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契約責任 ~クレームとその対応・6-(2)

【 契約責任 ~クレームとその対応・6 】

 

■訴訟対応の視点からの文書管理(2)

 

『開示手続』

 

米国の開示手続(discovery)は、物的・人的両面での証拠と正確な事実関係に基づく公平かつ迅速な審理を行うために設けられたものです。心理の開始前に訴訟の当事者はそれぞれ相手方からの証拠の提出と事実関係の確認を求められます。開示された証拠と事実関係に基づき、当事者間での争点の絞り込みと彼我の強弱を客観化していくことが出来ます。このために、しばしば証拠開示の終了後にもたれる心理前の協議の時点で和解への道が探られる事が多い、と言われています。

 

開示制度の主要なものは次の通りです。

  • 証言録取(deposition)
  • 質問書(interrogatories)
  • 証拠書類・物品の提出請求(request for production of documents and things)
  • 事実確認の請求(request for admission)

 

この開示請求は、通常は、弁護士が全体の訴訟戦略の中で、いつの時点でどの順序で行うかのスキームを決めることになります。もちろん、このなかの証拠書類・物品の提出請求は、非常に広範囲にわたるため、一つの“法的嫌がらせ(legal harassment)”とさえいわれ、否定的な側面がある事は事実です。しかし、証拠の随時提出による「よきせざる事態」への対応のための法低心理の長期化を防止していると言う世局的な側面も評価しなくてはならないでしょう。

 

『証拠書類・物品の提出請求』

 

米国の法律事務所Paul, Hastings, Janofsky & Walkerは、その「米国における民事・商事訴訟ガイド」において、閲覧請求について次のように説明しています。

「閲覧請求により、他の当事者が所持するまたはその管理下にあるものを、公判前に調査する機会を得ることができる。この方法により、当事者は相手方当事者の書類、所有物と財産等を調べることができ、また妥当な場合には、これらをコピーしたり、撮影・見本採取・検査したりすることが出来ます。当事者が所持したり管理したりしている指定された書類については、メモ書きや余白部分の書き込みも含めて、すべてコピーを作成して提供しなければならない。これらの手書きのコメントは往々にして当事者の意思を表すものであるから、重大な意味合いを持つことがある。」

 

この閲覧請求は、非常に広範囲に行われ、かつ被請求人側からの、当該事件とは無関係との主張で開示の拒否や制限を求める事は、非常に困難です。したがって、特に米国で訴訟が提起される可能性のある取引については、常にすべての文書などが閲覧請求の対象になる事を前提にする必要があります。尚、閲覧請求は、日本の会社が米国の電力会社に発電設備を納入し、その発電会社と需要家との間で訴訟が起こり、その裁判に関連してその日本の会社が閲覧請求などの開示請求を受ける場合です。

 

 

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