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親子上場を解消する理由

近年、2009年の日立グループによる上場子会社五社の完全子会社化など、親子上場の解消が進んできています。しかし、親子上場の問題点のうち、構造的な利益相反が主な理由として上げらることがありますが、決定的理由とは言えないでしょう。理由としては、アメリカと異なり、日本では支配株主による信認義務の理論が確立しておらず、親子上場を維持することによる親会社側のリスクは小さい為です。
 それでは、具体的な理由はどういったところにあるのでしょうか。
 おそらく理由は一つではなく、様々な問題が複合的に絡み合っています。またケースにより要因は異なるものと思われます。
 理由としてあげられるものとしては、
 ①証券取引所のルールの厳格化による上場コストの増大
 ②金商法の改正による課徴金リスク等の増加
 ③上場子会社に対するガバナンスの難しさ
等が具体的理由として考えられます。

 まず、①の理由に関して補足します。東京証券取引所は、2007年6月25日に公表した「親会社を有する会社の上場に対する当取引所の考え方について」の中で、親会社が子会社の株主の利益を犠牲にして自己の利益を図る可能性があるということから、親子上場の特性を十分に考慮の上でその方針を決定すること、および株主の権利や利益への一層の配慮ならびに市場関係者に対する積極的なアカウンタビリティの遂行に努めることを求めています。
 また、2009年12月30日に施行sれた有価証券上場規程の改正により、上場会社は、独立役員を最低でも一名選任することが義務づけられました。このように、証券取引所のルールの厳格化により、上場会社における負担が増え、上場コストが増大。結果として、完全子会社化による上場廃止を促すきっかけとなっているものと思われます。
さらに、2010年6月30日から、上場会社がその支配株主と重要な取引等を行う場合は、少数株主にとって不利益なものとなるのを避けるため、当該支配株主と利害関係のない者による意見の入手を行うこと、および必要かつ十分な適時開示を行うことが義務付けられました。また、大王製紙やオリンパスにおける不祥事がきっかけとなり、上場企業のガバナンス強化が求められている現状に照らすと、親子上場を継続するための「コスト」は今後更に増大することが見込まれます。
 なお、独立取締役については、議決権行使助言の最大手であるリスクメトリックスグループが、2012年議決権行使助言方針において、親会社や支配株主を持つ会社については、独立取締役が二人以上いない場合はその経営トップの再任に反対する方針を表明する等、東京証券取引所よりも厳格なルールを打ち出しています。こういった動きから、今後は機関投資家との関係でも、上場子会社の負担は増大していくことが予想されます。

 ②の金商法に関連して、近年の金商法改正による課徴金制度の導入や罰則の厳格化なども、上場維持のインセンティブを低下させています。つまり、金商法は、金融商品取引市場の公正さを保護するため、近年改正を重ねており、その内容としては、2005年4月1日施行の改正となる課徴金制度が導入され、2008年12月12日施行の改正では課徴金の金額水準の引上げや課徴金の対象範囲の拡大等が実施されました。また、2006年7月4日施行の改正では罰則の強化が図られており、有価証券届出書、有価証券報告書、内部統制報告書等の虚偽記載やインサイダー取引等に関する罰則が強化されました。これらの金商法の規制は、上場会社を主な対象としていることから、親子上場を解消することで、上場子会社がこれらの金商法による規制対象から外れるというメリットもあります。

 ③つ目の上場子会社に対するガバナンスの難しさも、親子上場解消の動きが進んでいることの理由となっています。完全子会社であれば、親会社として、ガバナンスを効かせることもできますが、「上場」子会社である以上、ある程度は経営の独立性を担保する必要があり、必ずしも完全なコントロールができるわけではありません。上場子会社の不祥事等が発覚した場合、親会社の評判や信用に与える影響は大きいものとなります。場合によっては親会社自身の内部統制に不備があるとして、内部統制報告書の訂正等を余儀なくされます。そのため、中途半端なコントロールのままリスクを背負うことの問題は考慮されるべきでしょう。キリンがメルシャンを完全子会社化したきっかけは、メルシャンが水産飼料事業部の取り組みにおいて不適切な取引(架空取引、架空製造、循環取引)を行っていたことになります。当該事案においては結果的にキリンの内部統制報告書の訂正はされませんでしたが、子会社管理の観点からは、親子上場にはコントロールし難い面が存在しています。

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