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企業のリスク管理への関与

企業のリスクには、事業そのもののリスクと事業を遂行する経営上のリスクがあり、これらは不即不離の関係にあります。
たとえば、外国にその国の企業と合弁会社を設立した場合、そこには天災などの不可抗力的なリスク、外国為替の制限や民族間の争いと言ったその国に特有なリスクであるカントリー・リスク、さらには合弁会社の事業の経済性や市場の変動と言った経済的なリスク、そのようなリスクを克服しながら合弁会社を健全に経営するためのマネジメント・リスクがあります。

会社を健全に経営するマネジメントとしてのリスクが実現化し、リスク管理体制(内部統制システム)の構築の必要性が判示されたのが大和銀行事件です。大阪地裁は平成12年9月20日判決の中で「健全な会社経営を行うためには、目的とする事業の種類、性質などに応じて生じる各種のリスク、例えば信用リスク、市場リスク、流動性リスク、事務リスク、システムリスクなどの状況を正確に把握し、適切に制御すること、すなわちリスクの管理が欠かせず、会社が営む事業の規模、特性などに応じたリスク管理体制を整備することを要する。」と判示して、内部統制システムの整備の必要性を指摘しています。

日本御大和銀行訴訟事件においてリスク管理体制または内部統制システムの構築の必要性が判示されたのが2000年ですが、米国ではその翌年の2001年12月にいわゆるエンロン事件が起きました。これはエネルギー事業を中核にして急成長し全米で第7位にのし上がり株価も急騰したエンロン社で不正会計が発覚し経営破たんした事件です。
同社の最高経営責任者と財務最高責任者が利益を水増しするために簿外取引を行い、会計監査を担当した、当時米国を代表する監査法人であったアーサー・アンダーセンをも抱き込んで粉飾決済が行われたのです。事件発覚に伴い、アーサー・アンダーセンも廃業となりました。さらに翌年の2002年7月にはエンロン社と同様に不正会計により経営破たんしたワールド・コム社事件が発生しました。株主代表訴訟が提起され、前者は71億ドル、後者は61億ドルで和解されました。

それまでの米国はコーポレート・ガバナンスの先進国として資本取引市場も透明性に優れ信頼性が高いと言われてきた反動から、これらの事件によって会社の財務報告やコーポレート・ガバナンスへの不信感を一気に高めることになり、米国の株式の時価総額は4兆円も下落したとの報告もあります。

不適切な企業の財務報告を正し、企業の経営・財務報告への信頼性を高めるために急きょ制定され施行されたのがいわゆるSOX法(Sarbanes-Oxley Act of 2002)です。SOX法の根幹は、企業の最高経営責任者と最高財務担当責任者は、①開示する年次及び市範囲の財務報告が成果鵜であり誤解を与えるものではない事、②内部統制の評価をはたしている事、について宣誓する義務を負っています。このSOX法の基本的考え方は、1985年に設立された米国の民間団体である委員会COSOの1992年レポートが原点となっていると言われています。
COSOのERM(Enterprise Risk Management)の動きに合わせて、日本でも企業不祥事への対応などリスク・マネジメントを検討するために「企業行動の開示・評価に関する研究会」が経済産業省に設けられました。平成17年2月にせっちされた研究会は、「コーポレート・ガバナンス及びリスク管理・内部統制に関する開示・評価の枠組みについて-構築および開示のための指針-(案)」を作成しました。その後パブリックコメントを経て最終的に「コーポレート・ガバナンス及びリスク管理・内部統制に関する開示・評価に関する開示・評価の枠組みについて」として平成17年8月31日に公表されました。

同報告書の重要なポイントを以下にまとめましょう。

◎構築及び開示のための指針
①コーポレート・ガバナンスの確立
②健全な内部環境の整備・運用
③トータルなリスクを認識・評価
④リスクへの適切な対応
⑤円滑な情報伝達の整備運用
⑥業務執行ラインから独立した監視(内部統制)の確立

◎指針の活用
①会社法の現代化において、第会社についての事業報告の必要的記載事項となる予定の「内部統制システム構築の基本方針の概要」
②上場会社の企業経営者が、証券取引法に基づく有価証券報告書、および東京証券取引所規則に基づく決算短針において開示していくことが重要。

このように見て行くと、内部統制システムとは単にリスク管理ではなく、広く企業活動全体の当時を示すコーポレート・ガバナンスに近い概念と捉えることが出来ます。

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