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取引にかかわる一般的条件書

現代の企業取引を特徴づけるものに符号・符従契約という物があります。大量生産とそれによる大量取引の時代には、企業がその相手方に、それが個人であれ企業であれ、すべての取引について個別的に相対で取引条件を設定していくのは非現実的、かつ経済活動に支障をきたすことになるでしょう。そこで、取引の円滑化と効率化のために、発注者は契約に係わる諸条件を設定し、契約の条件を画一的に事前に取り決めます。そのことは勢い、取引にかかわるリスクの最小化に努めることから、どうしても自己に有利に取引条件を設定しようとしてしまいます。
このように用意される条件書は、確かに一方の当事者に有利に設定されると言う否定的な側面はありますが、その一方で条件書が存在することによって、有利・・振りを越えて取引にかかわるリスクの予見性を高め、かつ法的安定性をもたらしていると言う事実を忘れてはなりません。

日本において各企業は、購入者として個別取引にかかわる一般条件を契約書式として用意し、申し込みにあたっては自己の標準契約書を使用するのが一般的です。企業対企業(BtoB)の取引では、通常は債権者側で用意した条件書が用いられます。契約が成立するまでに、条件書に付された一般条件や個別取引に固有の条件をめぐって交渉が行われます。

国内で一般条件書を付して契約が締結される例として、企業対消費者(BtoC)の取引では保険契約や銀行などによる金銭消費賃借契約、家屋などの売買や賃貸借契約が見られます。また、同じ国内契約でも商社メーカー間の物品売買契約にも商社が作成した一般条件書が使用されることが多くなっています。これらはあくまでも個別の取引ごとの契約条件書として契約を構成する文書として用意され使用されています。

一般条件書やこれから説明する取引基本条件書は、全ての企業が用意しているわけではなく、全体的に見れば、大企業が用意している、と言うのが実態でしょう。これは、個別の企業・産業の歴史の中で取引の必要性と汎用性を考えて作成されたからでしょう。また、日本人全体そしてそれにより構成される企業の風土として、契約文書の文言よりも信頼関係が重視されたことから、さほど一般化されなかったのでしょう。
しかし、今後の取引の国内・国外取引の混合化や経済のボーダレス化を考えれば、契約の文書化がより重要になるし、また文書化する事により当事者間での紛争の予防とリスクの予見性が高まり、円滑な取引の保障となるでしょう。

条件書の作成は、企業や産業の歴史の中で生まれ発展してきましたが、比較的新しい産業分野であるソフトウェア開発・作成の分野では、いまだ一般条件の作成や契約モデルが十分に用意されていないのが現状です。ソフトの開発・作成に従事する当事者が多数に上り、また複雑な事から契約に係わるトラブルも多いと言われています。そのような事態に対応するため、かつソフトウェア産業の安定的発展のために、経済産業省は平成19年4月に、情報システムの信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会報告「~情報システム・モデル取引・契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)<第一版>~」を公表して、情報システム取引の可視化、信頼性の向上などを促進しています。
社会法人情報サービス産業協会は、上記の報告書を踏まえて、平成20年5月に「ソフトウェア開発委託基本モデル契約書」を策定し、その解説を加えた「ソフトウェア開発委託基本モデル契約書と解説」と題した平成20年度報告書をまとめ公表しています。

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