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取引段階毎の検討

取引段階毎の検討

一覧

やるべきこと 注意すべき点 備考
見積 協議すること(指値はダメ) 相見積
内示 リードタイムが短い場合、内示書は原則取り消せない。
発注 必要的記載事項を記載した書面交付(3条本文)

発注書の写しを2年間保存(5条)

1.必要的記載事項の一部保留

電磁的記録による発注書も可能。但し下請事業者の承諾が必要(3条2項)

仮単価は記載無として扱う。

計算式は記載有とする。但し代金支払時までに対価を確定し通知すること。

納品 納品書の写しを2年間保存(5条)
検査 検査証の写しを2年間保存(5条)
支払 期日どおり支払うこと

遅延損害金(4条の2)

exception.

金融機関の休業日の場合は、事前の書面合意により、2日以内の順延可能。

見積もり

相見積もりはOK。ただし、発注可能性がない企業(例えば韓国企業など)を当て馬にしての値下げ要求はNG

 

内示書

内示書とは

1発注予測

2正式な発注書ではない

3必ずしも内示書通りに注文しない

 

内示書の活用(受注側、売主側)

契約書の取り交わし前に着手せざるを得ない場合、「契約締結上の過失」が相手方に認められるよう、契約締結に向けた強い期待が生じていたという事情が認められるために、「内示書」を交付してもらう。

内示書には、「契約書の取り交わしに先立ち,●●の着手をお願いします」「●●の着手後,契約書が取り交わされなかった場合には,着手後に貴社に生じた費用を精算するものとします」といった事項を記載する。

 

甲は契約条件が未確定の場合、注文書に代えて内示書を交付する。この内示書は契約成立の予告であり、後日条件が確定次第、甲は速やかに注文書を発行する。この注文書の発行により内示書は失効する。

 

内示書の取消・撤回(ジュリスト1442号 多田敏明「下請法違反の予防のポイント」38頁)

「一般に、将来の発注に関する情報は前もって下請業者に伝達することが望ましく、その意味でいわゆる『内示書』を提示することは下請業者にとっても利益になる」といわれている。しかし、他方で、「内示書の提示であっても、リードタイムから見て下請業者が内示書提示後直ちに原材料を購入するなどして製造に着手した場合」が問題となる。例えば、親事業者は下請事業者に対して内示書を提示し、その後、正式な注文書を交付するケースでは、下請事業者は内示書を見て原材料を購入し、生産計画を立てようとするであろう。親事業者が内示書の後で正式な注文書を交付しなかった場合に、親事業者は内示の取消にすぎないと主張しても、下請事業者から見れば、事実上の発注取消にあたり、親事業者が受領拒否したのと同様の業務を行わなければならない。ここにおいて、「優越的地位の濫用」という視点が必要であると思われる。親会社と下請会社は、取引関係において対等当事者であるとの認識が、双方ともに必要であろう。

 

発注(法3条、規則1条1項、法2条の2)

2 前項第4号の下請代金の額について,具体的な金額を記載することが困難なやむを得ない事情がある場合には,下請代金の具体的な金額を定めることとなる算定方法を記載することをもって足りる。

3 法第3条第1項ただし書の規定に基づき,製造委託等をしたときに書面に記載しない事項(以下「特定事項」という。)がある場合には,特定事項以外の事項のほか,特定事項の内容が定められない理由及び特定事項の内容を定めることとなる予定期日を,製造委託等をしたときに交付する書面(以下「当初書面」という。)に記載しなければならない。

 

未定事項(当初書面+補充書面)(3条1項但書)

当初書面に以下の2点を記載することが必要です。

①正当な理由
②補充の予定期日 具体的な日付を特定できるように書くこと。

e.g. 2016年4月30日まで。発注日から30日後。

なお、結果的に予定期日が遵守できないことをもって直ちに違法とはならない。

 

①正当な理由の具体例

下請代金額のブランク OK: 給付内容未定のため、下請代金額が決定できない場合。

NG: 顧客への引渡価格未定を理由とした、下請代金ブランクは正当な理由無し。

納期のブランク OK:

Gray: 製造委託の場合、公取に相談したところ、ダメとは言わないが、「コンプライアンスを重視する会社ならやらないですよね」とのこと。

 

補充書面は、内容確定後直ちに交付し、当初書面との関連性を明記する。(3条1項但書)

 

仮単価

当社から下請事業者への発注書面(3条書面)において、

(1)発注単価欄には仮の単価を記載し、

(2)備考欄には「本注文書の単価は仮単価とし、地金価格決定後、以下計算式により値差精算を行う」と記載している。

(製品数量 × (地金実価格 - 230円) = 値差)

⇒実価格の決定時期(納品時、仕入時点など)を発注書面に記載し、価格決定後に補充書面を交付すればOK

 

算定方法の記載

一義的な金額算定方法であれば当初書面に不備はない(必要記載事項の記載有と認められる)。したがって補充書面は不要。ただし、代金支払時までに金額確定の書面通知が必要。

 

下請事業者に対して誤った単価で発注してしまった場合は?

