理局および国家税務総局による共同公布)、2013年9月1日廃止(40号通達)
USD30,000超のサービス貿易等項目の外貨支払には、所轄税務機関へ対外支払税務証明の申請が必要とされた。なお、64号通達には、収益、経常取引における送金及び一部資本項目の外貨送金も含まれる。
この対外支払税務証明は、クロスボーダー取引に対する税収徴収管理の重要な手段となった。
しかし、クロスボーダー取引や資本の流通量が増加し、外貨管理制度を緩和すべきとの世論が高まった。
2013年9月1日施行の40号通達「サービス貿易等項目の対外支払に係る税務届出に関連する問題についての公告」(国家外貨管理局および国家税務総局の共同公布)
外貨送金の税務管理を定めたものであり、従来の手続規定や64号通達を含む一連の規定が廃止された。
技術指導料、サービスフィーの支払等の対外送金の際に必要であった手続(税務署への契約書の提出、送金前の申告・納税、納税証明書の入手、外為取扱銀行からの送金)が緩和された(手続不要の上限額がUSD30,000からUSD50,000に緩和、納税証明書の提出は不要となった)
第1条 |
第3条 |
|
外貨資金 |
(一) 国外企業(個人)に支払う運輸、旅行、通信、建築・据付および労務請負、保険サービス、金融サービス、コンピュータおよび情報サービス、専有権利使用および特許、スポーツ文化および娯楽サービス、その他の商業サービス、政府サービス等のサービス貿易収入 (二) 国外個人による国内での勤務報酬 (三) 国外企業(個人)に支払う配当、特別配当、利潤、直接債務の利息、担保費用、資本移転ではない贈与、賠償、税収、偶発所得等の収益および経常移転支出 |
(一)域内機関の域外で発生した旅行、会議、商品展 示等の費用。 (二)域内機関の域外駐在機関で生じた事務経費およ び、域内機関が域外での工事請負による工事料金な ど。 (三)域内機関が域外で発生した輸出入貿易コミッショ ン、保険費、賠償金など。 (四)輸入貿易項目下で域外機関が取得する国際輸 送費用など。 (五)保険項目下の保険費、保険金などの関連費用な ど。 ・・・ |
税務届出 (国税主管部) |
取引書類(公印押印)+税務届出表※ ※従前は納税証明書を要したが40号通達により廃止 |
不要 |
銀行審査 |
税務届出表+審査書類 |
審査書類を銀行に提出 |
事後審査 |
国税主管は15営業日以内に事後審査を行う。 届出情報が実際の支払項目と一致しているか 対外支払項目が規定通りに関連税金を納付しているか 減免税待遇を申請する場合、関連税収法律法規と税収協定(手配)規定に合致しているか |
2013年9月1日施行の30号通達「サービス貿易外貨管理ガイドライン」(国家外貨管理局が公布)
サービス貿易1件当たりUSD50,000超の外貨受取・支払は銀行の書類審査が必要(USD50,000以下は審査不要)
なお、本通達(30号通達)の実施により、従前と比べて、書類審査は大幅に簡素化された。
サービス貿易項目 |
審査書類 |
|
国際運輸 |
運輸発票・運輸伝票・運輸明細 |
|
対外労務協力・対外請負工事 |
契約(協議) 労務予算表(工事予算表・工事決済書) |
|
対外請負工事契約締結前のサービス貿易に係る前期費用(対外支払) |
申請書(前期費用予算状況、使用期間、国外受取人と国内企業との関係等) |
|
専有権利使用費・特許費 |
契約(協議) 発票(支払通知) |
|
利潤・配当等(対外支払) |
会計士事務所が発行した関連年度の財務会計審査報告 理事会による利潤分配に関する決議 直近1期の出資金払込検査報告 |
|
代表所(事務所)の事務経費 |
経費予算表 |
|
技術輸出入 |
契約(協議) 発票(支払通知) |
|
国際賠償金 |
もとの取引契約 賠償協議(賠償条項) 賠償経緯の説明・証明資料 |
|
立替・分担(関連企業間) |
もとの取引契約 立替・分担契約(協議、説明) 発票(支払通知) |
|
代金返還 |
もとの取引契約 返還経緯の説明・証明資料 |
|
その他のサービス貿易 |
契約(協議)・発票(支払通知)等 |
故意分割支払の禁止(30号通達実施細則第32条、第34条(5))
第三十二条 虚构交易或以故意分拆等方式办理服务贸易外汇付汇的,依据《条例》第三十九条进行处罚。虚构交易或以故意分拆等方式办理服务贸易外汇收汇的,依据《条例》第四十一条进行处罚。
第32条 虚偽の取引、または故意に分割する等の方法でサービス貿易の外貨支払を行う場合、「条例」第39条に基づき処罰を行う。虚偽の取引、または故意に分割する等の方法でサービス貿易の外貨受取を行う場合、「条例」第41条に基づき処罰を行う。
第三十四条 本细则下列用语的含义:
(五)故意分拆,是指境内机构和境内个人为逃避外汇限额管理,同日、隔日或连续多日等频繁与境外同一收(付)款方办理服务贸易外汇收支行为。
第34条 本細則の以下の用語の定義:
(5) 故意の分割とは、国内機構および国内個人が外貨限度額管理を逃れるために、同日、隔日もしくは連続複数日等に頻繁に国外の同一受取(支払)側とサービス貿易の外貨受取・支払行為を行うことを指す。
給与支払
http://www.mizuno-ch.com/mailmag/mailmagazine/131122.html
1.日本払い給与の精算送金に関する現状
2013年9月1日に実施された非貿易項目送金制度の変更により、日本払い給与(※出向元の親会社が日本で立替えた人件費)の精算送金に支障が生じています。
これまでは、以下ふたつの規定により、日本払い給与の精算に関する送金上の問題は解消されていました。
・グループ企業間のサービス貿易項目の立替・分担経費について、10万米ドルまでは銀行に裁量権を認めた(匯発[2010]43号)
・多国籍企業認定を受けた外資企業に関しては、グループ企業間の人件費・福利費などの国際間の決済を認めた(匯発[2004]62号)
ところが、今回の制度改定に伴い、上記(匯発[2004]62号)が廃止されたのに加え、(匯発[2013]30号)の施行により、5万米ドルを超過するサービス貿易項目の立替・分担経費の送金に際しては、関連書類(雇用契約書・請求書・金額明細書・人件費の立替に関する協議書)を税務局に提示し、審査を経ての登記が必要となりました。
なお、同30号には分割送金(同日・隔日もしくは連続する複数日など、頻繁に国外の同一受払対象と送金行為を行う事)に対する規制も織り込まれましたので、5万米ドルの規制を回避するための分割も難しくなっています。
このように、送金額が5万米ドルを超過する場合は、税務局での審査登記が必要になったのですが、制度改正直後で審査基準も固まっておらず、その結果、スムーズな送金が難しくなっています。
2.税務局への事前登記に関する注意点
2013年9月1日より、5万米ドルを超過する場合は、関連書類を税務局へ提出して事前登記が必要となった事を上述しましたが、この関連書類の内容によっては送金実施上の問題だけでなく、PE認定をはじめとする税務リスクが発生するので注意が必要です。
具体的には、税務局に提出する、雇用・出向契約書、経費立替協議書、その他の資料に、(国家税務総局公告2013年第19号)のPE認定条件に該当する内容が織り込まれていると、送金許可が下りない、若しくは、送金に対する源泉徴収課税や、PE課税のリスクが生じますので、事前注意が必要となります。
3.駐在員派遣に伴うPE認定の影響
では、駐在員の派遣がPE認定された場合、どの様な課税が行われる可能性があるのでしょうか?
