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契約相手毎に気を付けるべきポイント

国内契約であれ国際契約であれ、契約の相手方当事者としては、個人・法人・国家とその機関が主要なものであり、その相手方の異同によって契約の実質や形式が異なる事はほとんどありません。しかし、そのような契約の実質と形式を越えて、取引の相手方によってそれぞれ注意を払うべき事項という物があると言う事を頭に入れておきましょう。

以下、3つのケースに分けて説明していきます。

① 資本関係のある、いわゆる親子会社間で契約するケース
② 日本の官公庁と契約するケース
③ 自らが共同企業体の構成員として契約をするケース

『親子会社間での契約』

会社法では子会社について、“子会社とはその総株主の議決権の過半数を有する株式会社(親会社)その他その経営を支配される会社”と定義しています(会社法2条3号)。
子会社は資本のみならず人的にも親会社の支配を受けるので、親子会社間の取引がいわゆる第三者取引基準(at-arms transaction)価格によらないで行われる素地は多分にあります。つまり、子会社を育成するために、物品の取引価格を優遇したり、子会社に対する技術供与のライセンス料をこれまた優遇すると言ったことが起こりえるのです。

このように親子会社間の取引は意図しなくても結果的には公正な取引の規準から外れやすくなっているため、注意する必要があります。
特に海外に製造・販売子会社を有しているときには、その取引を公正にし、いわゆる移転価格による利益圧縮と言う国際租税問題を生じさせないように注意する必要があると言う事を覚えておきましょう。

『官公庁との契約』

(1)入札による契約が基本

2005年、官公庁の発注する鋼鉄製橋梁建設工事にかかわる入札談合事件が新聞を賑わせました。これは、国や旧日本道路公団が発注する鋼鉄製橋梁建設工事をめぐって談合が行われたとして、公正取引委員会が談合組織の幹事会社などを独占禁止法3条(私的独占または不当な取引制限の禁止)違反容疑で検事総長に刑事告発した事件です。この事件については、2006年11月10日に東京高裁で法人の被告23社に合計64億8,000万円の罰金刑を科す判決が言い渡されました。また、防衛相が関係したジェットエンジンなどの防衛装備品の購入など、中央省庁が発注する公共工事事業や装備購入に係わる契約では、談合の温床になりやすいとされる随意契約が発注額の51%を占めているとの衆議院の調査報告も出されています。(日本経済新聞朝刊2008年4月26日)

事由に競争原理を働かせて合理的な価格形成を目指すのが入札制度ですが、入札談合が行われるとその趣旨が妨げられ、結果として公共の利益が損なわれる可能性もあります。日本では、国の締結する契約は一般競争入札を前提としており、例外的に指名競争入札が認められています(会計法29条の3、29条の5)。地方公共団体の発注についても、政令で定める場合に限り指名競争入札、随意契約またはせり売りをする事が出来る、と定めています(地方自治法234条)。
一般に、発注に当たり競争業者を募り(入札案内)、価格・仕様・農委・保証などの条件を文書により提出させ契約締結の意思を表示させるのが入札制度です。応札者の提案した条件のうち、価格条件以外が同一であれば、元も価格の低い業者が落札者となるのが通常です。入札の案内は申込みの誘引に該当し、入札に対する奥羽札は申込みに該当し、落札が承諾、と理解できます。
入札による競争(competitive bidding)によって締結する契約は競争契約であり、契約目的物の技術の高度さ・複雑さによる工事完成リスクを考慮して、発注者が特定のメーカーやエンジニアリング会社などと任意で交渉して契約を締結していく方式を随意契約(negotiated contract)と言います。

(2)競争入札の種類

競争入札には、一般競争入札と指名競争入札があります。
前者は、すべての法人などが入札資格を有し応札できるのに対して、後者は通常は事前資格審査(Pre-Qualification Examination, P.Q.)によって資格を得た法人などが応札するものです。大規模な建築工事やプラント建設工事契約では、実際には入札対象の工事を受注できる企業は限定されており、通常は指名競争入札の形をとる事が多いでしょう。
国際契約ではしばしば、発注者(Owner、Employer)が、応札資格者を限定するために、事前資格審査(P.Q.)を実施します。その方法は、①同種プラントの完工実績、②直近2~3年の財務諸表(バランスシート、損益計算書)、③企業の組織表、などを提出させ、発注者が審査・評価して応札有資格者を決定する事が多くなっています。

(3)入札の必要性

なぜ、入札が必要なのでしょうか。
競争入札は、以下に挙げるような要因から実施されます。
① 競争原理による契約価格の低減を図る発注者のコストの低減
② 競争原理による技術的信頼性のある目的物の引き渡し
③ 競争原理の作用として、応札者(将来の売主、請負人)による最適仕様の提案とそれによる目的物の相対的コストの低減
④ 国や政府機関による発注の場合には、法律による強制への対応
⑤ 企業が発注する場合には、企業活動の透明性確保

(4)応札のためのボンド(保証書)の発行

入札案内は、契約の誘引であり、契約の申し込みには当たりません。応札者が応札すると、その契約が申し込みとなり、通常は一定期間、取り消し不能の申し込み(irrevocable bid)であることが要求されます。この申し込みを担保するために、応札者は現金、国債その他の有価証券、または銀行・保険会社などの第三者の入札保証書(bid bond)を提出します(会計法29条の4、29条の7、29条の9参照)。