錯誤無効の成否がポイント。親事業者の重過失がある場合は錯誤無効不成立。

錯誤無効の場合は契約不成立。

下請事業者の見積もりに対して、高い金額で発注してしまった場合は?

契約は無効。親事業者が錯誤であることを下請事業者は知りえた。民法93条但書の類推適用により無効。

 

発注書のFAX送信

下請事業者との間で、発注書をFAXにて送信することを明記した覚書を締結する必要がある。

・下請法3条2項

・下請代金支払遅延等防止法施行令(以下施行令)第2条第1項

・下請代金支払遅延等防止法第三条の書面の記載事項等に関する規則(以下規則)第2条第1項および第2項

なお、受信と同時に書面出力されるFAXへの送信は書面の交付に該当する(3条1項を適用)が、受信と同時に書面出力されないFAXへの送信は電磁的記録による提供に該当する(3条2項を適用)。3条1項が適用される場面については通常の発注書の交付と同じに考えれば良い。これに対して3条2項の適用場面では別途の検討を要する。

(2)条文の要件

下請法3条2項

書面交付に代えて電磁的記録を提供することにつき下請事業者の承諾を得ること
①の承諾が政令に従ったものであること 電磁的記録提供の「種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。」(施行令第2条第1項)とされている。
電磁的記録提供が公正取引委員会規則で定めたものであること 電子メール、EDI、WEB、磁気ディスクの交付などの方法であって(規則第2条1項)、且つ、

下請事業者がファイル記録を出力して書面を作成することができるもの(規則2条2項)

(3)本件への適用

要件①および②について、発注書(3条書面)に代わるFAXによる提供について、下請事業者から書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。

要件③について、発注書(3条書面)に代わるFAXによる提供は規則2条1項1号イとして認められている。

(4)補足

発注書(3条書面)の電磁的記録の提供が下請法上規制される理由は、EDIの有償利用の強要などを防止するためである。

4.参照条文

下請法第3条 (書面の交付等)

1  親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。

2  親事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該下請事業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該親事業者は、当該書面を交付したものとみなす。

 

下請代金支払遅延等防止法施行令第2条 (情報通信の技術を利用する方法)

1  親事業者は、法第三条第二項 の規定により同項 に規定する事項を提供しようとするときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、当該下請事業者に対し、その用いる同項 前段に規定する方法(以下「電磁的方法」という。)の種類及び内容を示し書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。

2  前項の規定による承諾を得た親事業者は、当該下請事業者から書面又は電磁的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは、当該下請事業者に対し、法第三条第二項に規定する事項の提供を電磁的方法によってしてはならない。ただし、当該下請事業者が再び前項の規定による承諾をした場合は、この限りでない。

 

下請代金支払遅延等防止法第三条の書面の記載事項等に関する規則第3条

下請代金支払遅延等防止法施行令 (平成十三年政令第五号)第二条第一項 の規定により示すべき方法の種類及び内容は、次に掲げる事項とする。

一  前条第一項に規定する方法のうち親事業者が使用するもの

二  ファイルへの記録の方式

 

下請代金支払遅延等防止法第三条の書面の記載事項等に関する規則第2条

1  法第三条第二項 の公正取引委員会規則で定める方法は、次に掲げる方法とする。

一  電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの

イ 親事業者の使用に係る電子計算機と下請事業者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法

ロ 親事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された書面に記載すべき事項を電気通信回線を通じて下請事業者の閲覧に供し、当該下請事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該事項を記録する方法(法第三条第二項 前段に規定する方法による提供を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては、親事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法)

二  磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに書面に記載すべき事項を記録したものを交付する方法

2  前項に掲げる方法は、下請事業者がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものでなければならない。

3  第一項第一号の「電子情報処理組織」とは、親事業者の使用に係る電子計算機と、下請事業者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。

 

5.添付資料

下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項(平成13年3月30日公正取引委員会)

 

支払期日(2条の2)

 

納品

受領

引渡場所への納入により「受領」が完了する。

出荷前検査の場合は、検査開始時点が受領の時点。

 

納期遅延

当社から販売先に対する納期遅延でもある点に注意。

下請事業者による債務不履行である。⇒損害賠償請求可能

 

受領拒否(4条1項1号)と納期延期(ジュリスト1442号 多田敏明「下請法違反の予防のポイント」38頁)

下請法4条1項1項における受領拒否には、「純粋な受取の拒否だけでなく、納期の延期も確認しておく必要がある。」[1] この場合、「発注当時に決めた納期と実際の納期にズレが生じ、納期の延期が発生する可能性がある」。[2]このケースでは、倉庫に製品を保管しておく保管料や、一旦出荷した製品が返送され、再出荷する輸送料を負担することで問題は解決するように思われる。

 

支払

一括決済方式

「一括決済方式」とは債権譲渡担保方式、ファクタリング方式、併存的債務引受方式による決済方式の総称

 

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