まず、日本払い給与の精算送金が、コンサルティング費の送金と見なされ、企業所得税・増値税・付加税の源泉徴収課税対象となる可能性が一番高いと思われます。
次に、親会社からの出張者が、183日ルールの適用を認められなくなる事が想定されます。
出張対価の支払いが個別に行われている等、税務局として出張者の特定が容易な場合は、従来以上に、183日ルールの制限が行われるリスクがあります。
最後に、PE認定の原則に基づき、日本の親会社から中国に対する輸出などに関する事業所得が中国で課税対象とされる事ですが、中国のPE課税実務を見る限りでは、この可能性は極めて低いと思われます。
PE認定の影響とリスクは上記の通りですが、何れにしても、PE認定が行われれば、税務局との議論、課税範囲の特定、納税実務など、煩雑な状況が想定される事から、まず、PE認定を回避すべく、国家税務総局公告2013年第19号の規定を分析し、対応を検討する必要があると言えます。
Royality
<手続>
ライセンス契約は地方政府の商務部門に登録する
税務当局に営業税を納税し、納税証明書の発行を受ける
外貨管理局で海外送金の許可をもらう
技術輸入契約は商務部に登録し、契約登録証の発行を受けることを要したが、2013年9月1日以降、契約登録証を提示することなく海外送金できるようになった(「サービス貿易外貨管理手引実施細則」第6条)
<実態>
Royality料率について、商務局から料率低減を求められる。
技術輸出入管理条例第17条
<Royaliry率に関する規制>
1993年4月28日「技術導入契約の締結及び審査許認可の指導原則」が廃止された。この指導原則は、ランニングロイヤルティ率は売上の5%および製品純利益の20%を超えてはならない、とするもの。
自由輸入技術の場合、技術援助契約の審査制はなくなり、登録制に移行した。
RoyaltyとService Fee
ロイヤリティー |
サービスフィー |
|
無形資産購入支払 |
役務提供(コンサルティングサービス) |
|
中国国内企業の経営範囲に関連を要する。 |
||
送金項目の規制 |
具体的送金項目 ・特許権等の譲渡や使用許諾 ・ソフトウェア使用許諾 ・ノウハウ使用許諾や譲渡 ・技術コンサルティング、技術サービス等 |
|
資料提出義務 |
例えば、ノウハウ使用許諾
① 申請書 ② 契約書または協議書 ③ 発票(Invoice) ④ 技術輸入契約データ表 ⑤ ⑥ 納税証明 |
コンサルティングフィー(技術コンサルティングを除く) ①申請書 ②契約書または協議書 ③インボイスまたは請求書
④税務証憑 |
※契約登記管理制度に基づく申請を行い、審査をへて技術輸入契約登記証が交付される。これがやっかい。
したがって、ロイヤリティーとコンサルフィーのどちらに区分するかは、技術輸入登記証の有無で決する。
・技術輸入登記証を有する場合⇒無形資産購入取引としてロイヤリティーとして処理
・技術輸入登記証が無い場合 ⇒役務提供としてコンサルティングフィーとして処理
本来、無形資産購入取引は役務取引ではないものの、通常技術指導等が伴うため、どちらにも分類しうる。
移転価格税制などの留意点について
ロイヤルティーの金額、割合の上限を直接的に定めるものではないものの、これに影響し得る制度として、移転価格の問題があります。すなわち、技術ライセンスの当事者が日本企業とその現地法人や合弁企業である場合に、ロイヤルティーの料率が適正な料率よりも高額である場合には、中国のライセンシーにおける課税所得が減少することになるため、税務機関が第三者間取引での通常の価格(独立企業間価格)を超えると判断した場合に、ロイヤルティー名目の下に現地法人などから日本の親会社へ利益を移転したとみなされ、現地法人などの課税所得が増額される可能性があります(主な法的根拠は「特別納税調整実施弁法(試行)」などである)。この点、独立企業間価格の判断基準は複雑なため、詳細については会計士などの専門家に確認されることをお勧めします。
マネジメントフィー
マネジメントフィーの支払は損金にならない。
資本項目
送金手続 |
||
直接投資 |
資本項目 |
日本企業が中国国内に直接投資を行う場合、関係主幹部の認可を経て外貨管理局に登記しなければなりません。資本金口座を開設して払込を行い、出資金監査を受けた後、外貨資本金の人民元転を申請することができます。さらに、一定金額以上の使途については、認可を受けた目的通りに払込資本を使用したかどうかの確認も行われます。これも投機的資金の流入を防止する趣旨といえます。 |
外債借入 |
資本項目 |
日本の中国現地法人が日本の銀行から外貨借り入れする場合、外貨管理機関に届出をする必要があります。外債限度額は、資本金決定時に認可された投資総額と登録資本との差額内に制限されます。 |
立替金送金について
中国現地法人から日本本社に送金するにあたって、立替金の送金可能性についてよくご質問を受けます。原則として、一部の企業を除いて立替金の送金は認められていません。駐在員の給料を日本本社が立替支払したまま、その精算ができないケースがよく見受けられます。苦肉の策として、技術指導料などの名目で精算している場合もありますが、これでは10%の営業指導料と5%の営業税の税負担を覚悟しなければなりません。
輸入技術の契約登記管理制度
加工貿易制度
税金Summary
対象企業・個人
中国内国企業、中国人
外国投資企業・外国企業、外国人
所得税
企業所得税
企業所得税
外国投資企業・外国企業所得税(33%)
個人所得税
個人所得税(5%~45%)
流通税
流通税
増値税(物品販売が課税対象)(13%、17%)
営業税(役務提供・無形資産等取引が課税対象。)(3%、5%)
消費税(奢侈品が課税対象。蔵出時に課税)(3%~45%)
関税
その他諸税
資源税
資源税
土地使用税
(土地使用費が課される)
財産税
房産税
車両船舶使用税
城市房地産税
車両船舶使用鑑札税
行為税
印花税(印紙税に相当)、契約税、屠宰税、宴席税、車両購入税
特定目的税
固定資産投資方向調節税
―
土地増値税、城市維護建設税
農業税
農業税、耕地占用税
対象企業・個人 |
||||
中国内国企業、中国人 |
外国投資企業・外国企業、外国人 |
|||
企業所得税 |
企業所得税 |
|||
外国投資企業・外国企業所得税(33%) |
個人所得税 |
個人所得税(5%~45%) |
||
流通税 |
流通税 |
増値税(物品販売が課税対象)(13%、17%) 営業税(役務提供・無形資産等取引が課税対象。)(3%、5%) 消費税(奢侈品が課税対象。蔵出時に課税)(3%~45%) 関税 |
||
その他諸税 |
資源税 |
資源税 |
||
|
土地使用税 |
|||
財産税 |
||||
車両船舶使用税 |
城市房地産税 車両船舶使用鑑札税 |
|||
印花税(印紙税に相当)、契約税、屠宰税、宴席税、車両購入税 |
||||
特定目的税 |
固定資産投資方向調節税 |
― |
||
土地増値税、城市維護建設税 |
||||
農業税 |
農業税、耕地占用税 |
|||
外貨管理と課税の関係
外貨管理が課税に与える影響
中国から国外への外貨送金には納税証憑の提出が必要であり、中国では外貨管理が厳格です。
外国企業は外貨を送金して初めて本国での利益になるため、外貨管理手続上での課税判断が極めて重要になります。
日中租税協定
中国国内税法に優先して適用される。
使用料
1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる使用料に対しては、当該他方の
締約国において租税を課することができる。
2 1 の使用料に対しては、当該使用料が生じた締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を
課することができる。その租税の額は、当該使用料の受領者が当該使用料の受益者である場合には、
当該使用料の額の10 パーセントを超えないものとする。
事業所得
1 一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該
他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することが
できる。一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内にお
いて事業を行う場合には、その企業の利得のうち当該恒久的施設に帰せられる部分12 に対してのみ、
当該他方の締約国において租税を課することができる。
人的役務提供にかかわるPE
また、人的役務提供にかかわるPE については、一方の締約国の企業が他方の締約国内において使用人その他の職員(独立の地位を有する代理人13 を除く。)を通じてコンサルタントの役務を提供する場合には、このような活動が単一の工事又は複数の関連工事について12 カ月の間に合計6 カ月を超える期間行われるときに限り、当該企業は、当該他方の締約国内に「恒久的施設」を有するものとされている14。
ロイヤリティーにかかわる課税関係
非居住者企業の中国国内に源泉を有する所得として収入額の10 %の企業所得税を納税するものとされている。
サービスフィーにかかわる課税関係
中国国内にPE を有する場合にのみ、企業所得税を納付するものとされている。
中国国内にPE がある場合には原則として企業所得税確定申告が必要であるが、中国にPE がない場合には取得した課税所得にかかる企業所得税は源泉徴収納付によるものとされ、その支払者が源泉徴収義務者とされる。
日本における外国税額控除
日本国内に本店又は主たる事務所を有する内国法人については、日本国内源泉所得または国外源泉所得の区別なく、全世界所得に対して日本において納税を行うものとされている。このように内国法人については、国外において外国法人税の課税を受ける国外源泉所得についても日本国内における課税を受けることから、ここで発生する国際的二重課税を解消するために、外国で課税された法人税15 について日本における法人税等から控除することができるものとされている。
また、日中租税条約においては、使用料16 について20 %の税率により支払われたものとみなして外国税額控除を行うことが認められている。
(2)営業税
企業17 及び個人が、中国国内において無形資産の譲渡を行う場合または役務提供を行う場合には、基本的に収入額の5 %の営業税が課税されるものとされている。
ここで、中華人民共和国国内における課税役務提供については、役務を提供または受領する単位または個人が国内にあること、また、中国国内で行われる無形資産の譲渡とは譲渡を受けた無形資産を国内で使用することをいうものとされている。
従って、原則としては、ロイヤリティー及びサービスフィーいずれの場合にも、営業税の課税が行われるものといえるが、技術移転行為に含まれる以下の行為については、営業税が免除されるものとされている。
①技術譲渡
技術譲渡とは、譲渡側がその保有する特許及び非特許技術の所有権または使用権を有償で他人に譲渡する行為をいう。
②技術開発
技術開発とは、開発者が他から委託を受け、新技術、新製品、新しい製造方法または新材料及びそのシステムの研究開発を行う行為をいう。
③技術コンサルティング
技術コンサルティングとは、特定の技術プロジェクトに対して、実行可能性の検討、技術予測、特定目的技術調査、分析評価報告等を提供することをいう。
④技術譲渡、技術開発と関連する技術コンサル
ティングサービス、技術サービス業務技術譲渡、技術開発と関連する技術コンサルティングサービス、技術サービス業務とは、譲渡側(または受託側が)、技術譲渡または開発計画の規定に基づいて、譲受側(または委託側)が譲渡された技術を習得するのを助けるために提供する技術コンサルティングサービス、技術サービス業務をいい、かつ、この部分の技術コンサルティングサービスの対価と技術譲渡(または開発)の対価が同じ1 枚の領収書に記載されているものをいう。