このような担保の目的は次の通りです。
① 落札者(successful bidder)となったのに、契約締結を拒絶する事を防止する。
② 撤回不能入札(irrevocable bid)であるにもかかわらず、風戸で入札を撤回してしまう事を防止する。
③ 契約を締結しながら、要求されている契約履行保証金などを差し入れない事を防止する。

万が一、入札保証条件に違反した時には、保証金などが没収されることに合意するので、申し込みの実効性を担保するための保証金・保証と理解できます。

『共同企業体の構成員としての契約』

共同企業体とは、複数の企業が共同で企業体を形成して契約を締結する方式です。共同企業体には、法人型と組合型の二つの形態があり、日本では通常組合型を指して使われています。

組合型の協同企業体は、国際契約でも、主として建設工事や機械プラントの契約に利用されます。この企業体の事をJoint ventureあるいは、コンソーシアム(Consortium)と呼びます。組合型の共同企業体にも、二つの形態があります。
① 複数の企業が資金を拠出し、さらに要因や機材や資材を提供して、合同の計算の上で共同施行する、いわゆる「共同施行方式」をとるケースで、主として土木建築工事関係で利用されます。
② 複数の企業が工事を分割し、その部分についてあたかも単独受封したかのような形で施行するが、資金の拠出は共通経費に限られ、損益の合同計算は行わない、いわゆる「分担施行方式」おとるケースで、主として機械プラントで利用されます。

Joint Ventureの二つの形態

Joint ventureには、法人格を有するものとそうでないものがあります。
法人格を有しないJoint Ventureを英語ではjoint venture with joint and several liabilityと言い、新会社(有限責任の会社)設立方式のものをjoint venture with limited liabilityと呼ぶことがあります。

日本において建築工事関係で共同企業体(joint venture, J/V)を結成して受注し施行する場合、そのほとんどは新会社を設立しません。しかし、機械関係工事で組織されるConsortiumと異なり分担施行方式を採用せず、共同施行方式を採用するのが通例となっています。この、新会社を設立しないJ/Vは法的にはconsortiumと同様に一種の組合契約と言って良いのですが、日本の建設業界では慣例的にこれをJoint Ventureと呼び、機械関係業界では同じ法的性格を持つものをConsortiumと呼びます。

法人格を有しないjoint venture、consortium

J/VやConsortiumは、プロジェクト単位で形成され、法人化しないJ/VやConsortiumは構成員による組合と見なして良いでしょう。これは日本のみならずほぼ全世界で同様な法的性格を持つものと判断されます。
このため、プロジェクトの発注者や第三者に対しては、共同企業体の債務について参加企業構成員が単独かつ連帯的に責任を負う事が求められていることとなるので、joint venture agreement、consortium agreementが締結されます。

国際的な共同企業体を組織した場合、通常構成員は発注者から共同企業体を構成して契約を締結し履行する事を約定する、いわゆる「External Consortium Agreement」を提出する事が要求されます。ここでは、共同企業体として責任を持つことは当然ですが、同時に各構成員が割り当てられた自己の施行する工事部分について分割的に責任を負いつつ、かつ他の構成員の工事部分についても連帯して責任を負っていることを表明し保証します。
そのため、万が一ある構成員が破産その他の事情で債務の履行が出来なくなった場合、他の構成員はその債務不履行部分について履行責任を負うことになる可能性があります。したがって、共同企業体契約の締結に当たっては、そのようなリスクを負っていることを認識しておく必要があります。

共同施行方式におけるメリット・デメリット

共同施行方式のメリットとして、以下の事があげられます。
① リスクを分散できる
② 設計・施工能力を増加し、競争力を強化できる
③ 技術力を相互に補完する
④ 発注者に対する信用力が増大される
⑤ 融資ソースを多角化しうる
⑥ 過当競争を排除しうる(独禁法上の問題が生じる可能性もある)

一方、デメリットとしては次の事が考えられます。
① メンバーごとにContingency(引当金)を取りすぎ、
② 入札価格が上がり、受注できなくなる
③ 内部の意思疎通が不十分となる
④ 意思決定が遅れがちとなる
⑤ 契約の履行家庭でノウハウやデータが共同企業体の構成員である他社に流出する可能性があり、そのための競争力を失う可能性がある

不完全履行・履行遅滞による損害賠償責任の分担

共同企業体では、対外的には「External Consortium Agreement」に基づいて連帯責任を負うことになるのですが、そのような対外契約とは別に、内部の関係を律するための「Internal Consortium Agreement」が締結されます。契約によって異なりますが、分担施工方式では、およそ次のように取り決めています。
① 構成員各自の施工分担部分についてのみ責任を負い、あたかもその部分を単独で受注したようにその範囲で全責任を負う。
② 発注者や第三者に対して損害を与えた場合、その損害を与えた当事者が全責任を持つ。
③ ただし、性能未達成や工期に遅延した時に課せられる予定損害賠償金については、そのような債務を発生させた当事者が一定金額まで(絶対額表示や%表示など)その当事者が責任を負い、それを超える部分については、受注金額比率により共同分担する。

性能未達成や工期遅延によって内部での損害が発生しても、故意や重大な過失がない限り、内部求償はしないのが一般的です。

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