【 契約責任 ~クレームとその対応・6 】
■訴訟対応の視点からの文書管理(1)
クレームは、交渉によって解決悦する場合もありますが、訴訟に持ち込まれる可能性も否定できません。あた、交渉なしにいきなり提訴される可能性もあります。
そこで、米国における訴訟への対応と言う視点から、文書管理について検討してみましょう。
『文書の保存・廃棄規準』
会社では業務上様々な文書が作成されます。会社の経営、営業、経理、財務、製造などの各分野が、社内向け・社外向けに書類を作り出していきます。また自ら作り出すだけではなく、社外からも注文書、請求書等、様々な文書を受領します。
経営管理上また税務監査への対応などから、これらのうち重要な書類については各部門の自主的な判断に任せず、会社として文書保存・廃棄規準を定め管理します。加えて、紛争が発生すると、文書保存・廃棄規準の対象とならないような出張報告書、社内外での打ち合わせ議事録、果てはメモの類いの文書の必要性・重要性が高まったり、また訴訟において提出を求められる可能性があります。また、後述のように、米国に限らず日本の訴訟においても文書の提出が要求される可能性があるので、文書の管理は単なる整理の問題ではなく、訴訟面からも証拠書類としての重要内意義がある事を理解しておきましょう。
『米国の民事訴訟手続きの流れと証拠開示制度』
紛争解決手段としての訴訟は、相手方の了解を取る必要もなくいつでも自由に提起できます。米国では訴訟は紛争解決を有利に導くための一つの手段として用いられることがあるので、いきなり提訴されると言うケースは現実に発生します。
訴訟が紛争解決の最終手段ではなく交渉を有利に運ぶための手段として機能する要因の一つに、開示手続き制度があります。開示手続きは裁判の比較的早期の段階で行われるため、その対応に必要となる時間と労力、またコストが想定の負担となります。したがって経済的負担の少ないうちに妥協しようとする傾向があるのです。この証拠開示制度はしばしば批判の対象となっていますが、米国の民事訴訟手続きの流れの中証拠開示制度を知り、分ショッ管理との関連から検討していきましょう。尚、きわめて実際的な事ですが、米国からの訴訟送達は、いわゆる送達条約に従わず、直接日本企業に郵送されてくることが多くなっています。郵送されてきた訴状が的確かつ迅速に社内で担当部署に配達されるようにしておきましょう。