非居住者企業が中国国内で営業税の役務の提供を行い、かつ、中国国内で経営機構を設置していない場合、代理者を営業税の源泉徴収義務者とし、代理者がいない場合には、役務の受益者を源泉徴収義務者とするものとなっており、かつ、源泉徴収義務を負う者は源泉徴収義務の発生日から30 日以内に所在地の管轄税務機関に源泉徴収登記手続きを行うものとされる18。
また、非居住者企業が中国国内において営業税課税行為を実施する場合には、中国国内に経営機構を有する場合には、営業税について自ら申告を行わなければならないものとされており19、PE認定を受ける場合には、自己申告を行う必要があることになるものといえる。
(3)PE 認定を受ける場合の個人所得税課税
中国国内の企業、機構が査定利益の方法によって企業所得税を納付するか、または営業収入がなくて企業所得税を徴収していない場合は、その中国国内の企業、機構で職務を任命され、雇用されている個人が中国国内での仕事の期間に取得した給与は、中国国内の企業、機構の帳簿への記載の有無を問わず、すべて中国国内の企業が支払ったかまたは中国国内の機構が給与を負担したものとみなすものとされている20。
従って、査定利益の方法によって企業所得税を納付するPE において職務を任命される個人が中国国内での仕事の期間に取得した給与については、そのPE における帳簿への記載の有無を問わず、すべて当該PE が給与を負担したものとみなすものとされ、これに伴い、日中租税条約に規定される短期滞在者免税規定21 の適用要件を満たさないものとなり、原則に従い勤務期間基準による給与所得にかかわる納税義務が発生することになる。
以上のように、中国国内におけるPE の認定に伴い、そのPE に帰属する人員(出張者)の給与所得については、短期滞在者免税規定の適用を受けず、勤務期間基準により納税義務判定が行われることになる。
12 また、恒久的施設に帰せられる利得は、毎年同一の方法によって決定するものとされている(日中租税条約第7 条6 項)。
13 独立の地位を有する代理人については、日中租税条約及び関連公文並びに通知等に明確な解釈がないが、日中租税条約のモデル
であるOECD モデル条約コンメンタリーにおいて以下のような基準が示されている。
(i)当該企業と法的経済的に独立していること
(ii)(他の企業に対するのと同様の)通常の作業として当該企業のために業務を行っていること
14 ≪関与貫徹執行中日、中英税収協定若干問題的処理意見≫
日本国の企業が雇用者またはその他の人員を通じて、わが国において同一プロジェクトまたは2 以上の相互に関連するプロジェクトのためのコンサルティング役務の提供を行うときは、当該人員が独立の地位を有する代理人である場合を除いて、任意の12 カ月の中で連続してかまたは累計して6 カ月を超えるときは、我が国に恒久的施設を有するものと判定されなければならない。いわゆるコンサルティング役務活動とは、我が国の建設工事または企業の現有生産技術に対する改善、経営管理の改善及び、技術の選定、投資プロジェクトのフィージビリスタディ分析及び設計プランの選定などのコンサルティング役務の提供を含む。さらに、我が国企業の現有の設備または製品に対して、我が国の性能、効率、品質及び信頼性、耐久性の面で提起する特定の技術目標に対して技術援助を提供し、改善すべき部分及び部品に新たに設計、調整、試運転、試作などを行い、契約に定める技術目標を達成することを含む。ここでいう任意の12 カ月とは、年度の制約を受けず、年度をまたがって計算してもよく、コンサルティング役務契約を実施した月から起算する12 カ月の中で、そのコンサルティング役務契約を実施した月から起算する12 カ月の中で、そのコンサルティング役務の提供が連続してかまたは累計してかを問わず6 カ月を超える(6 カ月を含む)ものは、わが国に恒久的施設を有するものとみなし、取得する収入に外国企業所得税の規定に基づいて所得税を徴収するものとする。
≪関与中日税収協定及其議定書有関条文解釈的通知≫
コンサルティング役務により恒久的施設となる場合の規定とは、設備を伴わない純粋なコンサルティング役務性質による活動をいい、建設工事または企業の現有生産技術に対する改善、経営管理の改善及び、技術の選定、投資プロジェクトのフィージビリスタディ分析及び設計プランの選定などのコンサルティング役務の提供を含む。
15 従って、営業税部分については外国税額控除の対象にならないことから、営業税が源泉徴収課税される場合には、日本において損金処理を行うことにより損金として取扱われることとなる。
16 日中租税条約第12 条「使用料」とは、文学上、美術上若しくは学術上の著作物(映画フィルム及びラジオ放送用又はテレビジョン放送用のフィルム又はテープを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の使用若しくは使用の権利の対価として、産業上、商業上若しくは学術上の設備の使用若しくは使用の権利の対価として、または産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価として受領するすべての種類の支払い金をいう。
17 ここでは、居住者企業または非居住者企業の区分は行われない。
18 非居民承包工程作業和提供労務税収管理暫定弁法第20 条
19 非居民承包工程作業和提供労務税収管理暫定弁法第19 条
20 国税発[1994]148 号第4 条
21 日中間における短期滞在者免税規定(日中租税条約第15 条2 項)
賃金・給与所得については、次の条件を満たす場合には、勤務地国において免税とされている。
①報酬の受領者が当該年を通じて合計183 日を超えない期間当該勤務地国に滞在すること。
②報酬が当該勤務地国の居住者でない雇用者またはこれに代わる者から支払われるものであること。
③報酬が雇用者の当該勤務地国に有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものではないこと。
参考リンク
http://www.smbc.co.jp/hojin/international/pdf/CM201407_08.pdf
http://www.japantax.jp/mm/file_kokusai/siryou071122.pdf
http://old.south.jp/china/dialy/2002/siryou/%E7%A7%9F%E7%A8%8E%E5%8D%94%E5%AE%9A.htm
保税エリア
http://www.jc-web.or.jp/JCobj/Cnt/20-4-1.pdf
保税制度の要素
①限定された場所で行われる保税制度(保税エリア)
②場所が限定されていない保税制度(加工貿易制度)
保税エリアの種類(保税監管場所と税関特殊監管区域)
保税監管場所 |
税関特殊監管区域 |
|
輸出入に際して利用される貨物保税蔵置のためのストックポイント |
外資産業を誘致するための開発区の1つとして位置づけることのできる”保税開発区”とも呼ぶべきエリア 経済技術開発区や高新技術(ハイテク)産業開発区などといった他開発区と同じく国務院の認可により設立される施設 |
|
税関総署・国家税務総局・財政部・外為管理局 |
国務院の認可により設立 |
|
保税倉庫、輸出監管倉庫、保税物流中心A 型、保税物流中心B 型 |
保税区、輸出加工区、保税物流園区、保税港区、総合保税区、珠海マカオ・クロスボーダー工業区 |
|
保税監管場所
活用 |
|||
①保税倉庫 |
輸入(海外⇒国内) |
加工貿易用輸入原料、中継貿易貨物など輸入通関未完状態の貨物を、税関の審査承認を得て保税保管する場所。 |
貨物が国内一般地域へ向けて出庫される際には輸入通関を経る必要がある。 |
②輸出監管倉庫 |
輸出(国内⇒海外) |
税関の認可を経て輸出審査手続が完了した貨物のみを保管する場所。 |
港のない内陸地域の貨物が、沿岸地域に運搬されて配船を待つ時などに活用される。 |
③保税物流中心A 型・B 型 |
輸入(海外⇒国内) 輸出(国内⇒海外) 国内(国内⇒国内) |
“香港1 日遊”を代替する物流スキームが可能となっている |
税関特殊監管区域
税関特殊監管区域の基本
(1)基本前提の整理 ~税関特殊監管区域の活用者
税関特殊監管区域の具体的機能を見るにあたり、基本的な事項として、当該区域の機能の活用者という視点から、簡単に前提の整理を試みる。
まず、税関特殊監管区域の活用者には、大きく次の3つのグループがある。
区内企業 |
内外資の別を問わず中国内に設立登記された企業、即ち中国企業のうち、税関特殊監管区域内で認可・登記を受けている |
区外企業 |
中国企業のうち、税関特殊監管区域以外の地域(一般地域)で設立登記されている企業群 |
非居住者 |
要するに中国では設立登記されていない外国企業 |
更に、ここでは主に下記に述べる3 つのポイントをおさえておく必要がある。
第1点目のポイントは、それぞれの税関特殊監管区域で設立が認められる区内企業の種類である。これは中国ビジネスの基本ではあるが、中国に設立する企業は予めその経営範囲について登記を行なうこととなっており、かつその経営範囲は企業が自由に内容を設定したり兼営することはできず、認可が必要であったり一定の制限が設けられているというのが現状である。この根本原則は税関特殊監管区域といえども同様であり、本報告書でこれまで述べてきた通り、税関特殊監管区域には、保税物流機能特化型、保税加工機能特化型、そして両機能を併せ持つ機能総合型とがある訳だが、まさにこれが、それぞれの区域の中でどのような経営範囲を持つ区内企業が設立を許されるかということとリンクしているのである。
第2点目のポイントは、非居住者による税関特殊監管区域の活用である。通常、非居住者がその身分のまま中国の取引に関与する場合、その取引は国際間取引となり本来2 国間物流を伴うが、後にも述べるように輸出加工区を除く税関特殊監管区域では、以下に挙げる非居住者の行為が認められており、これによって非居住者は本来であれば国際間物流で要する物流コストや時間を大きく削減することができ、様々なビジネススキームの実現につなげることができるのである。
①海外から自己所有貨物を持ち込み、区内の物流企業に寄託して区内保管。
②同様に、国内の一般地域・他保税エリアから貨物を購入して自己所有物として、区内保管。
③区内保管された自己所有貨物を海外・国内各地域の他者へ販売し、代金を回収する。
第3点目のポイントは、区外企業の貿易経営権である。区内企業が区内企業或いは非居住者企業と取引を行うことは、即ち輸出入に相当するするため、これに従事する区外企業は貿易経営権を持つことが必須となる。尚、貿易経営権については本章後段でも触れるが、ここでは貿易経営権とは外国企業と貿易取引を行うための資格といった程の意味として捉えられたい。
各区の比較
保税区 |
保税港区 |
総合保税区 |
輸出加工区 |
保税物流園区 |
|
増値税即時還付 |
× |
○ |
○ |
○ |
○ |
保税物流 |
○ |
○ |
○ |
× |
○ |
保税加工 |
○ |
○ |
○ |
○ |
× |
区港連動 |
× |
○ |
× |
× |
○ |
|
|
|
保税区 |
保税物流園区 |
輸出加工区 |
保税港区・総合保税区 |
保税 |
物流 |
各種貿易(※) |
○ |
○ |
× |
○ |
|
|
物流に伴う簡単な加工 |
○ |
○ |
× |
○ |
|
|
検品・メンテナンス |
○ |
○ |
× |
○ |
|
|
配送 |
○ |
○ |
× |
○ |
|
|
展示 |
○ |
○ |
× |
○ |
|
加工 |
加工・製造 |
○ |
× |
