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株主代表訴訟とリーガルリスク

「株主代表訴訟」は、個々の株主が会社に代わって全株主を代表して、取締役などの会社に対する責任を追及する制度です。(商法267条、280条)
株主代表訴訟制度は、取締役のほかに発起人・監査役・清算人・不公正価格による新株引受人や、利益供与の禁止などの責任追及の場合にも準用されます。

『株主代表訴訟の法規制の変還』

昭和25年の商法改正によって、株式会社はドイツ型の株主総会中心主義からアメリカ型の取締役会中心主義に大きく転換され、株主総会の権限は縮小されました。そして、取締役の権限が拡大・強化されたことに対応し、アメリカ法にならって株主の地位の強化を図る一環として代表訴訟提起権と違法行為差止兼のほかに、帳簿割卵兼など株主の監督是正権が導入されました。

平成5年の商法改正によって、提起手数料を一律8,200円としたことが契機となり、最近株主代表訴訟が急増しています。

『株主代表訴訟の対象と責任と範囲』

(1)株主代表訴訟で訴えられる者

株主代表訴訟における株主の追求は、取締役などの会社に対する責任で、次の場合に発生します。
・在任中に責任が発生した場合
・在任中に責任発生原因が存在する場合
・退任しても責任は免れない
・死亡しても、相続人はその責任は免れない

(2)責任の範囲

取締役としいぇの地位に基づき負担する損害賠償責任、資本充実の責任のほかに、取締役が第三者の立場で負担する一般取引上の債務または不法行為の責任にも及ぶと解する見解が通説です。

『株主代表訴訟で訴えられないための三原則』

(1)代表訴訟回避三原則
取締役や監査役などの「会社役員」が株主から代表訴訟で訴えられないためには、つぎの三原則に留意すべきです。

・基本理念を確立する
そのために、会社はだれのものかと言う基本理念と取締役などの基本的義務を認識すべきです。
・経営と法律の一体化を確立する
法律による経営の確立、適正な経営判断、「ノー」と言える取締役会の確立、内部告発の阻止、や悪因賠償責任保険の加入などに留意すべきでしょう。
・会社法規部署の強化
リーガルリスク・マネジメントの確立、法規部署強化の必要性を認識することに留意しましょう。

(2)適正な経営判断

①政策決定と経営判断の原則
取締役が企業経営上の適正な経営判断を行っていたならば、たとえ株主から代表訴訟を提起されても責任は免れるでしょう。「経営判断の原則」とは、取締役の政策決定について適正に判断して業務を執行した場合に、結果的に会社に損害を与えたとしても取締役は責任を負わないと言うものです。これはアメリカで判例上形成され発展してきました。

②経営判断の原則の適用要件
経営判断の原則が適用されるのは、次の要件に合致した場合です。

・忠実義務に違反しない判断をした場合。
・合理的な判断をした場合。
・会社の最大の利益となると判断した場合。

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