ローテーションとは、法務要員の定期的な配置移動を指します。専門性が強い部門なだけに、最も難しい問題と言っても良いでしょう。企業の経営者はこの問題の重要性を良く理解しているはずです。
しかし、この問題のネックは“現場”にあります。現場にとって有能な要員であるほど、保持しておきたいと思うものです。そして、法務や経理のような職能スタッフの場合この傾向は一層強くみられます。理由としては、当該要員の代替性が小さいと言う点が挙げられるでしょう。現場、特に現場の責任者から見れば代替要員を求めることが極めて難しいと考えられがちなのです。しかし、通常は現場である各事業部門に法務要員またはそれに準じるスタッフが配属されている事が多いと思われます。したがって、ローテーションを促していく方法は、企業の経営トップの強力な指導力に依存せざるを得ないでしょう。
ローテーションによる経験は法務要員にとって極めて重要なものです。その理由としては以下のようなものが考えられるでしょう。
①各事業分野を経験する過程で“前者全体の利益”は何かを習得し、相手方との契約上のバランス感覚を磨く機会を得ることが出来ます。
②他の事業分野での法務を経験することで、種々の法務機能を理解し、そのなかで一人一人の要因にとって自己が最も得意とできる分野を獲得しうる機会を持つことが可能となります。
③前者全体としてみるとき、このような要員異動を利用する事で必要な“時点”と“場面で法務資源を最も必要な分野に配置することが可能となります。ローテーションの制度化とその積極的な活用は効果的な法務組織の構築と人材の育成にきわめて重要と言えます。
しかし、いくつかの問題もあります。
ある企業にとって上述したような特定の法務機能が必要とされる場合、単なる定期的な移動は法務資源の無駄使いになるだけではなく、タイムリーな業務対応を難しくする可能性すらあります。いずれにせよ、企業法務の人材育成は、より経営の意思を反映させる形で組織的かつ体系的な仕組みの中で行う必要があります。