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租税条約と課税原則

日本での所得の対象が全世界なのに対し、米国で日本企業が所得を得た場合、その所得に対して米国の税務当局は課税をする事が出来ます。
このように課税権が競合する場合に、各国間の課税権を調整する国際的メカニズムとして機能しているのが、「二重課税防止のための租税条約」になります。

『租税条約の意義』

企業の経済活動が国内に限られていた時代では、国際課税の問題はとても限定的なものでした。しかし、現代のように企業の国際取引が経常的な時代では、課税が一国内にとどまらず多国間にまたがるケースも多くなっています。
各国は、その国に何らかの帰属がある限り、課税主権の原則に基づき、自国の法令に従い自由に課税をします。各国の主権のもとに課税される結果、国際間で課税の競合や抵触が起こり、企業活動が阻害され、国際経済の発展を妨げることにもなりかねません。
そこで、そのような障害を取り除き、国際経済活動の発展に寄与するようOECD(経済開発協力機構)や国連が国際租税のルールを定め、モデル条約を作成しました。
各国はそのモデル条約に基づき租税条約を締結しているのが現状です。実務上の問題は残るにしても、制度的には国際課税の予見性が高まり、税務リスクが管理しやすくなっているので、その存在意義は大きなものとなります。

日本でも、主にOECDのモデル条約をベースにしながら「所得に対する租税に関する二重課税の防止のための日本国と○○国との間の条約」と言う、いわゆる租税条約を40以上の国と締結しており、それらの国との間で納税者としての居住者(内国法人に該当)・非居住者、恒久的施設(PE)や課税所得の種類とその範囲、源泉税率の競合、外国税額控除制度、特殊関連企業間の取引についての課税標準などによって、二重課税の排除、過大な課税の排除、脱税の防止を企図しています。
日本の国内法である法人税法や所得税法と租税条約との間に相違があれば、租税条約が優先的に適用されます。

例えば、日本のライセンシーが特許や商標などの知的財産権の使用料(ロイヤルティ)を支払う場合、そのロイヤルティ額から20%を源泉税として控除する事が義務付けられていますが(所得税法179条)、ライセンサーの国との租税条約で10%と規定されていれば、ライセンサーへの源泉税率は10%となります。なお、2003年11月7日に署名された日米新租税条約では、源泉地国課税を免除しています。

日本企業N社が日本国内で事業活動を行い、その事業から所得を得ているのであれば、その所得の源泉が日本国内にある事は容易に理解できるでしょう。ここでは、事業活動の主体である企業とその活動の範囲から所得の源泉を決めているので“場所”が所得源泉の帰属を確定する重要な要素である事が分かります。
また、N社のニューヨーク支店が事業を行えば、ニューヨーク支店の事業所得の源泉は米国にあると言え、ここでも“場所”が重要な役割を持っていることになります。

しかし、このような“場所”を基準に所得の源泉帰属を考えるにしても、どこまでが日本の所得源泉であり、また米国の所得源泉なのか、さらに所得計算にあたっての取引価格や経費の取り扱いはどうするのか、といった問題も出てきます。
そこで2国間で租税条約を締結することによって、事業から生ずる事業所得についての①源泉地の取り合い、②その源泉所得の範囲、③課税所得の算定方式、を確定しています。

租税条約の課税の原則はおよそ以下の通りです。
①恒久的施設がなければ課税しない(PEなくば、課税なしの原則)。
②課税の対象となる所得の範囲は、その恒久的施設に帰属するものに限定する(帰属主義の原則)。
③課税の対象となる所得の算定方式は、独立起業の原則による(第三者取引基準による公正な所得の計算の原則)。

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