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独立取締役選任の義務化

コーポレート・ガバナンス強化の際に検討される施策のうち、是非の意見が別れてしまっているのが、上場会社等における独立取締役の選任義務化です。

まず、独立取締役に関して説明します。現在の「社外」取締役のように対象企業やその子会社の役員・従業員であったことがあるか、
という社外性の観点だけでなく、対象企業の親会社や大口取引先に所属しているか否かや取締役の親族であるか等も総合的に考慮して
「独立性があるとされた者のみを指す」とされています。

米国では、NYSEやナスダックなどの証券取引所における規則の中で、取締役会の構成メンバーの過半数は独立取締役である必要があるとされています。
日本でも、法律または証券取引所の規則においては、上場会社等においては取締役会メンバーのうち最低一名以上を独立取締役としなければならないとされています。

この独立取締役専任に関しては、いくつか頭に入れて置かなければならないポイントがあります。

一つ目のポイントは、上場会社等に独立取締役の選任を義務化することの「目的を明確化する必要がある」ということである。委員会設置会社においては、モニタリングの実効化のために社外取締役に代えて独立取締役の選任を義務付けることの意味は明確です。理由としては、委員会設置会社は、コーポレートーガバナンスの仕組みとして、経営の意思決定を行い、それを執行する経営陣と、経営陣を監督する監督機関とを設ける「モニタリングモデル」を前提としている為です。
しかし、現行の監査役会設置会社にあっては、社外ないし独立監査役にてモニタリングをしていることに加えて独立取締役の選任を義務付けるということの位置づけに関して曖昧な点があります。それは、現行の監査役会設置会社のように経営上の重要な意思決定に取締役会の決議を要求する際に、取締役会を構成する独立取締役は自らも参画した意思決定についてモニタリングを行うという矛盾が生じます。つまり、独立取締役が取締役として決議に参加し、意思決定を何らかしたにも関わらず、その意思決定をモニタリングするということになります。こういった論点から独立取締役の機能・役割は曖昧と言われている部分があります。

これに対して、監査・監督委員会設置会社は、監査・監督委員となる取締役が代表取締役の選解任や取締役個々人の報酬の決定等に関する投票権を背景にモニタリングを行うというもので、理論的には「モニタリングモデル」の一種であると説明できます。独立性が担保されており、矛盾を生じずにモニタリングが出来る仕組みになっています。

特に監査役会設置会社について独立取締役の選任義務化を行うのであれば、独立取締役が「何のために」必要であるかについて、掘り下げた検討が必要だと考えられます。
検討の大前提となる考え方としては、代表取締役と独立取締役とが主観的な感情によって結びつくことがないようにする必要があります。取締役会の中に、「外部の眼」を代表する独立取締役が入り、代表取締役の選解任等に関する投票権を持ち、代表取締役社長の独善的な意思決定や暴走を抑止する機能を果たすことは、コーポレートーガバナンスの透明性の強化に役立ちますが、感情的な思い入れがあるとモニタリング機能が発揮されなくなります。

韓国では、証券取引法のより、総資産額二兆ウォン以上の一定規模の上場会社には、独立取締役の選任には、独立取締役候補者推薦委員会からの推薦を条件とする、というような制度があります。独立取締役候補者推薦委員会は、独立取締役がメンバーの二分の一以上を占めることが必要です。日本においても立法で同様の仕組みを導入することや、会社が定款等で任意にこのような制度を導入することも検討されてもいいではないでしょうか。オリンパスの不祥事の事例では、社外取締役が三人いましたが、社外取締役が経営陣との密接な人的関係性を持っていた為に選任されており、十分な監視機能を果たすことができませんでした。

2つ目のポイントは、仮に監査役会設置会社を含めて全ての上場会社に独立取締役の選任を義務付けるものとした場合には、その人数が問題となります。かつて民主党内では取締役会のうち三分の一程度または五名以上とすべきとの声もあったところもあり、自民党の企業・資本市場法制PTでは、最低二人の独立取締役の選任を義務付けるべきという意見があります。現在、東京証券取引所に上場する企業の51%は社外取締役の数が0です。仮に独立取締役一名の選任が義務付けられた際には、経済界においては有能な独立取締役の争奪戦が始まることが予想されます。独立取締役の義務化を進めるのであれば、5年から7年程の猶予期間が合ったほうが混乱を避けられると考えられます。

独立取締役を必要としている企業としては、内部統制システムがそれなりに整備されている東証一部上場企業のような大手企業ではなく、規模の小さい企業にあるのではないでしょうか。ベンチャーや新興企業は、内部統制システムの整備が遅れがちです。更に、創業者の意見が通りやすい風土があり、経営への影響力が強い企業にこそ、、独立取締役による経営モニタリングが求められています。また、上場子会社のように、支配的な株主がいる会社では、少数株主の利害を踏まえて意見が述べられる、独立した取締役の必要性は高いと思われます。場合によっては、東証マザーズやジャスダックなど新興市場の上場企業や支配株主が存する上場企業を優先的に独立取締役の選任を義務付けることに意義がありそうです。

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