Home / 法務の基礎 / 企業戦略と法務 / 人事と法務の基礎

人事と法務の基礎

人材は人・モノ・カネ・技術・情報という経営資源の中でも最も重要な資源であると言われる事が多くなっています。重要性の順位はともかくにして、人材が得られなければ企業活動が行えないことは明白でしょう。しかも、人材は生身の人間と不可分であるから、他の経営資源とは明確に異なった特徴を持っています。人材は資源であると同時に生命体でもあり、資源を活用する主体です。人材は経営活動を含む社会生活においては市民であり主導者ともなるのです。

このような特質を持つ人材を企業はどのようにして経営資源として活用できるのでしょうか。抽象的に企業の側から見れば、企業は必要な時に必要な能力を持った人材を必要な数量だけ、最も少ない費用で確保することを目標とします。ところが、人材のそばから見れば、人材が企業のために資源として活用するのは人生の一部ともなります。企業のニーズ・目標と人材のニーズ・目標とは自動的に一致するものではないでしょう。これを人事戦略と呼ぶことができます。

自由主義経済社会においては、人間は独自の判断によって生活の糧を入手し、独自の生活設計を立てることが認められています。企業活動との関係では、誰でも職業選択の自由を法律として保証されています。
企業が人材を確保する行為は、企業と人間個々人との自由契約(雇用契約)を結ぶことを通じて行われるものです。そして、契約締結の自由という自由主義経済社会の法的な原則に従って、雇用契約の条件であるかはあらかじめ定まっているわけではありません。それは企業経営一般と同じように、きわめて創造的な判断を必要とします。一定の社会環境、人間の価値観、社会習慣を基礎として設定されなければいけません。

法律的に見れば、本来、企業と人材となるべき人間とは平等であるとされています。しかしながら現実にはそのような平等は存在しません。したがって、平等を前提とした法律制度は抜本的に見直され、今日では形式的ではなく実質的な平等を確保するための法律体系が整備されつつあります。これを企業の側から見れば、企業の創造的な活動領域に様々な法的な規制が加えられてきている事になります。
このような制約を不当であると位置づけるのではなく、その真の狙いを理解した上で、適切な人事戦略を構築することこそが今日の企業に求められていると考えるべきでしょう。

今日の企業はもはやその経済的な優位性を基盤とした自由な人事政策を採用することはできません。このような状況下で人事戦略は法律とどのようにかかわってくるのでしょうか。
人事戦略の具体的な内容を考える前に、本来自由な雇用関係は日本においては現在どのような法律の規制対象とされているか、概略を整理してみましょう。

・まず、古典的な雇用契約の規定として、民法第623条・631条の規定があります。そこでは、雇用契約が当事者の合意によって成立することを定め、雇用の期間は5年を超える合意をしたときは5年を経過した後はいつでも解約できること、期間を定めなかった場合にはいつでも解約の申し入れをすることができることなどを規定しています。雇用条件は当事者の合意によって定めることが前提とされています。

・雇用関係の基本法として、労働基準法があります。この法律は古典的な民法の規定を修正し、雇用契約の成立から基本的な労働条件の最低基準を定めています。雇用期間については、原則として1年を超える合意をしてはならず、期間の定めのないときは30日の予告によって解雇することができることを前提としています。ただし、解雇については権利の濫用による解雇を認めないとする判例理論が確立しています。

・労働条件の重要な要素である賃金については、最低賃金法が制定されました。日本の制度では労働協約に基づく地域的最終賃金と都道府県別に定められる地域別別最低賃金とを定める方式をとっています。

・労働条件に関連して、労働安全衛生法があります。職場の労働災害の防止、安全衛生管理について定めます。

・性別による雇用条件の不当な差別を是正する目的で、男女雇用機会均等法と略称される法律が制定されています。

・いわゆる派遣労働者のために、派遣労働者法と略称される法律が制定されました。

・育児休業などの関する法律は育児のために勤務時間を規制します。

・パートタイム労働者の増加に伴い、短時間労働者法と略称される法律が制定されました。

・集団的な労働関係の規律のためには、労働組合法が基本となります。いうまでもなく、労働組合の結束の促進、団体交渉のルールを定め、不当労働行為という概念とその排除の仕組みを定めています。

Check Also

企業における事件・事故のパターン

リスクを回避・除去できずに発生 …

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です