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法務組織の構築

国内・国際と言う区分ではなく“機能”と言うことに着目した場合、どのような法務機能があるのかと言う事は企業の業態によっても異なるでしょう。企業の業種だけではなく、事業の国際化の進捗度にも左右されます。
昨今の環境問題への関心の高まり、不祥事が続発する事態に対応する企業倫理問題、その一環としてのコンプライアンス業務の必要性などは無視できない要素でしょう。理想的に言えば、これらの機能ごとに法務組織が構成される事が望ましいのですが、人材の点からもコストの面から判断しても現実的にはかなり難しいでしょう。

また、法務部門の組織について議論する場合、忘れてはならない事は株式事項(株主総会を含め)、文書管理などの内部統制機能の取り扱いでしょう。日本の企業の法務機能は多くの場合、総務部門から分離発展してきました。そのため、上記の内部統制機能は、従来の法務部門ではコアの法務機能であったと言えます。
したがって、法務部門の組織全般を議論する場合には、これらの機能も当然含まれています。さらに、輸出志向の企業を中心に進められてきた企業の国際化は、メインとなる法務機能がこれら内部統制機能とともに企業の事業活動と言う視点から重要な法務機能になっていると言う事を示唆するものでしょう。
今後の法務組織のポイントを以下にまとめてみます。

(1)より柔軟な法務組織への転換
企業の業種業態、企業規模の違いまたはその国際化の度合いの差によって、各企業が持つ法務部門の組織内容・構成に際が生じるのは当然でしょう。また、アンチ・ダンピング調査に巻き込まれた企業にとって、通商を担当する法務部門は必要不可欠な組織となります。
しかし、変化の激しい現代の企業組織に固定化できるほどの“理想的な法務組織”を作る事は相当に困難を要します。
法務部門に今望まれる事は、「いかに柔軟な法務組織を構成するか」と言う事です。柔軟な組織とは、企業活動の変化に呼応し、人材を有効かつ機敏に動員できる体制づくりと言えます。

(2)グルーピング化による法務機能の組織化
種々の法務知識やスキルを持つ法務要員を確保することが理想となりますが、現実は難しいでしょう。複雑になる一方のビジネス取引、知的財産、税務問題、保険やファイナンス知識など、いわゆる法務の周辺分野への知識が要求される状況が出現し、しかもスピード解決が要求されている企業経営の現状を考えれば、すべての法務機能を有する“Multi-Talented”の法務要員の確保は極めて難しいでしょう。
現実的な解決策は、適切な(実践的な)教育とローテーション(要因の定期異動)を積極的に取り入れていくしか方法はありません。
また、各機能に応じて法務の組織化を進めることが理想的ですが、これもまた現実的ではありません。そこで考えられるのは、より密接に関連する機能をグルーピング化することによって組織化を図る事です。たとえば、輸出取引に関連する法務事項、特許侵害対応、ライセンス時効、事業戦略、社内統制機能などによる組織の分化です。ただし、この組織のグルーピングについては次の2点を考慮する必要があるでしょう。

・企業の特色によって、強化すべき分野は個別の組織として構築する。
例えば、大量の消費財を輸出する企業は、通商問題にさらされる可能性があり、その意味で通商問題を個別の組織として鬢に対応できる体制を構築しておくことです。
・一つの企業が“性質の異なる”製品を取り扱っている場合、各製品分野別の対応が必要となってくる。
この意味では、法務機能と製品分野機能別の対応について慎重な配慮が必要となります。

(3)外部ネットワークの活用

企業を取り巻く状況の複雑さと緊迫感の中で、外部の法務ネットワークの利用を積極的に考慮すべきでしょう。何度も説明したように、限られた法務要員の中で、すべての機能を抱える法務部門を構築することは難しいでしょう。とくに、企業法務は取引相手又は問題が生じる国の法制の知識を駆使する必要があります。そうなれば、いかに効果的に有能な外部の弁護士を起用し活用するかと言う事になります。
外部弁護士の起用・活用は、法務要員にとってかなりの能力を要する業務です。外部弁護士起用のポイントを以下にまとめましょう。

・弁護士の起用にあたっては、所属する法律事務所が大規模であるかどうかではなく、事案を担当する弁護士個人に注目する必要がある。
・起用した弁護士に事案を任せたら、弁護士を信頼してすべて委ねると言う姿勢は、結果として効果的な弁護士起用にならない可能性がある。
自社の対応が後回しにならないように、絶えずコンタクトを取り、弁護士の手綱は社内でにぎり、しっかりとコントロールできる状況を作りましょう。
・起用弁護士側から求められる回答(決断)はタイムリーに答えるように努める。
そのために、法務部門に対応するチームを作り、社会の意思決定がスムーズになるような仕組みの構築が必要です。事案を弁護士に依頼する事は、決定まで任せることではありません。起用弁護士は決断に対しての責任を持つ立場に無いことを理解しましょう。

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