2000年の大和銀行事件に続いて、2004年になると鉄道会社の有価証券報告書の中で株主の状況に関する虚偽記載が発覚し、企業のリスク管理・内部統制の重要さが改めて認識され、最終的には会社法及び金融商品取引法に内部統制の規定が置かれるに至りました。ここで言う内部統制システムとは、単に企業経営上のリスク管理ではなく、広く企業活動全体の統治を示すコーポレート・ガバナンスに近い概念と言えます。会社法および金融商品取引法に基づく内部統制システムの整備とその下での経営は2008年度より実施に移されることとなっています。
内部統制システムは、企業活動全体を統治するコーポレート・ガバナンスの重要な手法と理解しますが、その中には当然リスク管理も入ってきます。そのことは企業の法務部門がその対症療法的機能。予防法務的機能・戦略的機能・コンプライアンス促進昨日・教育/啓蒙機能を通して企業の内部統制に関与・貢献することを示しています。
その意味から内部統制についての理解を深めていく必要があるので、会社法での内部統制システムの構築及び金融商品取引法での内部統制報告書について考えてみましょう。
『会社法による内部統制システムの構築』
会社法において、いわゆる内部統制システムの構築について規定しているのは、①348条3項4号、②362条4項6号、③416条1項①号ホ、です。対象となるのは、公開会社(2条5号)であり大会社(2条6号)です。
取締役会設置会社のケースで考えてみましょう。
会社法362条4項6号で「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」を同条5項で「大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第6号に掲げる事項を決定しなければならない。」と定めています。「法務省令で定める体制の整備」については、会社法施行規則100条に規定があります。
『金融商品取引法による内部統制報告書の提出』
会社法とは別に、内部統制に係わる法律「金融商品取引法」が2006年6月7日に成立しました。この中の内部統制に係わる関連規定は次の通りです。
①24条の4の4〔財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制の評価〕
②193条の2〔公認会計士又は監査法人による監査証明〕
ここでは、経営者が内部統制報告書を作成し提出する事、その内部統制報告書は監査証明を受けたものでなければならない事、が規定されていて、2008年4月以降開始する事業年度から適用され始めました。また、金融商品取引法24条の4の2では、有価証券報告書の記載内容が法令に従ったものである事の「確認書」の提出を義務付けています。
金融商品取引法で求められる内部統制報告制度の詳細は、企業会計審議会に委ねられることになりましたが、同審議会は平成19年2月15日に最終的な報告書「財務報告に係わる内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係わる内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」を公表しました