○ |
○ |
|
|
(外注加工) |
○ |
× |
○ |
○ |
|
|
(保税2 次加工) |
○ |
× |
○ |
○ |
|
|
アフターサービスメンテナンス |
× |
× |
× |
○ |
|
|
その他 港湾作業 |
× |
× |
× |
○(港区) |
非保税 |
|
非保税貨物の保管 |
○ |
× |
× |
× |
|
|
小売 |
○ |
× |
× |
× |
|
|
金融、保険、コンサルティング |
○ |
× |
× |
○ |
|
|
研究開発 |
× |
× |
× |
○ |
|
|
1991 |
2004 |
2005 |
2007 |
2000 |
|
|
保税区 |
物流園区 |
保税港区 |
総合保税区 |
輸出加工区 |
保税物流 |
介在輸入 |
○ |
○ |
○ |
○ |
× |
|
中継貿易 |
○ |
○ |
○ |
○ |
× |
|
介在輸出 |
△ |
○ |
○ |
○ |
× |
|
擬制輸出入 |
× |
○ |
○ |
○ |
× |
|
スイッチ貿易 |
○(*) |
○ |
○ |
○ |
× |
保税加工 |
介在輸入+加工 |
○ |
× |
○ |
○ |
× |
|
介在輸出+加工 |
△ |
× |
○ |
○ |
○ |
|
擬制輸出入+加工 |
× |
× |
○ |
○ |
× |
税関特殊監管区域の保税機能
同区域の概念モデルは、”境内関外(国土的には内国だが、税関としては外国扱いする)”という言葉で示され、また、その管理は”一線(中国国境線)は開放し、二線(中国税関線。国内一般地域⇔区内のライン)は厳格に管理する”と表現されることもある。つまり、通関上は二線(中国税関線)が輸出入のボーダーラインとなる・
海外⇒区域:入境手続(貨物が税関の管理下に置かれる。まだ輸入貨物ではない)
海外←区域:出境手続(貨物が税関の管理下に置かれる)
区域←国内:輸出とみなされる。
区域⇒国内:輸入とみなされる。
ⅰ)輸出に伴う増値税還付の取り扱い |
ⅱ)区内で認められている保税業務 |
税関特殊監管区域では、貨物は一般地域から区内に搬入される時点で輸出と見なされるため、輸出者が一般地域で支払った増値税はこの時点で規定に基づき還付されることになる(増値税即時還付の実施)。しかし、同区域のうち、最も早期に誕生した保税区だけは、この増値税即時還付が実現されていない。輸出する予定となっている貨物は、同区に搬入される時点では輸出通関を必要とするものの、通常輸出通関の時点で交付される増値税還付必要書類(退税単)は、貨物が海外に向けて船積みされる時点まで交付されず、輸出者は船積み時に初めて還付を受けられることとなっている。 |
大きく”保税物流”と”保税加工”の2つに大別することができる。尚、ここでいう”加工”とは貨物に何らかの手が加えられ、その税目番号(HS コード)が変化する、或いは大きく価値が増えることを指している。よく、保税業務の解説書などに見られる物流加工、簡単加工といった言葉は、例えばラベル貼りなど、これにより貨物のHS コードが変わることがないことを前提としたもので、これらは物流上の作業の範疇を超えないものと考えればよい。 |
優遇措置の比較
一般地域 |
保税区 |
保税物流園区 |
輸出加工区 |
保税港区・総合保税区 |
||
加工貿易 |
加工貿易登記手帳制度 |
実施 |
実施 |
- |
不実施 |
不実施 |
銀行保証金制度 |
実施 |
不実施 |
- |
不実施 |
不実施 |
|
増値税の課税状況 |
課税 |
課税 |
- |
免税 |
免税 |
|
その他 |
増値税即時還付 |
- |
不実施 |
実施 |
実施 |
実施 |
区内での貨物売買に係る増値税 |
- |
免税 |
免税 |
免税 |
免税 |
|
輸出入割当・許可証制度 |
実施 |
実施(*) |
不実施 |
不実施 |
不実施 |
|
上記以外の制度(検疫等) |
実施 |
実施 |
実施 |
実施 |
実施 |
(*)加工製品の輸出に対しては不実施
①加工貿易登記手帳制度
一般地域及び保税区において加工貿易を行う場合は、その原料の輸入と製品の輸出は「加工貿易手帳」と呼ばれる手帳を用いて管理される。ただし、保税区以外の保税エリアではこの「加工貿易手帳」は採用されず、税関と企業とをネットで直結しEDI(Electronic Data Interchange)にて貨物の管理が行われる。
②銀行保証金制度
銀行保証金制度とは、加工貿易を行うに際して、輸入税額(関税・増値税など流通税)に相当する保証金を税関に差し入れる制度のことである。取扱商品と企業の規模や過去の違反歴に応じて分類され、扱われ方が変わる。一般地域とは異なり、保税区をはじめとする全ての保税エリアでは、保証金台帳制度は実施されない。
③加工貿易における増値税の扱い
一般地域において加工貿易を行った際の増値税は、広東省など不徴収不還付制度を採っている一部地域を除き、免税控除還付方式が取られており、以下の計算式で求められる不還付税額分が課税される。
増値税コスト(不還付税額)=(製品FOB-輸入原料額)×(課税率-輸出還付率)
多くの保税区では区内で加工貿易が行われた際の増値税については免税控除還付方式が取られており、一般地域と同様の不還付税額分が課税される。これに対し、保税区以外の保税エリアでは加工貿易における増値税が免除されている。
④(輸出時の)増値税即時還付
既に繰り返し述べているように、保税区においては輸出時の増値税還付は、保税区への入区時点ではなく、実際に海外へ向けて輸出された時点で行われる。一方、物流園区をはじめとする保税区以外の保税エリアにおいては、入区時点での増値税還付が実施されている。
⑤区内での貨物売買に係る増値税
全ての保税エリアにおいて、貨物売買に対する増値税は課税されない。
⑥輸出入割当・許可証制度
輸出入制限品目に対する管理制度として、「輸入(輸出)割当管理制度」「輸入(輸出)許可証制度」制度がある。数量制限のある品目に対しては、「割当管理制度」が、数量制限のない品目に対しては「許可証制度」が取られる。いずれも該当品目の輸出入に際しては事前に「許可証」を取得する必要があり、輸出入の際には「許可証」の提示が必要となる。
保税区に対する優遇政策として、保税区内で加工した製品を輸出する際は輸出許可証の取得が免除されている。保税区以外の保税エリアにおいては区内と国外の間で搬出入する貨物に対しては、原則として、輸出入の割当額や許可証管理の適用外となっている。
税関特殊監管区域の外為管理制度
税関特殊監管区域における外為管理制度については、従来、各種エリアごとに個別に制定されていたものが、2007 年8 月に公布された『保税監督管理区域の外貨管理規則』により、その扱いが統一された。ここでは上記で述べた区内で可能な業務を遂行する際に大きく関わりが出てくる外為管理規定につき、『保税監督管理区域の外貨管理規則』(以下『外貨管理規則』)及び『保税監督管理区域の外貨管理規則操作規定』(以下『操作規定』)のポイントを見ることにより、その概要を理解する。
①区内企業の外為管理上の義務
『外貨管理規則』では区内企業の外為管理上の義務を以下の通り定めている。
1.区内企業は外為局で外貨登記手続きを行う必要がある。
2.区内の貿易会社は、「対外貿易権」、「対外外貨支払輸入単位名簿」、「輸入代金回収照合届出登記」の登記を行う必要がある。
②取引通貨に関する規定
取引の形態 |
人民元 |
外貨 |
|
中国(一般地域)内の取引 |
○ |
× |
|
国際間の取引(中国⇔外国) |
× |
○ |
|
保税エリアと一般地域間の取引 (保税エリア⇔一般地域) |
商品貿易の取引 |
○ |
○ |
サービス貿易の取引 |
○ |
× |
|
保税エリア内の取引 |
○ |
○(※) |
(※)手持ち外貨からの支払のみ可。
③核銷(カクショウ)手続 *中国語では”フーシャオ(hexiao)”
「核銷」とは、貨物の代金(外貨)の送金・入金に対して外為管理局或いは銀行が通関申告書等のエビデンスを以って当該取引の真実性を確認すること。エビデンスと一致しない貨物の代金は決済できない。
『操作規定』では、対外送金に際し送金者が銀行に対して提出するべきエビデンス資料がケースごとに示されているが、基本的には概ね以下の通りである。
ⅰ)保税区監督管理区域の外貨登記証
ⅱ)契約書或いは合意書
ⅲ)インボイス
ⅳ)その他支払い方式に対応した有効な証憑・商業書類
ⅴ)通関申告書(報関単、备案請単等)或いは他の税関が監督管理している証憑
ⅵ)倉庫保管契約或いは合意書
ⅶ)倉庫の貨物の所有権を証明する資料
ⅰ)区内企業が非居住者へ貨物代金を支払うケース〔( )は送金の流れ〕
a.非居住者が区内企業に貨物を販売(区内→海外)
b.区内の非居住者貨物を区内企業に販売(区内→海外)
c.区外の非居住者貨物を区内企業に販売(区内→海外)
d.非居住者貨物を区内企業を経由し区外企業に販売(一般地域→区内→海外)
ⅱ)区内企業が区外企業へ貨物代金を支払うケース〔( )は送金の流れ〕
a.区外企業の貨物を区内企業が購入(区内→区外)
b.区外企業の貨物を区内企業を経由し非居住者に販売(海外→区内→区外)
c.区内にある区外企業の貨物を区内企業に販売(区内→区)
ⅲ)区外企業が区内にある貨物を購入し代金を払うケース〔( )は送金の流れ〕
a.区内企業の貨物を区外企業に販売(区外→区内)
b.区内にある区外企業貨物を別の区外企業が購入(区外→区外)
c.区内の非居住者貨物を区外企業が購入(区外→海外)
d.区内の非居住者貨物を区外企業が区内企業を介して購入(一般地域→区内→海外)
ⅲ)区内企業間取引のケース〔( )は送金の流れ〕
a.区内企業間売買(区内→区内)
決裁の順序
決済の順序が重要となっており、商流がY社⇒X社⇒Z社であれば、その決済はZ社⇒X社⇒Y社の順でなければならず、Z社がX社に外貨を送金済みであるというエビデンス、即ち「電子底帳」の提示が求められているという訳である。
商流と物流が一致しない場合には、外貨決済時の手続に注意すること。
中国の「代理商」各種
①代理商、分銷商、経銷商の違い
中国ビジネスにおけるバイヤーは、代理商、分銷商、経銷商、などと分類されます。これらの用語の定義は中国語の辞書を見ても統一されておりませんので、以下はあくまで参考程度とご理解ください。実際の商談でも、「弊社は代理商です」と話す中国のバイヤーが、日本のメーカーから商品を買い取り、卸・小売もするケースをいくつも見てきました。
a)代理商(agent)
商品を買い取らず、所有権を有しないまま販売し、メーカーより報酬を受け取る業者を指します。しかし実際には買い取りであっても代理商と言うことがよくあります。総代理、二級代理(二次代理)、などという言葉もあります。
b)分銷商(distributor)
メーカー、代理商から商品を買い取り、経銷商に販売します。
c)経銷商(dealer)
卸・小売業者。
②「代理商になりたい」、というバイヤーとの商談
代理商になりたいバイヤーがいたとしても、相手が言う「代理商」の意味が各企業により異なります。そのため、代理商という言葉を拠りどころに不慣れな通訳などを介して商談を進めると、話が噛み合わなくなることがあります。まずは相手がこれまでどのような商品を取り扱い、どこで販売してきて、御社の商品をどのような販路で販売しようとしているのかを確認してみましょう。契約書を作成する際には、更に具体的に確認していく必要があります。代理商という用語の定義は、相手との関係によって変わってくる、ということです。
保税区(Bonded Area ;the low-tax; tariff-free zone ;tax-protected zone)
【保税区】
http://www.shanghai.or.jp/osaka-city/news/23.html
