(1)リーガルリスク・マネジメントと会社法規部
リーガルリスク・マネジメントを企業内で確立するための第二の要件は、完全なる会社法規部創造です。
「会社法規部」とは、特定企業に必要とするあらゆる企業法務と敷いての法律業務を一元的・集中的・予防法務的かつ戦略法務的に処理するための法律専門家の補助またはサービス部署です。
会社法規部は、特定企業に必要とする企業法務を処理する部署です。したがって、その部署が法規部と言う名称のほかに「法務部」「法規室」「法務グループ」その他の名称を付していても、その諸葛事務が法務の処理を行う部署であれば名称の如何を問わず法規部と称することが出来ます。
しかし、法規部が後述するような治療法務を主とした企業法務を行っているような場合には、リーガルリスク・マネジメントは確立できません。企業内にリーガルリスク・マネジメントを確立するためには、その能力を有する法規部ではなくてはいけません。
会社法規部は、企業をめぐる国際的・経済的・社会的かつ法律的環境の変化に対応しつつ、量的のみならず質的変化を伴いながら完全なる会社法規部の創造を志向します。この質的変化を会社法規部の役割という二つの側面から会社法規部形成の発展過程を分析すると、「サービス・スタッフ型法規部」「スペシャリスト型法規部」「ゼネラル・スタッフ型」と三段階にその形成発展過程とその段階で有する機能を分析することができるでしょう。
(2)会社法規部の形成発展過程
①サービス・スタッフ型法規部と機能
通常、会社法規部はサービス・スタッフ型法規部からスタートします。この段階では、企業経営の政策決定において経営判断が法律判断に優先する傾向にあります。この時点での会社法規部の機能は、裁判法学を基盤とする裁判法務中心の企業法務です。
この時期は、会社法規部形成の発展過程の時代区分では、おおむね第一期法務部時代と言えます。このようなサービス・スタッフ型法規部には紛争の予防的機能や経営戦略的機能は期待できません。したがってリーガルリスク・マネジメントは確立できないでしょう。
②スペシャリスト型法規部と機能
スペシャリスト型法規部の機能は、裁判法務のほかに予防法務を行うものですが、その企業法務は主として降車、つまり予防法務を基礎とする予防法務を中心に行うもので、会社法務部形成の発展過程の時代区分ではおおむね第二期法規部時代と言えます。
このスペシャリスト型法規部は、経営と法律の一体化による予防法務を主たる所轄事項とするので、一応の紛争要望は可能でしょう。つまり、リーガルリスク・マネジメントは一応確立できますが、法務の予言は期待できません。それどころか、会社法規部の組織、所轄事項などはスペシャリスト型法規部を具装していても、その実態は治療法務に重点が起これているサービス・スタッフ型法規部の機能しか果たしていないとみられるケースもあります。
③ゼネラル・スタッフ型法規部と機能
汽車法規部形成の発展過程の第三段階は、ゼネラル・スタッフ型法規部です。この段階では、経営と法律の関わり合いは、単に“一体化”ではなく、それを越えて法律を予言する者であり、会社法規部形成の発展か手の時代区分では第三期法務部時代です。
ゼネラル・スタッフ型法規部の機能は、裁判法務、予防法務のほかに主として戦略法務を中心とするものです。それでもなおリーガルリスクが発生する恐れがあるとすれば、次の二点が問題視されるでしょう。
1、ゼネラル・スタッフ的な法規部が設営されていたとしても完全なるゼネラル・スタッフ型法規部としても機能を果たしていない
2、企業倫理の欠如
ともあれ、会社法規部は以上説明したように一般的にはいまの三段階を経て形成発展過程をたどるでしょう。
ただ、会社法規部の組織は企業規模、事態によっては決定づけられる場合もあります。また、いきなり企業と同時にゼネラル・スタッフ型法規部として形成されるケースもあるでしょう。