銀行の貸出金利は、原則として、「調達金利+経費率+リスク率+目標収益率」で設定されます。
このリスク率は、格付けによって決定されます。
よって、高格付企業は低金利、低格付企業は高金利(もしくは貸出不可)となります。
金融検査マニュアルに基づく格付
①財務内容を中心とした点数制で格付けされている
②定性項目(商品競争力・経営者の資質・決算書の信憑性など)も加味されている
③銀行の融資方針及び金利はこの格付けでほぼ決まる。
④内部格付けは最低年1回行われる(決算期から3ヶ月以内)
債務者区分(内部格付け) |
分類 |
債権区分 |
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分類対象 |
貸付先 |
債権等の資産 |
債権 |
判断対象 |
返済能力 |
貸付債権の回収危険性 |
債務者の財政状況や経営成績等 |
基準 |
債務者の財務状況、資金繰り、収益力等 |
金融機関毎の自己査定 |
法令上の基準 |
債務者区分(内部格付け)
合理的な中期計画とその実現度合いにより格付けが変化する。
大企業は、中期計画及び単年度計画を策定する。
これは売上や利益等の収支計画だけでなく、予想B/S、予想CFにより資金調達・増資等資本政策も計画に基づき先手を打っているところに特徴がある。
大企業と中小企業は、資金・技術的な面だけでなく、これらの運用面に違いがある。
債務者区分に応じた融資方針の一例
正常上位区分 |
無担保でも積極的に残高を増やす方針 |
正常中位区分 |
今後の経営状況や銀行の収益性等を見極めながら残高を増やす方針 |
正常下位区分 |
有担保や信用保証協会保証を中心に可能であれば残高を増やす方針 |
要注意先 |
有担保や信用保証協会保証を原則に残高維持程度の対応にとどめる方針 |
要管理先以下 |
融資対応は不可能 |
分類
I分類:回収の危険性又は価値毀損の危険性について問題ない資産。
II分類:回収について通常の度合いを超える危険を含む資産。
III分類:回収または価値について重大な懸念が存し、損失額について合理的な推計が困難な資産。
IV分類:(査定基準日において)回収不能又は無価値と判定される資産。
II, III, IV分類を「分類資産」(危険性の高い債権)、I分類を「非分類資産」と呼ぶ。
債権区分
①正常債権
②要管理債権
③危険債権
④破産更生債権
②~④を不良債権と呼ぶ。
実質資産価値のチェック(バランスシートを時価ベースに引きなおす)
B/S上の資産は取得原価で計上されていますが、その価値が簿価を下回っているものや、資産価値がないものがあります。実質資産価値を把握するためには、これらを修正する必要があります(キャッシュにあらずんば資産にあらず)。
資産価値のないもの(代表例)
含み損 |
土地や有価証券の含み損、為替差損等による売掛金その他の資産の含み損 |
不良資産 |
不良債権(回収不能の売掛金・受取手形・立替金等、また債務超過や経常赤字先への貸付金)や不良在庫 |
償却資産 |
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繰延資産・前払費用等 |
不良債権や原価償却不足を見破る方法
確定申告書の別表や勘定科目明細を活用します。
勘定科目明細書から分かること
・前年から動きのない売掛先や貸付先は、この1年間で返済がなかったことを意味するため、不良債権と判断する。
・個社別掲載以外の「その他」が多い場合、回収不能売掛金のごまかしが疑われる。
・子会社貸付金があって、当該子会社が債務超過であれば資産価値ゼロとするか、簡易連結決算を行う。
定性評価
会社の体質そのものを評価する(表面数字に現れないもの)
会社の商品競争力
業界全体の状況
経営管理能力
定性評価の目的は「要因把握」です。
例えば業績低迷の企業について、それが一時的要因なのか、構造的要因なのか、
決算書の信憑性
過去に原価償却不足で黒字を装った決算をしているか(確定申告書の別表16ですぐに判明します。なお税理士によっては償却不足による黒字化を当然としている人もいますが、会社の信用を失う大変危険な決算です。)
経営状況の開示への協力度
銀行が行う決算業績ヒアリングに非協力的であれば、開示できない理由として不良資産や粉飾などが疑われ、マイナス評価になります。
毎月、または四半期毎に残高試算表を提出し業況説明をしていればプラス評価(銀行に出向けばなおよし)