1.設立目的・地域
保税区は、1990年に国務院の承認を得て税関が監督する特別地域として設置、同年6月に上海外高橋が第1号として認可されたのに始まり、1997年3月までに15ヶ所の保税区が設置された。設立目的は、中継貿易、通過貿易、加工貿易、貿易に伴う加工・整理・包装・運輸・貯蔵・商業展覧等の業務を、税関手続き等で優遇政策を与え発展させようとするためのもの。このような目的から、加工貿易を行う製造業の他に第 3次産業、すなわち貿易業、金融業、保険業、倉庫業、物流業、保税展示場等の企業誘致を行っている。第3次産業の誘致は他の経済地域には無く、保税区の特色となっている。設立地域としては上述の上海外高橋の他、大連、天津港、厦門、広東汕頭など15ヶ所で、沿海地区もしくは長江下流域の国際航路に直接繋がる地域、さらに華中から華南の香港や台湾の投資が多い地域に設置されている。
2.利用方法
保税区の利用方法として次の2点が挙げられる。1つ目は保税区が本来持つ特色である貿易拠点としての利用である。輸入貨物を中心として、関税や増値税等の資金負担の軽減を図ると同時に、簡便な税関手続きを通じ迅速な物流を実現させる機動性の高い貿易システムを構築する際には有効と思われる。現状では外資が単独で貿易会社を設立できるのは保税区のみであり、そのことが保税区を特色付けている。但し、貿易会社の設立は可能であるが貿易権は与えられていないので、輸出にしても輸入にしても、一般地 域との取引には必ず一般地域側の取引相手が輸出入許可を所持していなければならず、保税区の貿易会社が単独で中国にて輸出入を行うことができない点は注意を要する。
2つ目は製造拠点としての利用である。原材料を輸入し製品を輸出する際には、輸出入手続きが簡便で資金負担も軽いため、他の地域に比べ保税区は明らかに有利と言える。しかし、原材料を中国国内調達する場合は、製品を輸出しても原材料分の増値税が還付されないため、一般地域で加工して輸出する場合に比べ負担増となる。製品を中国内に輸入する場合は製品に対する課税となる。すなわち保税区で発生した費用にも関税が課税されるため、一般地域での製品加工(輸入原材料に対してだけの課税)に比べ、コス ト競争力という点では不利と言える。また中国国内の原材料を使用する際には、製品コストに含まれる国内原材料に対しても関税と増値税が課税される事になる。特に増値税に関して述べると中国国内から保税区に輸出する際の増値税は還付されないため、二重課税が行われることになる。税率が17%と高いので中国国内マーケット対象の事業は、非常に難しいと言える。
1. 保税区は主として以下の3つの機能を有し、3タイプの会社設立が可能です。また、環境汚染のないプロジェクトであれば、その他のサービス業を含め、幅広い業態の会社が設立できます。
a.国際貿易機能
区内では、国際貿易や三国間貿易取引に従事する貿易型企業を設立できます。
b.倉庫保管機能
区内の保税倉庫を登記地として倉庫・仕分型企業を設立できます。倉庫・仕分型企業は貿易型企業の機能を兼営できます。
c.加工機能
区内の工場を登記地として生産型企業を設立できます。生産型企業は貿易型企業および倉庫・仕分型企業の機能を兼営できます。
交易市場を活用した従来のスキーム
(i)貿易型企業(海外との間で貨物の売買を行うことを経営範囲に持つ企業)を外国資本100%で設立できたこと、(ii)交易市場を利用すれば、外貿公司(対外貿易経営権を有する内資の貿易会社)を通じて、区外企業と売買できたことから、このスキームは、外資100%で支配力を保った上で実質的な対外貿易と国内分銷を可能とした。しかし、全国的な法律において国内販売を行う際には国内分銷権を持つことが義務付けられていることから、今後は取締りの対象となる。
区外連絡事務所の設置
保税区は一般的に市街から遠隔地にあるため、これらの区内貿易型企業は実質的な本丸を区外連絡事務所と称して市街地におき営業に準じる行為を行ったが、当時の行政当局もこれを黙認していた。
しかし、2006 年1 月1 日施行の2005 年改正『公司法』と『公司登記管理条例』により、これまで必要とされてきた外商投資企業の連絡事務所の工商登記を規定する条文がなくなり、外商投資企業は連絡事務所の登記が不要となったが、一方でこれにより、連絡事務所名義では、職員の就業証・外国人居留証など工商管理局所管以外の諸手続には対処できなくなるという、ある意味での不具合も出てくることとなった。また、更に重要なのは連絡事務所では営業に準じる行為は一層厳格に取締りを受けるようになったことで、事例に登場するような保税区企業の区外連絡事務所は、これまでは営業的な行為がある意味で黙認されていたのであるが、今後は摘発の対象となりかねない。
優遇税制の変化
2008 年1 月1 日より新『企業所得税法』が施行され、中国の内資企業と外商投資企業に対する企業所得税の扱いが一本化されたのは既に周知の通りであるが、これに伴い、税関特殊監管区域内の外商投資企業に対する企業所得税上の優遇政策も撤廃されることとなった。これは、従来の税制では外資企業誘致促進の為、”開発区”にある外商投資企業に対し優遇税制が特別に許されていたものが、新税制下では、これまでの企業の立地による優遇という考え方を改め、今後は小規模低利益企業、インフラ産業やハイテク産業に従事する企業といった企業の性質によって優遇税制を実施するようになったためである。
上記で述べた、対外貿易経営権や国内分銷権が広く対外開放されたこと、及び企業所得税の優遇税率が撤廃になったことという2つの環境変化は、保税区をはじめとする税関特殊監管区域にとって、いずれも外資企業を誘致する上でのセールスポイントの一部が消失したことを意味している。ただ、前者について言えば、保税区企業はその経営範囲に国内分銷活動を加えることによって、保税・非保税の両ビジネスをある意味大手を振ってできるようになったのであり、この点については保税ビジネスを直接行うことのできない区外企業に対して相対的な優位性が認められると言うこともできる。しかし、多くの企業にとって、保税区に進出しなければならないという必然性が低下したのは間違いのないところである。
輸出加工区
保税区に続く多様化の中で最初に生まれたのが2000 年に成立した輸出加工区であり、これは増大する加工貿易の管理向上を目的として作られたものであった。加工貿易は、1990 年以降も増大を続け、1999 年には1990 年のほぼ4 倍、約1,845億米ドルにまで達した。これ自体は中国の国内産業発展に大きく貢献するものであったが、一方で行過ぎた誘致合戦などもあり加工貿易は全国各地に拡散し、当局にとってこれを管理する難度が高くなった他、密輸など不正行為が頻発するようになった。そこで、専用エリアを設けてここに加工貿易企業を囲い込み集中管理を行う、及び情報の電子化を進め新しい管理方式を採用するといったことで管理レベルの向上を図ろうとしたものである。
【輸出加工区】
1. 設立目的・地域
2000年4月、中国政府は加工貿易が分散して行なわれていた現状を徐々に改め、出入りを制限する特別区域管理に移行する方針を表明、加工貿易管理の強化・管理、輸出加工区に対する税関の監督管理の規範化、輸出加工区の健全な発展の促進、対外貿易輸出拡大の奨励を目的として輸出加工区の設置を決めた。
同時期、国務院が輸出加工区の設置を認可、製品輸出の加工貿易および輸出加工関連の倉庫、運輸業に限定される地域とし、税関が24時間監視・管理を行うこととなっている。設立地域は江蘇昆山、上海松江、浙江杭州、武漢、成都など15ヶ所。すべて既存の経済技術開発区の一角を利用して設立、保税区に比べ輸出加工区では内陸奥地での設置が目立つ。
2. 利用方法
文字通り輸出加工の促進を目的として設置された地域であるため、輸出加工会社、輸加工会社の生産にサービスを提供する専門の倉庫会社、あるいは税関の許可を得て専門的に輸出加工区の貨物を搬出・搬入に従事する運輸会社などが設立対象となり、商業小売、一般貿易、中継貿易およびその他の輸出加工区と関係がない業種は対象外となる。
輸出加工区は、①輸出増値税が発生しない。②輸出加工区に持込まれた機械・設備は5年経過後には、免税販売が可能となる。③輸出加工区内に出入りする貨物については、加工貿易保証金台帳制度を適用しない。④輸出加工用の原材料は保税で輸入可能、また中国国内から原材料を調達、加工後輸出する場合には輸出加工区に搬入された段階で増 値税が還付される。⑤輸出加工区内と中国国外の間には輸出入貨物に対して貿易上の制約を受けない、等のメリットを享受できる。一方、一般には輸出加工区内の会社は区外会社に対し製品の加工を委託することができない(特例として主管税関の許可を経て委託加工は可能、加工を委託する期限は6ヶ月)、また貿易会社の設立は認められていない等のデメリットもある。なお輸出加工区で生産される製品は、原則として全数量、最低 でも70%を輸出販売する必要があるため、中国国内での販売を志向する企業には不向きと言える。
2. 保税区に比べ、輸出加工区の機能は相対的に単一で(生産のみ)、製品輸出のための加工貿易企業の設立が認められています。なお、守衛と企業の当直担当者を除き、その他の人員は輸出加工区内に居住することはできません。また、営利目的の生活消費施設を建設することはできず、商業小売業、一般貿易、三国間貿易や当該輸出加工区と無関係な業務を行うことも禁じられています。輸出加工区内の企業が生産した貨物の輸出入業務を行えるのは、輸出加工区内の倉庫業者、税関が認定した輸送企業に限定されています。
輸出加工区の機能が「加工製造を主、保税物流を従」と段階的に明確にされたことにより、2007年に、江蘇昆山、浙江寧波、上海松江、北京天竺、山東煙台、陝西西安、重慶の輸出加工区は研究開発、検査測定、メンテナンス業務の試験運営実施を許可されました。
保税区と輸出加工区 との違い
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/qa/03/04A-A11130
1.区内の企業の自社用機器設備、自社用の合理的数量の事務用品、工場建屋・倉庫施設の建設に必要な物資・設備等を海外から輸入する場合、関税、輸入段階の税が課税されません。
2.区内の企業が輸出製品の加工に必要とする原材料、部品、包装材料等を保税で輸入できます。
3.貨物を保税区・輸出加工区と海外の間で自由に出入させることができます。関税、輸入段階の税が免除され、輸出入許可証やクォータ管理の規制対象外となります。
4.区内で行われる課税役務に対して増値税が課税されません。
5.保税区および輸出加工区内の企業は外貨登記証を取得する必要がありません。「貿易外貨収支企業リスト」の登記手続きを行い、また、真に合法的な取引実態のある輸出収入は域外に存置できる等、柔軟な外貨政策が実施されています。
6.保税区および輸出加工区内の企業は、加工貿易銀行保証金台帳を実施しません。
保税区 |
輸出加工区 |
|
メリット |
1. 保税区は保税貨物の売買(貿易)・保管および生産・加工という総合的な保税取引ニーズに対応できます。保税区は本来保税機能のみを持つエリアですが、政策的に区内企業が国内卸売り業務を兼営することも可能です(、「外商投資商業領域管理弁法」(商務部8号令))。 |
2.同じ保税エリアながら、加工貿易(保税加工)を行う上で、輸出加工区は保税区に比べてより適しています。 a.増値税の即時還付が可能 従って、輸出加工区内企業の中国国内からの原材料、物品調達には増値税がかからない。 b.輸出加工区の税関は24時間業務を実施。手続きも簡素化され、加工貿易企業に対して迅速な通関手続きを行っています。 c.通常保税区に比べ、土地代が安く設定されています。 |
デメリット |
