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弁護士をなぜ志すのか

弁護士は儲かる、多くの人はこのように考えているでしょう。だからこそ、弁護士を目指す人も多く、それにより弁護士が増えてあぶれる弁護士が出てくる、というような話題が注目を浴びるのでしょう。
たしかに、弁護士業には参入障壁が極めて高く、国選事件の制度もあったので、自分から依頼者を探してこなくても国選事件を受けるだけで1件7~8万円の報酬を得ることができます。それを効率よくこなすだけでも、生計を立てることは可能でしょう。そういう意味では食いっぱぐれしない職業だったかもしれません。しかし、「儲かる仕事」といえるかどうかは疑問の余地があります。

司法試験を受験して法律事務所に就職活動を行うと、まず「初任給の高さ」が一つの基準となります。しかし、弁護士の世界では、伝統的に「イソ弁」最近では「アソシエイト弁護士」と呼ばれる身分の初任給は、それほどあてにはなりません。
企業にサラリーマンとして就職するのであれば、初任給は重要でしょう。「給料」が唯一の収入源となります。そして労働法により解雇の制限もあり、めったなことでは賃金の引き下げも行われません。しかし、法律事務所の「イソ弁」、「アソシエイト弁護士」は、労働法の保護を受けているわけではありません。初任給の保障どころか、いつまでその地位についていられるのかも保証されていないのです。

しかし、NYなどでは有名ロー・ファームの初任給はホームページに一覧表になって公開されています。弁護士だって初任給が重視されている、という声もあるでしょう。確かに給与水準が高ければ次はより高く、という期待を持つことができるでしょう。
しかし、弁護士の転職市場は正常に機能しているとは言いがたいのです。中途採用の際に「前職の給与」を参考にするのは一般的ですが、弁護士の転職市場において、すべての法律事務所や企業に通用する「市場価値」は存在しません。ある法律事務所では年収2,000万円であったとしても、他の事務所に行けば1,000万円にも満たない、ということも珍しくないのです。これは、弁護士の仕事が単独で価値を生み出せる仕事ではなく、「弁護士報酬を支払ってくれる依頼者」とめぐり会うことによってはじめて価値のある仕事をすることができるからであり、日本ではまだそのマッチングの仕組みとしての法律事務所の機能が万全ではないから、といえるでしょう。

そうはいっても、初任給が安いよりは高いに越したことはありません。人材市場が完全ではないからといって、転職に際して前職の給与を参考にしないといわけではありません。
しかし、「給与の定期昇給のレベルを超えて、億単位の年収を稼ぎだすことができるか?」というのはまったく別の次元の問題でしょう。

企業法務の弁護士は稼いでいるように思うでしょう。弁護士報酬が高すぎることでそのように見えるのかと思います。新人弁護士でもタイムチャージで1時間に3万円近い金額が請求されます。パートナークラスでは、1時間当たり5万円以上で設定される事も珍しくありません。ですが、それでぼろ儲けできるかといえばそうとも言えません。弁護士という仕事は結局のところ自分の時間を売っているのですから、限界があります。
たとえば、弁護士の作業によって依頼人に何十億という利益が上がったとしましょう。それでもタイムチャージベースで言えば、その弁護士は自分の稼働時間に応じた数万~数十万円しか手にすることはできないのです。

タイムチャージでの弁護士の仕事は「作業に多大な時間をかける」ことでしか、売上げを伸ばすことはできません。そこで自分の1日24時間という時間の制約を超えて儲けるためには、他の弁護士が稼働した分による報酬の分け前しか方法はありません。だからたくさんのアソシエイト弁護士を大量に動員し、会社の資料をすみずみまで精査する、というM&Aにおけるデューデリジェンスの業務が、法律事務所にとってもパートナー弁護士にとっても、太い収入源となるのです。
こうして弁護士として稼ぐための手法の1つとして「大きな法律事務所のパートナーになって、タイムチャージでたくさんのアソシエイト弁護士を長時間働かせて上前をはねる、というビジネスモデルが生まれます。

稼ぐためのもう1つの方法は、成功報酬をとることでしょう。伝統的には、日本の弁護士報酬は「問題となっている権利の経済的価値に何%かの係数をかけて算定する」というものです。大きな金額の請求になりそうな訴訟を抱えている原告から事件を受任し、成功した場合の分け前を期待します。これは「事件に勝って相手方から金銭を回収する」という力が求められます。それがなければ、最終的には成功報酬を入手できません。
ただ、それ以前の問題として「金になりそうな争いを抱えている人を見つけ出す」「原告候補者から信頼され委任状をもらう」というような営業的センスが必要になります。

最近ではインハウスロイヤーの緩やかな拡大もあり、「サラリーマンが億万長者になった」という例を踏襲したいと願う弁護士も見受けられるようになりました。ですが、このような野望を抱く弁護士も、いざどこの企業を考えているのかと聞くと、すでに大幅なアップサイドが実現した企業ばかりであって、今後アップサイドを期待できる企業に対しての研究などは行っていないのです。

司法試験の受験勉強の範囲外なのか、それとも業務の性質上か、弁護士には過去を振り返る力は優れていても未来を創造する力に欠ける人が多いようです。ハイリターンを期待するくせにリスクを負うのをいやがるところも、リスクの分析には長けていてもリスクを取る判断をしないという弁護士の性質上でしょう。

弁護士として大きく儲けてお金持ちになりたい、そう思うのは悪いことではありません。ただし、リターンにはリスクもつきものです。小さなリスクに目を奪われて決断できないのではいけませんし、大きなリターンに目がくらみ、致命的なリスクを受けてしまうのも考え物でしょう。

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