【 契約責任 ~クレームとその対応・2 】
■契約目的物から見たクレーム対応(2)
『クレームの個別発生事由』
クレームの発生事由は、契約の内容により異なりますが、ここではプラント契約でのクレームの発生事由を考えてみましょう。個別事由としては次のものが一般的に考えられます。
- 不良品の供給(defective products)
設計・材料・制作で欠陥のある製品の供給をした場合
- 数量不足(short shipment)
本来の供給数量が不足している場合
- 追加加工または追加工事(additional work)
制作供給品が不完全なために、現地にて追加加工や工事をする場合
- 補修工事(remedial work)
輸送途上で一部損傷を受けた製品などを手直しする場合
- 情報の不足・欠如(lack of information、deficient information)
制作納入した機器を発注者側が自らまたは第三者に据付をさせることを前提としています。主として、現地での組立、据付工事に関連して不適切な情報または情報の不足により見積もりの基礎データが不足し、そのために発生するコスト増加分の補てんを求めるクレームです。
これら5つのうち、⑤は具体的には工事現場での組立、据付工事の図面やマニュアルの記述が不正確・不十分であるために追加コストが発生したと言うクレームです。請求根拠が“情報”にかかわるため定量化できないこと、またそのような情報は正確性・十分性・完全性についての基準が無いため、発注者としては最もクレームしやすく、一方、請負者側からは防御しがたいところです。したがって、請負者としては最も注意すべき事項になります。
『不完全履行にかかわるクレームについての契約規定』
債務不履行のうち、履行遅滞及び性能未達成によるクレームは、契約上予定損害賠償額を支払う規定を設けており、その支払いによって解決される事が多いと思われるので、予定損害賠償額の支払いの対象外である不完全履行によるクレームのみを取り上げ、それにかかわる契約規定を検討します。
契約履行における原則は、債務の本旨に従った製品の納入・役務の提供を行うことにありますが、自裁には意図せざる様々な事由から、結果として瑕疵がある製品・役務を提供する事があります。民法634条は、そのような不完全な履行に関して、請負人の担保責任として次の旨の規定を置いています。
- 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
- 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその補修とともに、損害賠償の請求をする事が出来る。この場合においては、民法533条の規定を準用する。
上記の規定にもみられるように、本来は完全な履行をするのが本筋であるが、国際取引での特注品の契約では、不完全履行については、第一に追完請求をなし、それに債務者が応じなかったときには、債権者において選択的に発注者自身または第三者に代替履行させ、そのコストを請求すると言うことが行われ得ます。この代替履行にかかわるコストがクレームとして請求され、またそのような規定が置かれる事が多くなっています。