「契約の解除と解約って何が違うの?」
「解約合意書と解除通知書はどうやって使い分けるの?」
「契約をやめたいんだけど、解除ってどうしたらいいの?」
「解除したらお金はどうなるの?」
「手付金を払っているんだけど、解除したらどうなるの?」
契約を解除するには、何をすべきでしょうか?
結論から言うと、
・契約解除通知または解約合意書を作成する
・解除の法的根拠を検討する
・解除の副作用をよく検討する
ことが必要となります。
あなたが解除の効果や副作用を知らずに、ウェブでみつけた解除通知書を安易に使うと、
・解除できません、と反論されてしまった
・代金全額の支払いを請求されてしまった
・相手から損害賠償を請求されてしまった
・こちらが提案したアイデアを特許出願されてしまった
・解除後しばらくして相手方が競業行為をはじめた
・相手から商品・サービスの販売差し止めを請求されてしまった
といった問題が生じることがあります。
このページでは、法務部と知財部を経験した弁護士が、弁護士実務の観点から次の5点を解説します。
すべて読めば、あなたの抱える問題がどういう種類の問題なのか、またどの専門家に相談するのが適切なのかを知ることができます。
1.解除とは何か?
契約の解除とは、契約の効力を消滅させること、です。
1.1.「解約」は「解除」の違いは?
「解除」と似た言葉として「解約」がありますが、解除とほとんど同じ意味、と考えて問題ありません。
ウェブで検索をすると、「解除」と「解約」の違いを説明しているサイトもありますが、
正直なところ、弁護士の私が読んでも何が言いたいのかよくわかりません。
将来に向かって効力が生じるのが「解約」です、などと説明していますが、
解除も将来に向かって効力が生じるものがあります。
文脈によって意味が変わる点で、定義に失敗した言葉の典型例です。
したがって、解除と解約はだいたい同じ、と考えてまったく問題ありません。
このページでは「解除」という用語で統一します。
1.2.解除するとどうなるか?
契約を解除すると、契約の効力がなくなります。
したがって、解除した後、あなたは契約を遵守する義務がなくなります。
2.どんな場合に、契約を解除する必要があるか?
契約を解除する必要があるのは、あなたが義務を免れたい場合、です。
2.1.契約解除が必要な例
契約解除が必要な例として、次のような場合があります。
・リースをやめたい → リース契約の解除
・雇い入れた従業員をやめさせたい → 解雇
・オフィスビルを移転したい → 賃貸借契約の解除
・システムが期待通りでない → システム開発契約の解除
・取引先の支払いが遅れがちなので取引をやめたい → 取引基本契約および個別契約の解除
・代理店が思ったように動いてくれないので別の代理店を立てたい → 代理店契約の解除
2.2.解除の副作用に注意
契約を解除すると、契約による義務を免れますが、同時に権利も失います。
また、原状回復義務が発生することもあります。
ペナルティの発生、秘密の保護については注意が必要となります。
したがって、契約を解除する際にはその副作用に注意が必要です。
契約を解除した場合、どのような副作用があるのか、
弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士の選び方については、こちらのページをご覧ください。
3.どうやったら契約を解除できるのか?
契約を解除するには、解除通知書を送る方法、解約合意書※を締結する必要があります。
※さきほど「解約」という言葉を使わないと明言しましたが、ここでは「解約」合意書といいます。
解除合意書という名称はあまり一般的ではありません。
解「約」という言葉が約束を連想するので、後ろに続く「合意」となじみやすいのが理由です。
具体的な書式のリンクを貼っておきますので、修正してお使いください。
3.1.解除通知書
解除通知書は、あなたに解除権がある場合に使う書面です。
スタンダードな解除通知書です。
個別契約のみを解除する通知書です。
第三者から地位承継した契約を解除する通知書面です。
3.2.解約合意書(契約解除の覚書)
契約の相手方との間で、契約終了について合意できる場合に使う書面です。
スタンダードな解約合意書です。
一部の債権債務関係が残る場合の解約合意書です。
複数の契約を、最初から無かったことにする覚書です。
4.上手に契約を解除するにはどうしたらよいか?
実際に解除する場面では、上記の解除通知書や解約合意書を適切な文面に修正して使うことが必要です。
しかし、実際に問題となるのは、
・解除権があるのかどうか
・解除した場合の副作用
・既存の取引や法律関係に与える影響
などの法的な検討です。
解除通知書や解約合意書の作成は、これらの検討が終わった後の最後の工程となります。
この検討が終わっていれば、書面作成自体は、実はそれほど難しいことではありません。
もし、あなたが契約解除について何かお悩みのことがあるのであれば、
契約に強い弁護士に相談することをおすすめします。
4.1.契約締結の時点で勝敗は決まっていること
残念ながら、契約締結時点で、うまく解除できるかどうかの80%は決まってしまいます。
適切な契約解除条項が入っていれば、契約はすんなり解除できますし、
債権保全などの条項があれば、解除しても困ることはありません。
しかし、適切な契約解除がなければ、契約解除のハードルは非常に高くなりますし、
副作用が大きすぎて解除できない、という状況になります。
きちんとした契約を結ばなかったことを悔やんでも仕方がありません。
今後、同じようなトラブルに巻き込まれないようにすることが大切です。
契約を締結する際には、弁護士のアドバイスをもらっておくことが、
長期的にみて、あなたやあなたの会社の利益になります。
5.最後に
契約解除について、それぞれ説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?
比較的単純なケースでしたら、本ページで紹介した書式を使って、ご自身でやってみるのがよいと思います。
ただし、契約解除はあなた自身が気づかない想定外のトラブルを招く可能性があります。
一旦解除をしてしまうと巻き戻しができません。
そうなる前に、契約に強い弁護士に相談してください。
あなたの契約トラブルが速やかに解消できることを願っております。