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取引基本契約書

(1) 取引基本契約書の意義
一般条件書が個別取引ごとに契約文書の一部として利用される事を前提としているのに対して、日本国内の企業間で反復的かつ継続的に適用されることを前提とし作成され、利用されているのが取引基本契約書です。これは、企業間の取引、特に主として動産の取引について共通の事項を取りまとめて、将来の個別取引に適用される条項を事前に規定したものです。有効期限を1年ごととして、いずれかの当事者が異議を申し立てない限り自動更新とするものと、複数年のものがあります。

このような取引基本契約書を企業間で取り交わすのは、日本的な取引慣行であると理解されています。日本社会は、法・規範が直接的に支配する以上に、さらには契約書などで書かれたこと以上に、相互間の信頼に依拠することが法を含めた伝統的な社会規範になっていると思われます。したがって、企業は新規の取引先よりも長い安定的な取引が継続的に行われる事を選択する傾向があります。そして取引規模の拡大への対応として個別的に契約条件を定めるのではなく、基本的事項を事前に設定してその条件のもとに個別取引を行う方がより適切と判断した結果でしょう。
さらにもう一つの合理性は、継続取引により企業間の情報交換が密接になり、仮に情報の欠如があっても長期の取引の中での情報がその欠如を補完するに有用であるからでしょう。
この取引基本契約のもとで、個別取引契約が締結される事を前提にしており、個別契約において取引基本契約の一部規定の適用排除や変更などの特約が無い限り、画一的にすべての個別契約が適用されることになります。

このように、基本契約方式が多用されるのは、『一般条件書の意義』にみられるように、契約に係わるリスクの予見性、法的安定性や、画一的処理による迅速性・効率性を確保するためです。利便性の高い取引基本契約書ですが、その契約内容に、作成した企業に有利な規定を置くあまり、経済的弱者の保護や公正な競争の確保を目的とする下請法や独禁法への違反が無いカには注意をする必要があります。
尚、流通を対象としている販売店契約やフランチャイズ契約も継続的な取引を対象としています。

(2) 取引基本契約書の対象とする契約類型
取引基本契約書は、標準的な部品の供給の取引である売買契約に適用されたり、請負契約や制作物供給取引に適用されたり、さらには売主への図面や型、治工具を賃与する取引に適用される条項を包含しています。このことから、各種の契約や服後y契約への適用を前提に作成されているのが実態です。

(3) 債権者(買主)が作成する取引基本契約書
現代では契約自由の原則が働いているので、買主でも売主でも自由に取引基本契約を作成できるのは当然です。ただ、日本における企業間での取引の実態からすれば、買主側が要した取引基本契約書が適用される事が多いと判断されます。

(4) 取引基本契約書の種類(名称)
取引基本契約の名称は、当然取引の対象ごとに異なりますが、そのいくつかを例示すると、取引基本契約書、売買基本契約書、部品取引基本契約書、資材取引基本契約書などがあります。

(5) 取引基本契約書の検討
個別注文ごとに個別の契約が締結されるとはいえ、基本契約はその個別契約の基本事項を定めているので、基本契約の締結にあたっては慎重に対応する必要があります。仮に基本契約書の規定を変更出来ない場合には、個別契約での特約事項として、基本契約書の規定を変更することを検討していく途が残されています。

(6) 取引基本契約書の適用上の注意点
・契約の継続性への対応
最近のほとんどの契約例では、契約期間を1年とし、期間満了の約定の数か月前までに当事者のいずれかから申し出が無い限り解約が自動的に延長される、いわゆる自動延長となっています。契約当事者間で問題が発生しなければ、契約規程はおろか契約の存在そのものも忘れ去られがちです。契約の存在とその期間管理が重要となってきます。

・契約当事者間の組織変更への対応
これも契約の継続性に関連しますが、長期の契約期間内に直接の当事者が変更する可能性があります。たとえば、○○工場や××事業部と言った事業谷での契約の場合、その当事者がほかの生産拠点と統合されたり、事業部がほかの事業部門へ吸収されたりすると言った場合です。

・契約の目的物の網羅性への対応
特定の製品が会社の特定の事業部門のみで製造・販売されている場合には問題は発生しないかも入れませんが、時間の経過の中で契約目的物とほぼ同一の製品を他の事業部門が製造販売するような事が出てきます。その意味で目的物の限定を明確にしておく必要があります。

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