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親子上場のメリット、デメリット

2011年4月1日付けで、パナソニックは、TOB(株式公開買付け)と株式交換の組み合わせにより三洋電機を完全子会社化しました。また、2010年12月1日付けで、キリンHD(以下「キリン」)が株式交換の手法によりメルシャンを完全子会社化しました。パナソニックとキリンのこれらの動きは、いずれも上場会社である親会社が、上場子会社を完全子会社化した事案です。
ある上場会社が他の上場会社を子会社として保有するという関係は、一般に親子上場と呼ばれますが、近年、親子上場には弊害があるとして、これを解消すべきであるという論調が徐々に高まってきています。

親子上場には様々なメリットがあるといわれている。
例えば、子会社が、上場会社である親会社の信用力を利用することで、借入等の資金調達が容易になます。また、親会社が構築したブランドカを利用することで、自身の企業活動を広げることができます。
グループ全体を見た場合も、成長分野の事業については、子会社として切り出した上で上場させた方が、グループ全体としての資本市場からの資金調達力を高めることができます。というのも、いわゆる「コングロマリットーディスカウント」といわれる成長分野の事業を成熟産業に属する会社の一事業部門という位置付けにとどめおくと、成長事業の価値が市場において十分に評価されないという事態を回避できるからです。
上記のメリット以外に、親子上場特有のメリットではなく、上場一般のメリットではあるが、役員や従業員の士気の向上や知名度の向上による優秀な人材の確保、取引先に対する社会的信用の向上等もメリットとして挙げられます。
また、上場子会社には、親会社グループに属することで、安定的・長期的な取引関係を構築することができる結果、経営の予測可能性が高まったり、親会社の信用力を武器に市場開拓を有利に進めることができるといったメリットを享受できる場合が少なからずあります。

もっとも、資金調達の観点から言うと、親会社が資金調達をすれば子会社独自で資金調達をする必要はありません。また、近年では就職の際の人気企業ランキングで、ジェイティービー(JTB)グループやサントリーホールディングスといった非上場会社が上位に入る等、上場の有無と優秀な人材の確保の関連性は薄まってきています。そこで、従来からいわれているような上場のメリットは、現状においては必ずしも当てはまらなくなってきています。

一方、冒頭に述べた通り、親子上場に関しては、様々な弊害が指摘されている。
その最大のものは、親会社と子会社の少数株主との間の利益相反の問題です。親子上場の場合、親会社が子会社の犠牲の下に自己の利益を追求し、その結果、子会社の少数株主が害されるという利益相反の問題があります。具体的には、子会社単体で見た場合に採算性が疑問視されるような事業を、親会社も含めたグループ全体の戦略の見地から当該子会社に行わせたり、子会社にとって不利な条件の契約が、親会社と子会社との間で締結されたりといったことがあります。
また、親子会社間では経営指導契約やライセンス契約等を締結し、子会社から親会社に対して経営指導料やロイヤルティを支払うという例がありますが、当該対価が相対的に子会社に不利な形で設定される可能性があります。

この点、アメリカにおいては、「支配株主が」「他の株主に対して」信認義務を負うという理論が判例上確立しています。支配株主が子会社の他の株主の犠牲の下で自己の利益を図った場合、少数株主から損害賠償請求訴訟の標的とされます。
日本の場合は、少なくとも判例法上、このような支配株主が信認義務を負う旨の理論はいまだ確立されている状況ではなく、子会社株主は子会社の役員等に対する責任追及等により、間接的な救済を求められるに過ぎません。こういった状況である為に、日本では親子上場がアメリカより多く見られると考えられます。
また、親会社は会社法および金融商品取引法(以下「金商法」)上の内部統制システム構築義務の一環として、連結グループ内におけるコンプライアンスを維持すべき義務を負っています。子会社における内部統制の不備等により、親会社自身のコンプライアンス上の問題が問われる可能性があります。例えば、架空取引が発覚したメルシャンとその親会社のキリンとの関係などはまさにそのような事例です。上場子会社に関してはガバナンスの難しさがあり、様々な問題が発生しやすい状況にあります。

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