1.保税区企業による中国国内からの貨物購入は国内企業間取引に類似し、増値税が課税されます。保税区企業がこの仕入増値税の還付を受けるためには、当該保税区から貨物を海外に輸出する必要があり、他の地区で通関し、直接海外に持ち出す取引の場合には、税還付を受けられない可能性があり、仕入増値税が保税区企業のコストになります。 |
2.輸出加工区企業の中国国内からの原材料調達に際して、原材料を販売する区外企業が増値税輸出還付の手続きを嫌い、増値税付での販売にのみ同意し、増値税専用発票ではなく輸出発票を発行する場合、当該輸出発票上の金額が貨物の金額と増値税の和となり、増値税は事実上、輸出加工区企業のコストになります。 |
物流園区(2004年~)
保税物流園区は、保税区に隣接または内接して設立される税関特殊監管区域
同区自身は保税物流に特化した機能特化型の区域
役割は保税区の物流機能の補完。
2004 年に登場した保税物流園区及び保税物流中心は、加工貿易の量的拡大と共に質的拡大も発生し、サプライチェーンが複雑化してくる中で生まれたものである。
即ち、加工貿易の工程が複雑化し企業間をまたがるようになると、転廠や香港一日遊などといった保税工業連鎖の手法が誕生したが、同時に転廠手続の煩雑さを回避したい、あるいはもっと近場で1 日遊を実施したいといったニーズも沸きあがったため、これに対応するものとして成立したという背景がある。
また、保税物流園区については、保税エリアを港と連動させ国際物流拠点として発展せしめるという国の方針に基づき、区港連動と呼ばれる施策を実施した最初の保税エリアである。
物流園区 |
保税区 |
中国外から貨物を同区に持ち込む段階では関税及び輸入増値税は保税扱いとされ、これを第三国に販売或いは保税区内で転売する取引についても増値税がかかりません。 |
同左 |
中国法人が物品を物流園区に搬入した段階で、関税の観点からは国外に輸出したと同等の取り扱いとすることから増値税の還付申請の権利が発生します |
保税区が同区内に貨物を持ち込むのみでは増値税還付の観点からは輸出とみなさず、正に中国国外に搬送したことを以って輸出と判定する |
貨物管理及び法人設立は厳格 物流園区では単にインボイスだけの付け替えを行う貿易会社ではなく、一定規模の倉庫を構える物流業としての法人設立が求められます。 |
保税区に貿易会社を設立することは比較的容易 |
物流園区の活用例
日本本社あるいは香港法人より購入した貨物を保税区の貿易会社が取り置き、顧客の要請に従い中国内に搬送する『オンデマンド』の保税在庫を持つ企業は従来からありました。ただし、保税区の貿易会社が中国内の製造子会社より購入する物品を中国内の顧客に転売する行為に対しては、増値税の課税を受けます。つまり、原材料を保税品として取り扱いたい中国において保税工場を営む製造会社は、中国製造品を保税区の貿易会社から購入するメリットが少なくなるわけです。その意味で、当該貿易会社が輸入品から中国製造品までを一括して取り扱う『ワンストップ』の配送センターとなることはできないでしょう。
一方、物流園区では、中国法人から購入した国内転売品も輸入品とするため、保税工場はすべての原材料を保税輸入部品として取り扱うことができます。従来『香港スイッチ』と呼ばれた、香港へ貨物搬送して再輸入し、保税輸入品に切り替える方法を、『物流園区』でインボイス・スイッチすることにより、物流コストも節約することが可能となります。物流園区は法人設立の要件が厳格であるために、このインボイス・スイッチは、日本本社が中国法人より物品を購入後、園区内の物流会社に本社名義在庫として保管し、オンデマンドで中国法人に販売するという遠隔操作取引形態となります。そして、本社に仕入、売上および売買差益が計上されます。
物流園区の活用とPE
http://www.bk.mufg.jp/report/chi200404/407082901.pdf
中国総代表 日本国公認会計士 鈴木康伸【物流園区の税務問題】
物流園区の課税問題
「園区スイッチ」で検討すべき税務問題には、「恒久的施設(PE)課税」、「源泉所得税の取り漏れ」、「関税の取り漏れ」があります。
税務問題①:恒久的施設課税
物流園区とはいえ、中国内に本社名義の在庫を取り置くことに対して、中国の税務当局がこれをPEと認定して、課税権を主張しないかという懸念が生じます。
日中租税条約では、PEを「事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部または一部を行っている場所」と規定していますが、「物品(商品)の保管、展示、引渡しのためだけの施設の使用や在庫の保有」はその例外とする取り扱いとなっています。
ただし、「注文取得代理人」すなわち他国の企業に代わって、当該企業の名において契約を締結する権限を有し、この権限を反復して行使したり、当該企業のために反復して注文を取得したりする者もPEとされるため、日本本社が従属的な地位にある者を通じて中国で契約締結、注文取得を行なう場合には、当該商品売買を通じて得た所得を中国での事業所得として日本本社が課税を受けます。
代理人であっても独立の地位を有する者、たとえば仲立人、問屋その他(資本関係のない商社もこれに該当すると判断されます)が通常の方法でその業務を行なう限り、PEとは判定されませんが、資本関係があるなど、支配、被支配の関係がある場合や、取引上のリスクを通常以上に代理人側が負うといった状況下では、代理人の独立性が失われていますので、PEの認定を受けます。倉庫業者に委託して自社在庫を中国内に保有する日本本社は、この限りにおいてPE認定を受けることはないといえますが、本社に所属する長期出張者、形式上は中国子会社に帰属する出向者であっても、費用の負担、指揮命令系統からして本社に従属すると認められる者が上記行為を行うにあたっては、所轄税務当局の解釈及びPE課税に対する姿勢如何とはいうものの、PE認定の可能性がある点に注意する必要があります。
税務問題②:源泉所得税の取り漏れ
中国製造子会社―>中国内顧客で販売していた製品を、「園区スイッチ」で中国製造子会社―>日本本社―>中国内顧客と商流変更するケースを考えてみましょう。変更前の取引形態では日本本社は商流に絡まないことから、中国の製造子会社より技術ロイヤリティを徴収していたであろうことは想像に難くありません。変更後は本社が商流に関与することで従来の技術ロイヤリティの徴収を止め、売買差益により相当の利益を回収することができます。製造子会社としては、製品売上収入と相応の技術ロイヤリティ費用の減少となり、理論的には課税所得の減少を招くことにはなりませんが、源泉所得税の対象である技術ロイヤリティ支払取引がなくなることで、所轄の税務当局から源泉所得税の課税取り漏れと認定されないように注意する必要があります。源泉所得税の取り漏れ問題は同じく、販売コミッションを支払うべき状況において値差による利益の付替えが行われるときにも生じます。
税務問題③:関税の取り漏れ
これら日本から見た外→外取引では、ロイヤリティを徴収する代わりに日本から出す部材価格に製造技術の対価相当額を加算することも実務上あり、この場合には源泉所得税ではなく、輸入部材に対する関税、輸入増値税を支払っているわけですが、取引の間に本社が介在することで部材の価格の極端な低下を招くのであれば、税関当局の注意を惹起することになるでしょう。
いずれの問題も、最終的には取引に本社が介在することに意義があり、価格設定が妥当であるという「移転価格」的観点からの合理的な説明が必要です。なお、これらの税務問題は指摘を受ける可能性がある事項として捉えるべきであり、物流園区を活用する全ての取引当事者に普遍的に発生するものではないことをご了解ください。
保税港区(2005年~)
http://www.daily-cargo.com/new/attach/back_number/CA0806_67-shitteru.pdf
保税物流園区と輸出加工区の機能を併せ持つ
洋山深水港
大連市の大窯湾
天津市の東疆
海南省の洋浦
寧波市の梅山
広西自治区の欽州
計6カ所
CARGO JUNE 2008 67
保税港区とはどういう機能がある開発区なのでしょうか。
保税港区は「輸出加工区」と「物流園区」の両方のメリットが統合された新たな開発区です。といっても、そもそも輸出加工区、物流園区が何かを説明しないといけませんね。中国の開発区の歴史をざっと振り返りましょう。
1990 年代半ばに登場した「保税区」は、中国で初めて一定の地域に保税機能を付与した開発区として登場し、荷主は輸入時の関税・増値税還付を遅らせる、輸出時の増値税還付を受けられるなどのメリットを享受しました。さらに2000年に入ると輸出促進を狙った「輸出加工区」が誕生しました。区内で加工・生産した製品に対する増値税を免除するなどのメリットを提供し、輸出志向の外資企業の誘致に利用されました。
なるほど。
04年に登場した「物流園区」では、搬入と同時に輸出と認められ、増値税還付を受けることが可能になりました。還付に実際の船積みを必要とする保税区との違いですね。保税区時代は香港へいったん輸出し、そこから再輸入する、いわゆる「香港遊」といったスキームを利用して、増値税の還付を受けていましたが、物流園区ではそういった煩雑な手続き、実際の輸送費が必要なくなりました。物流園区への搬出入で事足りる「園区遊」というスキームが可能となり、大きなメリットといえるでしょう。
また、港湾地区ではなく内陸で同様の機能を果たす「物流中心」という開発区もあります。そして、07年に正式に承認された「保税港区」は、保税区、輸出加工区、物流園区のメリットを兼ね備える開発区として登場しました。
素晴らしい響きですが、そのメリットを具体的に言うと。
増値税還付などのメリットは言うに及ばず、物流園区には進出できなかった生産型企業、輸出加工区には進出できなかった物流企業も進出可能です。検品・検針や流通加工といった生産・物流に付帯作業を、すべて保税港区内で提供することもできます。既存の開発区の機能を強化するのではなく、実験的にどんどん新しい開発区をスタートするところが中国らしいですね。
なるほど。保税港区は今、どれくらいあるのでしょうか。
現時点では上海洋山保税港区、天津東疆保税港区、大連大竃湾保税港区、海南洋浦保税港区、寧波梅山保税港区の5区が、国務院から正式な承認を受けています。このほかにも、青島、蘇州、深、厦門、張家港、欽州なども、保税港区の承認を求めている、と聞きます。
日系企業の対応はどうなのでしょうか。
さまざまですね。大連大竃湾保税区ではセンコー/蝶理、伊藤忠商事が倉庫を構え、オペレーションを行っています。一方で、伝統的に中国事業を強みとしてきたような老舗物流企業などからは「既存の開発区と何が違うのか、しばらくは様子見」というような声も聞こえてきます。
進出企業の狙いは
伊藤忠商事の現地子会社、伊新(大連)物流は従来から大連港背後地の物流園区に拠点を置いてきましたが、保税港区への機能強化に合わせ、新たに土地を確保し、加工スペースも持つ倉庫を新設しました。物流園区と異なり、HSコード(貿易上の商品分類)が変わるような大幅な加工ができるなど、保税港区のメリットを高く評価しているようです。単なる倉庫運営が目的でなく、ソリューション提案に必要な機能、という見方ですね。
ただし、保税港区内では人件費、土地代が一般地域に比べてかなり割高です。生産型企業が入居できるからといって、単なるアセンブリーなどであれば、コストの高い保税港区を使う必要性は高くありません。投資効果の高い業種を招致する必要があります。
対応は各社各様、といったところですね。
そのとおりです。既に既存の輸出加工区、物流園区/物流中心に拠点を置く企業も多く、それらの機能を組み合わせてさまざまなソリューションを提供しています。保税港区に新たな投資をする必要があるか、既存の機能で事足りるか、見極めている段階といえます。
どちらがいいということではなく、各社の戦略に沿った対応が行われているということでしょう。(岬洋平)
均訓
中国の”保税港区”では何ができるの?
