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米国におけるPL訴訟およびクレーム対応の手続き

米国でPL訴訟およびクレーム対応を行う場合、いくつかの訴訟手続き上の重要なポイントがあります。もちろん、米国での手続きであり、現地のPL問題を専門とする弁護士を雇用し、訴訟クレーム手続きを任せることが重要なステップとなりますが、以下の基本事項を理解しておくと良いでしょう。

(1) 証拠開示手続
米国での訴訟手続き開始後の最初の重要な手続きになります。
事実審理(Trial)の前に、その準備のために、訴訟の一方当事者から相手方に対する要求により、相手方が事故の知識と支配の下にあり、かつ当該訴訟の争点に関係する事実および証拠を開示し、閲覧させる手続きになります。※『英米商事法務辞典』(1998年、商事法務研究会)293頁参照
この手続きの中には証言録取所(Deposition)、質問書(Interrogatories)等が含まれ、PL訴訟を提起した原資の弁護士が被告である企業に裁判所外で直接訊問を行う事が出来ます。企業の立場からは、クレーム対象の製品に関連した技術者や営業責任者が訊問の対象になる可能性があり慎重に対処せざるを得ません。日本企業の関係者にとって訊問に応じる事は相当なプレッシャーとなるでしょうから、法務部門は充分は配慮をすべきでしょう。

(2) 陪審制度の理解
日本でも行われている、米国における裁判制度です。一般市民(通常12人で構成される)が、裁判官の説示(訴訟事件に適用される法律の説明)に従って、法廷に提出される証拠の諾否を決定します。PL訴訟事件では、クレームを申し立てた原告または』被告である企業の有罪・無罪を評決し、原告勝訴の場合は損害額をいくらとするかを決定します。

(3) 集団訴訟への対応
個々の事件では、被害者への賠償額が少なく、訴訟を提起するメリットが小さい場合でも、原告は同様の立場にある被害者を代表して訴訟を提起することによって、まとめて多額の賠償を得ることが可能となります。また、原告側弁護士にとっても多額の報酬を得るチャンスが広がります。米国の弁護士にとって、収入を得る上で魅力のある仕事となっています。

(4) 懲罰的損害賠償
加害者側に悪意が認められた場合、実際に発生した損害に対する賠償額に加え、加害者を罰する目的で付加的に課される損害賠償金を意味します。米国では、民事事件についてもこのような懲罰賠償制度が認められています。
しかし、時として実際に発生した損害額をはるかに上回るPunitive Damagesの割賦は一般社会、特に産業界に危惧を抱かせるものであり、一定の限度内に制限する動きが州のレベルで進んでいます。

企業としては米国を中心とするPL訴訟・クレームに対応する体制を整備する必要に迫られます。特に実務的な対応策としてPL保険の付保は極めて重要でしょう。ただ、訴訟・クレーム対策をすべて保険会社に任せるのではなく、法務部門を事務局とする全社の体制作りが基本となります。いくつかのポイントを説明しましょう。

(1) 企業トップのレポート体制の確立
米国ではPL問題は取引上の単なる訴訟およびクレームを越えて、一種のsys会問題ともいえるインパクトを一般社会に与えています。対応を一つ間違える事で被告となる企業の屋台骨を揺るがすことになります。企業トップがこの認識を正しく持つことは重要ですが、そのためにも企業トップが発生している事態をいち早く知ることのできる体制を整えましょう。

(2) PL対策の立案および方針決定のための場の設置
PL委員会のような対策検討の場は必要となります。当然の事ですが、意見交換や議論の場だけにせずに、委員会の目的を「対策方針の決定と対策案の確立」ときちっと打ち出す必要があります。
通常この委員会のメンバーとしては、品質保証、技術、法務および工法などの各部門の責任者が必要になるでしょう。法務部門は、PL委員会の窓口機関を担う事が多くなっています。その理由は、事件発生後ただちに保険会社と連絡を取り、現地エージェントを介し、現地のPL弁護士の選定や原告・クレーマントとの折衝などの初期対応を行う事が必要となるからです。PL事件の大半は、訴訟提起前、または初期訴訟段階での対応により解決することが可能です。仮に和解に応じる方策を決めた場合、和解案の検討と決定は現地子会社・代理店などの現地サイドに任せるのではなく、PL委員会の場で行うべきでしょう。
ポイントは、早期解決を急ぐ現地での対応に引きずられるのではなく、問題を的確に把握し、敏速に全社的立場から判断できる体制づくりを行うことにあります。

(3)現地法人などとの連携チャンネル確立
現地の子会社・代理店などは保険会社の現地エージェントを通して原告等相手方との交渉の前線に立ちます。通常はこれら現地法人・代理店で直接販売された製品がクレームの対象になる事が多くなるからです。したがって、証拠開示手続きに対応する資料の準備や、本社技術部門との連絡が現地サイドと本社の間で重要な仕事になります。また、現地法人・代理店などの技術担当者やセールスマンが、原告等相手方の弁護士からの尋問に答える可能性も高いです。
PL事件では、初期対応は極めて重要になります。上述のように、これらの対応は本社、特にPL委員会との緊密な連携の下で行われる必要があり、緊急であるとの理由で、現地法人・代理店などの現地に決定をすべて任せる事はリスクがあります。国際企業法務の担当者は、現地法人・代理店の社内弁護士、現地のPL問題を専門とする弁護士との間のコーディネーションを緊密に行うことが重要な課題となります。

(4)クレーム・エージェントの雇用
PL保険会社は、通常クレーム・エージェント経由で現地のPL専門弁護士を雇用し、訴訟・クレーム事件の解決にあたります。クレーム・エージェントの選定・起用は保険会社の専権事項ですが、その活動状況については常にモニターを行い保険会社にコメントするなどの形で積極的に企業の意図を伝える事により効果的な対応を目指す必要があります。上述したように、クレーム・エージェントが保険会社より受件されている範囲内であるとの判断で独自に和解に応じるようなことをチェックするためにも現地子会社・代理店などとの密接なチーム・ワークは重要な要素となります。

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