企業活動の多面化、複雑化および国際化に伴い、従来の法務部門では想定されていなかった様々な法務問題への対応が求められてきています。そのためには、必要な知識とスキルを身に付けた専門社員も必要になってくるでしょう。
したがって、従来型の内部統制、文書管理を中心とする法務部門の在り方を、より多機能な法務部門に変貌・拡充し、そのために必要とされる法務要員の育成も重要な課題となっています。
企業法務の組織の在り方とそれを支える人材の育成について考えながら、企業法務の組織化のポイントを明確にしていきましょう。
『国内・国際企業法務の業際』
事業の国際化に応じて、企業法務の各種問題点に対処していく必要が出てきた事業を反映し、法務部門は新たに国際的な企業法務に対応するグループを設置する形で組織の拡充・再編を行ってきました。しかし、国際化の進展とともに国内・国際と言う業際にはっきりした線を引くことが難しくなりつつあります。
そもそも、国際化と言う意味合いは、国内問題と海外問題が交錯し、融合し合い、ある意味では国内問題を国際問題の一環として取り上げると言うことでもあります。要は、海外と国内の相互関係が日常化している現状を認識することが出発点とも言えます。
たとえば、日本国内に日本企業と合弁会社を設立することを考えてみると理解しやすいでしょう。もちろん、合弁会社の設立にあたって適用される法規は“原則的に日本法”です。しかし、外国企業側は、合弁会社設立契約の条項に自らに有利となる考えを入れたいと思うでしょう。その考え方は、彼らの国の法律が基礎となっている事が多く、場合によっては契約の解釈の根拠となる準拠法を外国企業側の国の法律にしたいと言う交渉が発生するでしょう。
このような場面の交渉の“チエ”は国際的な法務の知識なしに進めることは難しいし、避けたいことです。国内の法律の知識だけで処理するようなケースではないと考えるべきでしょう。
このことからも、国内・国際(または海外)と言う区分で法務機能およびその組織を分けることが現状に即していない、と言う事が理解できるはずです。