中国物流関連のニュースを読んでいると、さまざまな「区」があることに気づきます。「保税区」「輸出加工区」「物流園区」など。これらは「開発区」と呼ばれる特別な機能を持った行政単位ですが、2007 年から「保税港区」という開発区が新設され、注目を浴びています。「既存の開発区のメリットを兼ね備えた特別区」との宣伝文句もある保税港区ですが、一方で、日系物流業者の動きをみると、進出に積極的な企業、そうでない企業と対応が分かれているようにも。そもそも、保税港区を使うことで、どのようなことができ、利用者にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
海運常識知ってるつもり!?
総合保税区(2007年~)
保税港区に準じた機能を持つ、港区の内陸版
保税区、輸出加工区、物流園区の比較
保税区 |
輸出加工区 |
物流園区 |
加工拠点+物流センター |
加工拠点のみ |
物流機能のみ |
製造業、物流業、貿易業 |
加工業 |
物流業、貿易業 |
保税区域内は関税法上外国とみなされる。
保税区⇒非保税区=輸入
非保税区⇒保税区=輸出
保税エリア活用のメリット
物理的には遠い中国-外国間の距離を保税エリアの活用により実質的に近づけること。
介在貿易・中継貿易
物流 |
商流 |
|
介在輸出 (中国国内物流に非居住者が介在する) |
国内 ↓ エリア ↓ 海外 |
中国人 ↓ 非居住者 ↓ 非居住者 |
介在輸入 |
海外 ↓ エリア ↓ 国内 |
非居住者 ↓ 非居住者 ↓ 中国人 |
中継貿易 |
海外 ↓ エリア ↓ 海外 |
非居住者 ↓ 非居住者 |
擬制輸出入・スイッチ貿易
物流 |
商流 |
|||
擬制輸出入 |
国内 ↓ エリア ↓ 国内 |
中国人 ↓ 非居住者 ↓ 中国人 |
国産貨物の輸入品化による免税優遇措置の享受 |
|
スイッチ貿易 |
エリアに留まる |
非居住者 ↓ 非居住者 |
具体例
エリアに貨物を集約し、小口分散やタイムリーな分納(JITなど)が可能にする。
非居住者資産の保税蔵置を利用する。
非居住者による介入”
非居住者による介入には次の2つのパターンがある。
A.貨物は保税エリアに留め置かれたまま海外において非居住者が介入するパターン。
B.中国国内の取引に非居住者が介入するパターン。
尚、上記A はとりも直さず保税エリアを利用したスイッチ貿易であり、上記B は即ち輸出入の擬制である。この擬制輸出入により、非居住者は本来の国際間物流でかかる金銭的コストと輸送時間を大幅に削減した状態で貨物の所有権を獲得することができる。
【メリットの例】
①非居住者が介入できること自体がメリット。
②パターンB では加工貿易における”香港一日遊”を代替できたり、国内貨物を輸入品化することで輸入品に対する各種優遇政策を享受することにつなげられる。
保税物流園区を活用しない三国間貿易の可能性:中国
Q. 保税物流園区(※)を活用せずに三国間貿易で輸出をすることを考えています。そこで、以下のような貿易取引をする場合の問題点についてご教示ください。日本のA社は、マレーシアのB社からある製品を受注し、その製品を中国のC社に発注した上で、その製品を中国のC社からマレーシアのB社へ直接送付します。
C社(中国)⇒A社(日本)⇒B社(マレーシア)
C社(中国) ⇒B社(マレーシア)
A. ご質問にあるような形態の貿易取引は、仲介貿易と理解でき、中国でも一般的に適法とされています。当該スキームで、
I. 中国税関での輸出通関
税関での輸出通関の際、一般的に、通関書類として、輸出通関申告書、インボイス、契約書、積荷明細書、輸出許可証(必要な場合)、通関票(必要な場合)などの提出が必要です。
このうち、輸出通関申告書には、通常、
a.取扱い企業(一般的には輸出入経営権を持つ企業。中国のC社)
b.荷揚港(本件では、マレーシアの港に該当すると思われる)
c.仕向地(本件では、マレーシアに該当すると思われる)
d.荷送企業(貨物の生産・販売企業。中国のC社)
などを記載する必要があります。
なお、船荷証券には、荷送人を記載する必要がありますが、この荷送人は中国のC社となります。
2012年8月1日以前は、輸出時の外貨受取照合消し込み票も必要でしたが、現在は不要です。
II. 外貨受取段階(外貨管理局/外貨指定銀行で外貨受取)
新しい貨物貿易外貨管理制度により、企業に動態分類管理を実施し、企業はその外貨収支の適法性と貨物輸出入の一致性の実績により、A/B/Cの3類に分けられます。
A類企業 |
実績は一番よい。 外貨受取手続きは非常に便利 外貨管理局のオンライン検査は不要 |
B類、C類企業 |
実績は良くない 重点的監督管理(各回の外貨業務(外貨受取手続きを含む)は比較的厳格な監督管理を受ける) B類企業は主に外貨指定銀行が、C類企業は外貨管理局が監督管理を実施 |
III. その他の留意点
中国では実務上の障害は通常発生せず、正常に取り扱うことができます。この取引では、実際の物流が直接中国からマレーシアとなるにすぎず、C社⇒A社⇒B社という取引自体は適法に存在しており、かつ、代金の支払いもこれに沿ったものとなるため、「取引の実態との一致性」の確保という中国外貨管理規制の趣旨に反するものではないと考えられます。
しかし、一連の流れからみれば、最終荷受企業はマレーシアのB社ですが、約定の貿易方式(国際貿易用語)により、日本のA社が仕向地のマレーシアで、通関手続きを完了するようにしなければならない場合(採用したインコタームズによっては、通関手続きはマレーシアのB社が責任を持って行うことになる可能性もある)、A社としては、あらかじめ現地の輸入規制を把握し、必要な手続きを行うことになります。この点も考慮して、中国現地の保税物流園区を活用するか、本件のような取引方法を採用するかを判断することになります。
※保税物流園区は、国際物流業を発展させるために設置された税関特殊監督管理区域で、中国国内と同区域間の物流は貿易として取り扱われます。
日本企業が仲介する中国国内取引にかかわる関税と増値税
Q. 保税物流園区を前提に、日本企業が中国企業からの注文品を別の中国企業に発注し、発注元の中国企業に納品する場合の関税と増値税の取り扱いについて教えてください。
A. 保税物流園区とは、国務院の批准を経て保税区内または保税区に隣接する特定港区内に設立された、現代物流を専門的に発展させるための税関特殊監督管理区域です。
ご質問の取引は、中国に事務所等を持たない中国非居住法人である日本企業が、中国納入先から仕入れた注文品を発注元の中国企業へ中国国内で転売する中継取引です。通常、日本企業は輸出入権を持っていないため、中国国内では売買できません。しかし、保税物流園区内では、中継貿易を含む輸出入貿易(みなし輸出入取引)ができます。
1.買い主としての日本企業が、仕入先の中国企業から保税物流園区での引き渡し条件で注文品を調達します。その場合、保税物流園区への搬入が輸出とみなされ、輸出通関を行った仕入先の中国企業(売主)は輸出貨物増値税還付を申請できます。
2.売り主としての日本企業は保税物流園区の倉庫業者と貨物預託契約を締結します。注文品は保税物流園区で保管・梱包等された後、発注元の中国企業(買主)に引き渡されます。その場合、保税物流園区からの搬出が輸入とみなされ、発注元の中国企業が貨物を免税または保税で輸入できる場合を除き、輸入通関を行った発注元の中国企業に対して輸入関税と増値税が課されます。発注元の中国企業が一般納税者の場合、増値税の控除を申請できます。
中国国内でありながら、保税物流園区では日本企業への外貨支払ができることが特徴ですさらに、実際に輸出し再輸入する取引に比べ、保税物流園区を活用したみなし輸出入取引は、輸送費の削減、デリバリーのリードタイム短縮、在庫ダメージも減少できます。
ただし、園区を利用するには倉庫業者等と貨物預託契約を締結し、登記料を支払う必要がありますので、そのコストは見込んでおく必要があります。
ここでは一般的な質問に対する一般的な回答にとどまり、具体的事例にはあてはまらない可能性もあります。また、保税物流園区の運用は立地によって運用が著しく異なります。さらに、通達等も頻繁に改正されるため、具体的案件については現地の税関等、専門家に相談ください。
商業登記制度
営業執照(営業許可書)
中国では企業の営業許可書は重要な意味を持っており、取引先の基本情報、経営範囲、登録資本金、年度検査状況等の情報が含まれています。日本の商業登記簿謄本に相当しますが、中国では誰でも閲覧・入手できるものではないため、取引先に提出を求めるか、弁護士を起用して入手するかなどによります。
中国の企業は、工商行政管理部門で年度検査を受け、合格した場合はその印鑑が押されます。従って、工商行政管理部門の捺印がない場合は要注意と言えます。
偽造天国の中国で、文書で信用度を測るのはかなり難しい。どうしても文書でと言えば、営業許可書の副本を公証してもらう方法もありますが、公証処自身がいい加減。
