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法務部の役割

法務部の役割はなんでしょうか。法務経験が長い人でも考え込んでしまう難しい問題です。

・法令違反がないようにする

・とにかく契約審査をこなすこと

・事業部の求めに応じて柔軟に対応する

 

金融業では法令遵守を一番に求めるところが多いようです。金融業の営業許可は事業継続の大前提であり、その取り消しがあってはひとたまりもありません。

サービス業の場合、この場合は広告業やIT業界などを念頭においていますが、営業がとってきた仕事を前に進めるために契約審査を大量に迅速にこなす必要があります。モノの売り買いと異なり、サービス業は取引条件のカスタマイズの要求が多いように思われます。この理由の一つとして、資材調達の場合は購入約款を用意している会社は多いのですが、サービスを受ける立場の雛形を用意している会社はほとんどないことが挙げられます。そうすると、サービスプロバイダーの約款をまずは見せてください、という話から始まり、顧客側の法務が修正案を作成し、サービスプロバイダー側の法務にその修正案の審査依頼が来る、という流れが多いように思われます。

メーカーの場合、特に部品サプライヤーの場合は、取引基本契約書とNDAの契約審査が業務の大半となります。お客さんからの要求に応じて日々開発業務が発生しており、そのためのNDA締結依頼が非常に多い、という印象です。

商社の場合は、リスクマネジメント業務の一翼を担うのが法務部であり、主に契約というツールでリスクコントロールをします。商社の最大のリスクは売掛金の焦げ付きリスクですので、債権保全手段を講じます。リスクマネジメントを直接担っているのは審査部であり、そこでの与信判断を前提に、法務部が債権保全手段を書面なり法的権利なりに具体的に落とし込みます。

 

しかしながら、上記の業務は一般論であって、仕事のスタイルはそれぞれです。法務の担当役員や部長といった方々の方針によって組織の毛色はまったく違ったものになります。その人の育ちに注目すると少しその組織が見えてきます。営業経験者の場合は、まずはビジネスがどうなっているのかを重視する傾向にあり、ともすれば書面はどうでもいいや、という傾向があると同時に、事業部門の方針に真っ向から反対して喧嘩してしまうということもよくあります。経理経験者の場合は、税務リスクや財務インパクトを重視し、お金の観点からリスクを捉える傾向にあるため、事業部からの受けは結構いいようです。法務部だけで育った人は、社内規則などに精通しており、社内事情に詳しい人が多い、という印象ですが、最後の判断は弁護士に、という人が多いのも実際です。

 

こうして振り返って見れば、法務部というのは育成環境としてはよろしくない、という印象があります。これは顧問弁護士に判断を投げて逃げるという選択が用意されているからだと推測します。他の部門で育った人は、特に営業経験者は、自分はこう考えるのだがどうなんでしょう、と弁護士に迫っていく人が多いように思われます。これに対して法務部育ちの人は、弁護士判断の言い回しのところで注文をつけたりする限度で、自分なりの意見というものを言えない人が非常に多いです。

 

法務部は、いろいろなバックボーンを背負った人たちがそれぞれの特徴を活かして活躍することのできる職場です。いわば少し前の総合格闘技のようなもので、柔道出身者、キックボクシング出身者、相撲出身者、レスリング出身者、空手出身者など、それぞれが特徴を活かしながらも同じリングで戦っているようなものです。ただ、そう考えると、近年では、総合格闘技出身者が活躍する時代ですので、新しい法務部では、純粋に法務部で育った人が活躍する時代も来るかもしれません。例えば企業内弁護士やロースクール出身者など、専門性の高い人たちが10年、20年と法務経験を積んだ場合、新時代が開けてくるかもしれません。

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