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企業の取引における交渉

企業の目的の一つとしてまず挙げられるのは「いかに多くの利益を上げるか」です。もちろん利益の追求だけが企業の目的・存在理由ではありませんが、利益を上げる事で納税や雇用の確保と言った社会的貢献が行えることは間違いありません。
では、利益とはどのようにしてもたらされるものなのでしょうか。それは損益計算書で示されるように、企業の事業活動を通じていかに収益を多く上げ、費用(経費)を少なく抑えるか、と言う努力の成果と見ることが出来ます。収益の最大化・費用の最小化の努力は、例えば新技術の導入による生産工程の短縮・人件費削減、生産拠点の集約による原価の低減・輸送費の削減、に見られるように企業の内部努力によるものも大きいですが、取引先との交渉の成果として現れる事も多いのです。そういった意味で、交渉とは常に利益の源泉として意識・理解した上で臨むことが求められるでしょう。

収益の主要な源泉は売り上げにあるので、自社の製品をできる限り高く・多く売るために、受注から契約に至る営業取引において最も頻繁に交渉が行われます。同時に、注文を受けた製品の製造や差ビス提供のために、原材料、部品。製品、サービスなどの購入価格を低くして費用の最小化を図っていくための交渉も行われます。さらには、必要に応じて他社から技術を導入したり、他社に開発を委託するための交渉もあります。
加えて、交渉は売り上げに直接的に結び付く営業分野だけではなく、業務提携やM&A(企業の合併・買収)といった事業の戦略から発生する分野でも行われます。双方が関心を占める業務提携やM&Aを具体的に検討するためには、きわめて秘密性の高い経営上または営業・技術上の秘密情報が、一方または双方から開示される必要があります。
このように、営業分野に限定されることなく、企業取引の様々な段階において会社内の機密情報のやり取りを交わす必要があり、そのため交渉時には秘密保持契約を締結させることが多くなります。

実は交渉は個人でも極めて日常的な事柄です。しかし、企業の場合は特に交渉の成果がそのまま会社の利益へとつながることになるので、交渉は組織的・常態的に行われる重要な業務となります。たとえば、売買取引においても、通常は一方の利益は他方の損失となるため、価格・支払い条件・納期・仕様など、その相反する利益の配分や帰属、利害の解消を目的として交渉がなされます。
交渉はこのような性質を持っているので、企業の戦略に即して明確な方針のもとで、用意周到な準備をし、相手方との信頼関係を構築するコミュニケーションの中で行う必要があります。

では、交渉に必要な基本的態度はどのようなものか、具体的に検討してみましょう。

1、 交渉の目的の設定
言うまでもなく、どのような目的のために交渉を行い、最終的に何がゴールとなるのかを常に明確にしておきましょう。
例えば、ある製品を生産するため海外に合弁会社を設立しようと現地会社と交渉するケースを考えてみましょう。その合弁会社の目的は売り上げ増のための「当該地での市場拡大」なのか、日本の生産拠点の補完として「日本や第三国への輸出拠点」とするのかと言ったように、目的によってその存在意義や役割が異なってきます。
このような交渉の大前提が忘れられることはないと思うでしょうが、交渉が進んでいくと具体的な個々の条件のみに関心が寄せられ、次第に枝葉末節な事柄に執着してしまい最終目的との整合性を見失ってしまう傾向がある事も否定できません。

2、 自社の利益の最大化を図る
交渉相手も様々な制約・条件があり、最終的には双方が歩み寄る事が必要になるでしょうが、ここでも自社が目指す利益の最大化を明確にする必要があります。しかし、その一方で、利益の最大化を絶対化せず、相手方との関係の中で、相対化していく柔軟な対応も必要となってきます。

3、 交渉は、企業間の取引に横たわる問題解決へのプロセス
交渉とは、自社の利益の最大化を図りながら、相手方との間にある問題の解決を図るためのプロセスです。このため、いきなる交渉が成立すると言う事はまれでしょう。自己の交渉シナリオがある程度固まったら、弁護士などの外部専門家のアドバイスを得て、自社の考え方を客観的に見る必要があります。

4、 交渉の任に当たる担当者に必要な権限を与える
社内の権限規定にもよりますが、交渉の基本方針と具体的戦術について事前に共通認識を持ったうえで、必要に応じて交渉担当者に一定の権限を明確に与える必要があります。
このような権限を与えて交渉に臨むことは、特に外国企業との交渉では重要です。交渉に臨んでも何らの対案を出さないまま持ち帰り、社内の再検討の上、改めて相手方と再交渉すると言うような交渉態度では、時に意図的な時間稼ぎと思われてしまい相手方に不信感を持たれてしまう可能性もあります。

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