現地法人設立
http://www.hiwave.or.jp/HAPEE/q_a/73.htm
Q. 上海で輸出入貿易及び中国国内営業権(卸・小売・サービス業)を有する日本資本100%の会社設立を希望しています。中国では未だ外資100%の会社設立には多くの規制が存在し、簡単には設立が困難であると聞いています。しかしWTO加盟条件として外資企業に対する規制は急速に緩和されているとも聞きます。実情を教えてください。
A.これまで中国で外資100%の会社設立をする場合、多くのハードルがあり設立が容易でありませんでした。しかしWTO加盟条件である”外資系資本に対しても国内同様、最恵国待遇とする”を満たす必要上、2008年の最終期限までに急速に規制緩和が進行しています。
従来の国内市場保護及び輸出優先政策主義から、国内市場開放政策への転換が急速に進んでいます。外資誘致においても、輸出目的の工場誘致から中国国内市場参入目的のための誘致に積極的に支援する方向転換が見受けられます。
ご相談の件に関し、最近の外資100%設立の事例がありますのでご紹介します。
【事例】
1.設立申請内容
設立目的:中国における輸出入貿易事業と中国国内卸・小売事業及びサービス関連事業
業 種:1)輸出入事業及びそれに関連する事業
2)中国国内事業(卸及び小売販売事業)とサービス関連事業
資 本 金:125万元(日本円換算2,000万円)
設立地域:浙江省寧波(Ningbo)市内
2.設立規制条件(2006年11月時点)
貿易事業権:外資100%の場合は最低資本金US$10万以上
国内営業権:35,000元以上
設立規制条件を満たすこと以外の規制はほとんどなかった。
このような条件下で申請代行窓口の一つである「寧波市外国企業服務貿易有限公司(NBFESCO)」を通じて2006年11月に設立申請手続きをした。事業計画書を作成、仮事務所の設定を経て日本人出資者全員立会いのもと、同公司で仮申請書に署名し申請を完了。その後、類似社名他のチェックを経て正式申請ガ認められた。日本人出資者は日本の外務省の旅券発給事実証明書(旅券コピーを添えて申請)を取得し、その証明書を添えて外務省の公印確認書を取得、これらの書類を添えて在日中国領事館で領事査証(認証)を取りNBFESCOに提出、すべての手続きが2007年1月末に完了。中国当局の審査を経て3月中旬頃(中国旧正月休暇のため)までに設立完了となる予定。
3.設立費用
現地、日本企業勤務経験のある中国人女性に依頼し、申請窓口である「NBFESCO」を通じて行ったので、費用は中国人女性の書類作成費用4,000元とNBFESCOの申請費及び代行費用10,000元、計14,000元(日本円約20万円)程度で済んだ。
申請時に日本文・中国文併記書類や中国文・日本文への翻訳などの事務費用が必要となります。現地にそのような伝手がない場合のコンサルタント会社経由の申請となれば、相応の代行手数料がかかるものと考えられます。設立が容易になりつつある状況ですので、一時のような多額の設立代行手数料を取られることのないように留意してかかることが肝要です。一般的な意味での会社設立自体に関する障壁はほとんどなくなりつつあるものと考えて良いと思われます。
EXWで中国企業から製品を購入する際の現地通関手続き:中国
Q. 中国の建材メーカーから床材、ドアなどを現地の工場渡し(EXW)条件で現金購入することになりました。現地での輸出通関手続きについて教えてください。なお、当社は中国に現地法人を持っておりません。
A. 誰が輸出業務を行うかを確認する必要があります。中国では対外貿易権(外国貿易を行う営業権)を持っていなければ、輸出業務、通関手続きを含め、一切の輸出契約を行うことができません。
I. 対外貿易権(外国貿易を行う営業権)の確認
当該メーカーが対外貿易権を持っていて直接船積みできるかを確認します。
当該メーカーが対外貿易圏を保有していない場合は、中国側の企業(通関業者等)の紹介を依頼する、あるいは、日本の関連企業(海運業者等)を指定するなど、中国側の輸出代理者を決定する必要があります。また、輸出代理者には、規模の大きく信用の置ける運送会社などを選ばれることをお勧めします。
なお、上記についてはEXW条件に限らず、他の貿易条件についても同様です。
II. 輸出関連業務の手続き
輸出代理者(公司)にすべての輸出関連業務を委託し、以下の手順で進めます。
a.輸出入契約締結
b.建材代金(例えば米ドル等の外貨CIF建て)の入金処理
c.輸出商品の検査検疫(この場合は床材であるため工場の検査証明書)
d.海運会社による船積み、通関手続き
e.船積書類と通関書類
i.インボイス(輸出代理者が発行する)
ii.パッキングリスト(輸出代理者が発行する)
iii.品質検査証明書(工場が発行する)、場合によっては輸出検査検疫証明書(工場が発行する)
iv.Arrival Notice(本船到着通知、船会社が発行する)
v.Insurance Policy(保険証書、保険会社が発行する)
vi.B/L(船荷証券、船会社が発行する)
輸出港により中国側の必要書類が異なりますが、売買契約書、輸出商品検査証、輸入業者の詳細(名称、住所など)、本船の船会社名、仕向け地等が判明すれば書類は作成できます。なお、この輸出代理の手数料は対外貿易権使用料も含め輸出商品(FOB)代金の1%~2%程度が相場と言われています。
III. 日本の輸入業者がEXW(工場渡し)条件で契約する場合の留意点は以下のとおりです。
a.メーカーの工場から輸出港までの中国国内輸送
b.通関および船積み作業
c.船腹予約から日本までの海上輸送
d.本船入港後の日本での輸入通関
e.到着港から輸入業者までの日本国内輸送
f.貨物の保険契約
なお、上記手配とすべての費用負担は輸入者の責任で行う必要があります。
IV. 留意点
1.中国との貿易取引に精通していない場合は、最初からEXW(工場渡し)条件ではなく、当初の一定期間については、FOB(本船甲板渡し)条件中国港、CFR(運賃込本船渡し)条件日本港など、条件の再検討をお勧めします。
2.当該メーカーと長期的な取引を考えているのであれば、当該メーカーに対外貿易権を取得させれば、輸出代理者は必要ありません。2004年7月以降、従来の対外貿易権取得については届出登録制になり、承認許可は必要なくなりました。当該メーカーが輸出業務に精通していることを前提に、対外貿易権を取得させるのも選択肢の一つです。
中国での価格設定
①中国へ輸出、市場で販売するまでの経費を考慮します
中国での小売価格を設定するには、必要な流通経費と為替レートを考慮しなければなりません。流通経費は、a)日本での輸出諸経費、b)輸送費・保険料、c)中国での輸入諸経費、d)関税、e)増値税、f)中国国内販売のための各種(許認可、ラベル作成等)、g)貿易会社・代理商・小売業者などです。輸出に関する経費は物量によって、その他のコストは流通ルートによって大きく変動してきます。
②輸出商品の中国販売価格の目安
日本の定価の1.5~3倍、FCA価格(FOB価格)の4.5~5.5倍が目安と言われますが、私がサポートしたケースでは、中国の定価が日本の定価の3倍以上、FCA価格の8倍以上になることもありました(それでも売れています)。また、定価を定めても売れるのはセールの時期のみで、実際の消費者への販売価格は定価から1.5~2割引いた価格だったりすることもありますので、販売価格についてそのあたりの事情も考慮する必要があります。定価をあまり低く設定すると、百貨店等からセールの際に協力を求められた際に採算が合わなくなるので注意が必要です。
③まずはテスト販売を
一旦現地での販売価格を設定すると、直近の為替レートが変動したからといってすぐに価格に反映させることはできません。設定した価格が消費者に受け入れられるかどうか、まずはテスト販売をします。店頭に並べてから商品が消費者から認知されるのは少なくとも3か月はかかります。根気強く市場の反応を見ていきましょう。はじめは売れなくとも、一旦定めた定価を変えずに店頭でのディスプレイやPOPを工夫しながらどれだけ売れるか様子を見ます。なかなか売れない場合も、価格に問題があるとすぐに結論付けずに、商品に見合った売場なのか、店頭で消費者が商品を認識できているかなども、合わせて検討しましょう。
④販売価格を下げる努力と高くても売れるようにする工夫
輸出に際して必要経費が掛かるため、どうしても日本での販売価格より高くなってしまいます。中間マージンを抑える、FCA価格(FOB価格)を下げるなどの販売価格を下げる努力だけでなく、高くても売れるようにするための工夫も必要です。高額商品が売れる売り場を確保し、広告等でブランドイメージを高め、パッケージやPOPなどを駆使して商品の付加価値を消費者に分かりやすく説明をすることで売り上げが伸びるケースもあります。