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企業法務担当者に必要な要素

会社は人、と言いますが、法務から見ても同様の事が言えます。企業法務の担当者には様々な要素が求められ、業務を割り振られたからと言って誰でも簡単にできるわけではありません。担当者として求められる人格とその育成について検討してみましょう。

『必要な能力』

法務担当者と聞くと、法律知識を持った人が適切と思う方が多いでしょう。もちろん、法務を担当するのであれば法律の知識は必要になります。ただ、企業法務に関して言えば、知識の面だけで決めるのではなく、以下に述べるような人材の発掘・育成が必要となります。
はじめから十分な法律知識を持った人を確保するのは困難であり、法律知識のみを欲しているのであれば社内担当者でなくとも社外の弁護士を利用すれば事足ります。

昨今、企業法務に臨床法務(裁判法務)だけではなく、予防法務・戦略法務の機能を求められる傾向が強まり、単なる法律のスペシャリストではなく日々の企業活動に密着した『企業法務担当者』が必要となります。そのための基本的な能力としては、以下のようなものが挙げられます。

(1)洞察力
事象を冷静かつ客観的に注意力を持って観察・分析し、苑中に内在する問題を発見、見抜くことができる能力です。この中で、事象を法のフルイにかけようとする意識・法的感覚がリーガルマインドへとつながります。
(2)論理的思考能力
法律は論理の学問と言われています。事象を分析したうえで、その結果を論理的に統合する能力が必須となります。
(3)企画力
単に問題点を指摘するだけではなく、それを解決するための対策案・代替案・選択肢を提示できる企画力・想像力が必要になります。とくに、実務遂行の中から習得した貴重な法的体験に基づき、先見性のある政策能力を持つことが必要です。
(4)表現力
企業における事業展開は、各事業部で企画・立案され交渉の結果、契約書の締結を持って実行へと移されます。このフローにおいて、法的側面から、事故の考えや見解、自社の意向を適切かつ明確に表現することのできる表現力が必須となります。このためには、社内外を問わず折衝力が必要で、契約書などの文書作成力も不可欠となります。

『素養について』

企業法務担当者は法律・法務の専門家である前に、まず良きビジネスマンである必要があります。
第一に、社内外の環境、自社の経営理念を十分に認識し、自分の企業が目指す方向と展開を十分理解するとともに、各事業部の計画・進展など、事業展開に大きい関心を持ち、苑中で常に法的な目を持って物事・事象を見て行く態度が必要となります。
第二に、法務部門は“開かれた部門”でなくてはいけません。専門家集団というのは煙たがられやすい存在でもありますが、他の部門から気軽に相談できる、サービス精神豊かな協調性こそが必要なのです。そうすることで、全社的なリーガルマインドの向上とともに、リスクを含めて多くの情報収集のネットワークを構築する事もできます。
最後に、唯我独尊ではないにしても、簡単に妥協しないNOと言える人物である必要があります。議論が必要となる場面で押し負けてしまっては社員のリーガルマインドが育たない事は元より、他社とくに外資企業との交渉において、簡単に条件を飲んでしまうことは大きな損失につながる可能性が高いのです。

『人材の育成』

法務部門と言えばすべてが法学部出身化と言えばそうではありません。法知識の有無よりもその人自身が持つ能力・素養が重要になってきます。法務部門は、幅広く様々な出身分野の人から構成される方が企業の法務業務を遂行する上で適切ではないかと思われます。
たとえば、研究・開発に係わる契約はベースとして技術知識を持つ理科系出身者の存在が重宝されるでしょう。

法務部門の人材構成は業務の性質上法学部出身者を中心とするにしても、経済学部、小学部などの他の文科系出身者と理系出身者も混在して構成されるのが好ましいと思われます。企業法務部門に課せられた職務は、単に法律中進のみではなく、企業全般にわたる幅広い業務を担当し専門性の中にも普遍性のあるフレキシビリティを要するからです。

(1)育成について
要は、単なる個々の専門的知識のみが重要なのではなくその持てる潜在能力・要素を引き出し、それをいかに法感覚・法意識に結び付けるよう育成するかにあります。

①OJT
まず基本的かつオーソドックスな方法として、OJTがあります。上司と経験の浅いスタッフにパーティを組ませ一連の実務活動の中でここに教育していくといいでしょう。
②学資編入で法学部へ
法学部以外の出身の人は、基本的な知識を身に付けるためにできれば法学部第二部に学士入学し、法律知識を習得する事がいいでしょう。

『国際法務について』

現代は世界のボーダレス化の進展に伴い、企業のグローバリゼーションが新たな次元に入っており、企業行動を世界的視野から見直す必要がある時代です。(経団連企業行動憲章 実行の手引き)
このような時代背景の中で国際法務に関する業務を担当できる人材の確保・育成が急務とされています。とくに英会話を含むかなり高度な語学力を持つ人材の需要は高くなっています。その育成のためには、若手スタッフを海外留学させるのが有効でしょう。

一定期間、米国のロー・スクールあるいは法律事務所に留学させ、その間、現地において会社の懸案事項があれば、その連絡かかり、あるいは事務処理の手助けをさせるのも一案です。
さらに留学終了後、現地子会社に手法務業務にあたらせるのも、その能力をさらに高めるのに有効でしょう。

このような海外留学において、現地の法律知識・法制度の習得はもちろん、次の点に主眼を置くことが必要です。
①実践的語学力の体得
②外国の社会・文化の理解
③外国人の物の考え方の体得
④物おじしない態度の養成(NOと言える)

これらの若手スタッフが海外留学で培った経験と成果は、現在多岐にわたる国際法務業務遂行において力を発揮してくるものと思われます。

『法務部門の管理者の責務』

企業法務を担当する人材に必要な能力・素養はたくさんありますが、これをすべて兼ね備えた人材は極めてまれでしょう。結局のところ、各個人の能力・素養よりも長所・特性を100%発揮できればいいのではないでしょうか。
『法律知識には乏しいが論理性に優れた人』、『交渉において折衝力は乏しいが書面作成力に優れた人』など、業務担当者個々の持つ特性を100%発揮させ、個人の能力を統合し、全体としてかかる理想を実現する組織体を構築していけばいいと考えます。

その中で、管理者自体そのものの育成も重要であり、とくに部全体をマネジメントする部門の長の責務は重要かつますます大きい物となるでしょう。

『倫理観を備えた人・企業』

リスク管理・企業倫理管理は、事件・事故が発生しないように常日頃から十分に注意を払い、もし発生してしまった場合には、その被害・損害を最小限にするようその体制を構築しておく、ことにつきます。
少しだけならいいだろう、このくらいならみんなやっている、という考え方では必ず社会の中で淘汰されていくでしょう。すべての企業の従業者がリーガルマインドを持って、守るべきは守るという徹底した姿勢こそが要求されます。

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